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4 呪いを解いてあげたい(終)★
しおりを挟むエリザベスがマーカスを引っ張っていった先は、城の奥にある休憩室だった。この仮装舞踏会の参加者たちが、疲れたらいつでも自由に使える個室である。……と言うと聞こえは良いが、実質は男女の逢瀬に使われていることは、言うまでもない。
赤絨毯の敷かれた細長い部屋。入ってすぐの右手側にはゆったりとした大きなソファ、左手側には大きな鏡がある。奥の窓にはカーテンがかかり、外の様子は分からなかった。
「ほら、おばけさん……こっちへ来て!」
「なっ……ベス……」
「今夜はアグネスよ。魔女のアグネス」
エリザベスは戸惑うマーカスをソファに押し倒し、彼が被っているおばけの布を、強引に捲り上げて剥ぎ取る。それから仰向けになった彼の腰に跨がり、自らの魔女の衣装を脱ぎ始める。
黒い魔女の衣装の下から、エリザベスのとっておき――赤いレースのスリップドレスが現われる。今宵、エリザベスが身につけている下着はこれだけだった。薔薇の花をかたどった繊細なレースの下に、白く豊満な肌が見え隠れしている。
「ア、グネス……。どうしたんだ、今夜は」
マーカスは慌てた様子で尋ねた。おばけの衣装の下に、普段と変わらぬ上品な王族の礼装をしていた。こんな日でもきちんとした服装をしているところが、マーカスらしい。
「さっきも言ったでしょう。おばけさん、あなたは自分が童貞であることを悩んでいると、社交界でもっぱらの噂よ。今夜、私がその悩みを解消してあげます!」
「ば、馬鹿なことを言うなっ」
マーカスは顔を真っ赤にして、エリザベスを自分の体から下ろそうとした。端正な顔で恥じらう彼は、本当に可愛らしい。
しかしエリザベスは、そんな彼の行動を制する。
「馬鹿なこと? 悩んでいるというのは事実ではないのかしら……だったら、口付けをしなさい!」
言うや否や、覆い被さるような体勢になり、マーカスの唇を奪う。形の良い薄い口の中へ、エリザベスは自らの舌を差し入れた。彼の口腔内でぐるりと舌を動かす。
マーカスは、遠慮がちにエリザベスに応え、舌同士を絡ませてくれた。
(マーカス……温かい……)
エリザベスは胸を高鳴らせた。強がっているエリザベスだが、殿方と本格的な接吻を交わすのは初めてである。
(どうしよう? この先、どうすれば良いの)
人よりも耳年増なエリザベスは、一応男女の睦み合いについても知識がある。友人や使用人たちが話しているのをこっそり聞いたりして、日々妄想を膨らませていたのである。
けれど――実戦経験はゼロである。思いあまってマーカスに口付けたは良いが、これからどうするべきなのかは分からなかった。
困ったエリザベスは、マーカスを強く強く抱き締め、深い口付けを続けた。
性格の優しいマーカスだが、体つきは逞しい。幼い頃から剣術の稽古をしていて、その腕は同世代の王族貴族の間では群を抜いていた。また、馬術の心得もあり、特に馬と息を合わせた障害競走を得意としていた。
「エリザベス……そういうことなら、僕も遠慮はしない」
マーカスは、エリザベスの頭を抱き、深く深く口付けた。それと同時に、エリザベスの扇情的なスリップドレスを捲り上げる。
「……っ!」
エリザベスは慌てた。マーカスがそんなに積極的になるとは思わなかったのだ。
「僕は童貞を捨てるまで、帰してもらえないんだろう?」
言いながら、マーカスはエリザベスの白い胸を、やわやわと揉みしだく。
「お、おばけさん……?」
(ど、どうしたらいいのよ、私は……)
乳房全体を揉まれながら、指でその頂を摘ままれる。すると途端に甘い疼きが体に走り、エリザベスは身じろぎする。
「魔女アグネス。ほら、鏡を見て……」
マーカスはエリザベスの体勢を少し起こして、横にある鏡を指差した。
大人と同じくらいの大きさの鏡は、彫刻の施された黒檀の縁取りがなされ、壁に固定されている。この部屋を訪れた貴族たちが、全身を見て身支度を整えるには便利だろう。
(私、こんなに淫らなの……!)
