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4話 家事はお仕事
しおりを挟む小学2年生の頃
母は彼女に「仕事」を与えた。
その内容は、
ごはん炊き
洗濯たたみ
階段拭き(週一)
お茶碗直し
などのごく簡単な作業だ。
そして
ごはん炊き100円
洗濯たたみ100円
階段拭き50円
お茶碗直し150円
1ヶ月サボらずにすれば、
お給料を貰える。
「お金は働かないと貰えないんだからね。」
母の教えだった。
今となっては
教育の一貫であったのか、
都合のいいように使われていたのかわからないが、
幼い彼女は母に従った。
毎月お給料日になると
お小遣い帳を持っていって
母に見せなければお給料はもらえない。
「まるで下僕だな。」
今の彼女は思った。
低学年だった彼女には
お金の使い道なんて
駄菓子屋やコンビニでお菓子を買う、
それぐらいしかなかった。
しかし、
1ヶ月500円にも満たない
「お給料」は
たちまちすぐに消えていったし、
一定の金額まで貯まると
「ママ貯金」へと消えていった。
(母が預るお金)
母は平日、
17時まで仕事だった。
仕事が終わると
18時に妹の児童ホームへお迎えに行ってからのお帰りだ。
彼女はそれまでに
「仕事」を終わらせなければならない。
「帰ってきて今まで何してたの!?」
家事が終わっていなかった時には
そう言って母は彼女を叱るのだ。
彼女は放課後
「子供クラブ」に通っていた。
学校終わりから16時まで
いろんな学年の子とも遊べるクラブだ。
彼女は一時、
2歳上のお姉ちゃんと帰っていた時期があった。
彼女の家の少し先に
お姉ちゃんの家があった。
仲良くなったきっかけは、
朝いつもより出るのが遅くなって
泣きながら走っている私に
「大丈夫?」
そう声をかけてくれた。
彼女は
とても泣き虫だった。
声をかけてくれたお姉ちゃんは言った。
「まだ間に合うから歩いていこう!」
泣きじゃくった私の不細工な顔とは
まるで違う、
余裕のあるとても綺麗な顔だった。
そして、
ある日の帰り道。
いつもなら彼女の家の前で
お姉ちゃんとお別れをするのだが
その日は違った。
高熱を出した妹が入院したため、
母の帰りが遅くなるのだ。
「怖いから玄関におって欲しい。」
怖い話が大好きで
「幽霊」を信じていた彼女は
お姉ちゃんに少しでも一緒にいて欲しかった。
「もう帰るね!」
お姉ちゃんにも門限がある。
真夏の夕暮れ。
本来なら全然暗くも無いはずの夕方が
とてつもなく薄暗かった。
彼女は、
お姉ちゃんがいなくなって
キッチンの明かりだけ灯した薄暗い空間で
ご飯を炊き始めた。
そして食器を直し、
2回の洗濯物が積み重なった山を
一息に両手で持って
階段を駆け下り、
1階にある和室に運んでから畳んだ。
1人でいる時の2階の部屋は
さらに薄暗く、
彼女により孤独を感じさせたからだ。
夜の20時頃、
いつもなら帰りの遅い父が夜ご飯を買って
帰ってきた。
大変稀覯(きこう)な光景だ。
「ママの帰りが遅いって聞いたからな、
早く帰ってきたんや。」
父が帰ってきたことに安堵した彼女は
母は早く帰ってこないか、
いつ帰ってくるのかと考えながら
ひたすら父の膝の上で
一緒にテレビを観ていた。
ガチャッ
ドアの開く音がした。
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