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ライアン達の子

消えた専属護衛騎士

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【 オルテオ第二王子の視点 】


デュークに抱っこされたリリアンを見て兄上と公子は慌てて駆けつけた。

「落ちたのか!」

「どこを怪我した!」

「違います。未熟だから筋肉が震えているだけです。お兄様、来週デューク様がまた走ってくださると言ってくださいました」

「一般の騎士が何故」

「エフ先生のご指名です」

「エフ先生のお墨付きなら安心だな」

「リリアン、来週も来るんだね?
美味しいお菓子を用意するからね」

「乗馬の後にお願いします。デューク様とレオナもお茶に誘ってください」

「レオナ?」

「防具を付けてくださる女性騎士ですわ」

「分かった。団長に話を通しておこう」

「やった!」




夜、いつもの夜勤の専属護衛騎士を部屋の中に入れて質問をした。

「エフ先生と呼ばれている影がいる。影についてと適性者について教えてほしい」

日中、国王に聞いても成人したら教える決まりだとしか言わなかった。

「極秘です」

「どうせもうすぐ聞く話だろう?」

「分かりました。他言無用ですよ。

影は護衛、暗殺、諜報、工作と様々な仕事をします。彼らは“第四”と呼ばれる組織です。

第四とは、近衛騎士団 第四部隊。
我々も近衛騎士ですが雲泥の差です。

何人いるのか分かりませんが、アルファベットの数の分、第四の中でエリートが存在します。
自由にシフトを選び任務も自由に引き受けます。
偏る時はリーダーが振ることもあります。
国外任務だけは順番だそうです。


アルファベットで呼ばれない第四のメンバーは星の名前を元に名付けられます。

彼らは王族を敬う必要はありません。礼儀は必要ですが。
近衛は王族を守りますが第四は国を守ります。
王族に仕えているのではありません。
採用基準も試験も彼らに一任されます。

合格をもらえた者のことを“適性者”と呼びます。

適性者は複数の武術の他に二つ以上他国の言葉を使えなくてはなりません。数字に弱くてもなれませんし、法律も国内地図も頭に入っています。

適性者は血を怖がりません。拷問をすることもできますし耐えられます。目的のために人も殺せます。
死体や血や内臓を見て怯むような者ではありません。

気配も感じ取れますし、消すこともできます。
適性者を見つけることは至難です。

騎士や兵士から昇進すると思われがちですが、意外と少ないのです。

給金は破格らしいです」

「女性も?」

「第四の一般には数人いますが、だいたい工作員として配置されます。他国の王宮メイドとか」

「適性者なのに第四に所属していない場合は?」

「容姿が際立っている場合と、本人が拒否した場合、他国でもすぐに身元がバレるくらい有名人と似ている場合ですかね」

「例えば?」

「陛下にそっくりだとか」

「王族も対象になるのか」

「過去にあるそうです。
王族は代わりが居ますが、適性者はなかなかおりません。産めば適性者というわけではありませんから」

「ありがとう」



つまり、エフという第四のエリートは僕よりリリアンの方が価値があると言っていたのだな。

バトラーズ公爵夫妻も適性者。

尚更欲しくなった。

僕の子をリリアンが産んで適性者だったら…。




翌朝、ドアを開けると誰もいなかった。
居るべきはずの夜勤の専属護衛騎士二人がいない。

足元には近衛騎士団のバッジと、僕の護衛の証である腕章が落ちていた。


身支度をして団長の所へ行こうとしたが国王に呼ばれた。


「おはようございます、陛下」

「おはようオルテオ」

「ご用は何でしょう」

「新任の夜勤の専属護衛騎士を紹介する」

「昨日までいた二人はどこです!」

「お前が殺したのだよ、オルテオ」

「は?」

「第四について語るのは重大な違反だ。
それが例え王子相手でもだ」

「僕はもうすぐ成人なのだから構わないでしょう」

「第四はかまうんだよ。規律を守れない近衛騎士は不要だ。第四についての情報は未成年の王族にでさえ秘密にするような極秘事項だった。それさえ守れなくて何を守れるんだ?」

「彼らはどうなったのです」

「夜中に処刑したと報告があった」

「近衛の処刑を事後報告ですか!?」

「許可など要らないからな」

「そんな…」

「オルテオ。お前の素行は分かってる。これを機に心を入れ替えろ」

「殺さなくたって…」

「お前がラーヤとの間にできた子でなかったら、お前も病死として葬られていたところだ」

「何故母上の名が出るのですか!」

「ラーヤは私が愛した唯一の女だからだ」

「は? 毒殺を許しておいて?
王妃の罪を有耶無耶にして病死にしたてあげたくせに!!」

「オルテオ。王妃は関係ない」

「偽りなど聞きたくもない!」

「ラーヤは自殺だ」

「母上を冒涜する気ですか!」

「ラーヤの実家から手紙が届いた。元婚約者が結婚するという知らせだった。
ラーヤは発作的に往診に来ていた宮廷医の隙を見て、薬を一気に飲み干した。

急いで吐かせたが内服するには劇薬過ぎた。
錠剤なら間に合ったが液体では浸透が早かった」

「そんなまさか」

「メイドと宮廷医と助手の六人の前で起きたことだった。外にいた騎士もすぐに入室し救命に助力してくれた」

「何故 母上は、」

「見た目も好みで話したら益々惹かれた。
だがラーヤの心は元婚約者にあった。
しかしこれは両家で決まったことで覆すことはできない。嫌がるラーヤを妻にしたが、私なりに大事に愛した。

だが、オルテオを産んでもラーヤの心は別の男を選んだ。

これを公表すればラーヤの生家も元婚約者も無事では済まない。

そしてオルテオ。お前のためだ。
お前は間違いなく私の子だ。だが私に似た部分がないから、公表すればラーヤの不貞を疑われ、オルテオの王位継承は剥奪され、城では住めなくなる」

「僕は…」

「部屋に戻って、じっくりと自分の将来を考えなさい」


この日、ずっと僕の中にあったものが砕け散った。


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