鏡の中に自らの乱れた姿を認めて、エリザベスは瞠目した。赤いレースのスリップドレスだけを身につけた女が、礼装をした男の上に跨がり、頬を赤くしている。
「な、何よこれっ」
「魔女アグネスよ。君は色事が得意なのだろう? 僕は君の体がよく見たいんだ。姿勢を変えよう」
マーカスは先ほどより気乗りしているようだった。彼は体を起こしてソファに深く腰掛け、エリザベスを背後から抱き締める体勢となる。
「は、恥ずかしいわ」
ついに、エリザベスは本音を口にした。目の前の鏡には、ほとんど裸の自分が余すところなく映っている。
「だって、今夜は君が僕の童貞を捨てさせて、呪いを解いてくれるのだろう?」
背後から耳たぶを甘噛みしながら、マーカスは囁いた。唾液に濡れた舌が触れるたびに、エリザベスの体の芯が、きゅん、と疼く。
そんな彼女の反応を分かりきっているかのように、マーカスは彼女のスリップドレスを捲り上げ、右手で胸を揉み、左手は脚の間へと手を伸ばす。
「ぁ……ああっ」
敏感な秘所に触れられて、エリザベスはたまらず声を上げた。彼女から快感を引き出すように、マーカスは肉裂を指で優しくくすぐり、その上の密やかな花芯を捏ねる。
「どうだ、魔女アグネスよ?」
「っ……!」
訊ねられても、エリザベスはもはや、答えることなどできなかった。ただマーカスの与える快感に翻弄され、しかしその程度の優しい刺激では達することは叶わない。
前を見れば、鏡に乱れた女の姿が映り、それが自分だと分かると消え入りたい気持ちになる。しかしそれも、マーカスに抱き締められていれば身じろぎすることすらできないのだ。
今のエリザベスは、気の強い悪女ではない。優秀だが引きこもりで気弱な王子マーカスに操られる肉人形のような存在である。
「イかせて欲しい?」
耳たぶに息を吹きかけながら、マーカスは問いかけた。
(ああっ、そんな淫らな言葉……)
その熱い囁きだけで、エリザベスはおかしくなってしまいそうだ。
「それは、その……」
「それともこうして、ずっと焦らされていたい? ほら、鏡を見てごらん」
エリザベスの顎を、クイ、と上向かせて鏡の方を向かせながら、マーカスは尋ねた。
もう片方の手は、エリザベスの脚の間に密やかに咲く花びらを、指先で弄んでいる。
「やっ」
鏡の中の自分の姿を見させられて、エリザベスは赤面した。
扇情的な下着姿でソファについた両脚を開き、後ろからマーカスにいたずらされている姿は、たまらなく淫らだった。
蜜口からは、透明な粘液がトロリと溢れ、ソファを濡らしている。
頬は桃色に染まり、だらしなく開いた唇からは、先ほどマーカスと口付けを交わした名残の唾液が垂れている。
「欲しいなら、きちんと口に出して、魔女アグネス」
ドキリと、胸が高鳴った。どうしたらいいのか分からない。けれどエリザベスは、一刻も早くマーカスを受け入れたかった。
「おばけさん……お願い、私を抱いて」
後ろを振り向きマーカスを見つめて、エリザベスは願いを口にした。
「可愛いね。アグネス……ではなくて、エリザベス」
なだめるように、マーカスは言う。
「な、なによ。……それなら私も、マーカスと呼ぶわ」
エリザベスは焦ってマーカスにしがみつく。
マーカスはそっとエリザベスを抱き締めた。
「君が僕の童貞の呪いを解いてくれるなら……僕は、強がりな君の呪いを解いてあげたい」
囁きながら、マーカスはエリザベスの体をソファに押しつける。それから自らの肉茎を、潤んだ粘膜にあてがった。ぐずぐずに濡れて愛液を滴らせたその部分は、大きな抵抗もなく彼自身を受け入れていく。
「……呪いにかかっていたのは、私の方だったのね」
エリザベスは小さく呟いた。そうだ、完全無欠で、悪女と言われ、それを演じようとしていた、強がりな自分――。
けれど優しい婚約者は、エリザベスの呟きが聞こえなかったふりをして、その先を続けた。
END
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
お気付きの点がございましたらお知らせください(ざまぁは今回も入れられませんでした)
鏡プレイが書けて楽しかったです(←おい)
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