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ライアン達の子

情報ギルドへ

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【 リリアンの視点 】


ウィリアム・パトローヌ。
ゼイン殿下の婚約者の兄で、次期侯爵だった。

「リリアン嬢。少しいいかな」

「はい」

「リリアン嬢はゼイン殿下の気持ちに応えるつもりはあるのかな」

「ゼイン殿下の婚約者はパトローヌ侯爵令嬢です。
他はございません」

「リリアン嬢の気持ちが知りたいんだ」

「都合のいい気持ちだけお知りになりたいのでは?
何故それに私が答えなければならないのです」

「…思っていたより気が強いんだな」

「私がどうこうではなく、貴方が不躾なのです。
大抵のことは思い通りになると思っておられませんか?

質問があるのでしたら、文書にしてバトラーズ公爵宛に送ってください」

ネックレスになっている笛を吹くと覆面をした男が姿を現した。

「リリアン様、別のお部屋へご案内します。失礼」

私を横抱きにして連れ去ってくれた。


「ごめんなさい。こんなことで笛を使ってしまって」

「いいですよ。今日のリリアン様は武器も持っていませんし、足が痛くてあの令息から逃げられなかったのでしょう?」

「お名前は」

「アンタレスです」

「ありがとうございます、アンタレス様」




その後、お父様から、バトラーズ公爵からパトローヌ侯爵宛に手紙を送ったと聞いた。

要約すると、

“婚約者同士、もしくは王家とパトローヌ家で解決するように。うちの娘を巻き込むな”

という意味だと言っていた。


「やっぱりパパみたいな人がいい。お母様はいいな」

「グレースといられて嬉しいけど、グレースはどうだろうな」

「幸せに決まってるわ。

パパ。私にもパパみたいな人見つけて」

「それは…困難なお願いだな」

「パパ」

パパに抱きしめてもらいながら、お母様に狙いを定めるが、

「私もパパみたいな令息は知らないの。
思い切ってライアンと正反対の人にしてみたら?」

「醜男で不潔で浮気ばっかりして働かなくて、好き嫌いも多くて使用人を虐めて頭の悪い、蟻にでさえ悲鳴をあげて、ちょっと傷ができて血が滲んだくらいで失神する人のこと?

お母様は私が嫌いなのね」

「「……」」

「ひどい。いつも私がパパに甘えてるからって」

「そうじゃなくて、店をたくさん経営している人とか、お薬の研究をしている人とか、文官の出世頭とか」

「グレース」

「だってこのままだと恋も知らない籠の鳥よ?」

「やっぱり夜会に、」

「駄目だ」



どうやって探せというのか。

学園だと婚約してるかどうかわからず。
“初めまして、婚約者か恋人はいますか” と聞いてからどんな人か探らないといけない。

でも、その聞き方はいかにもだ。

王城も同じ。
 

……そうだ。


私は翌週の休校日に王都にあるお酒の店にやってきた。酒場ではない。
ここは情報ギルドが経営している受付けだと聞いた。

昔偶然耳にした。盗み聞きではない。

ここに絞ったのは店主の目のせいだ。
パパや第四達の目の雰囲気と少し近いものを感じたからだ。

「すみません。情報ギルドの方に相談があるのですが」

「何のことですか? ここはお酒を取り扱う……少しお待ちください」

店主は私の手元を見て態度を変えた。


「お嬢様、お酒を買いに来たのではないのですか!?」

「最後に買うわ」

「そうではなくて。
公爵閣下に叱られます」

「ここに来たら駄目とは言われてないもの」

「お嬢様~」


「お待たせしました。奥へどうぞ。
お連れの方はこちらでお待ちください」

「お嬢様、駄目です!」

「大丈夫。何かあったら今日中に店は無くなり、数日中にギルドも無くなるかもしれないことは彼らはしないわ」

「……こちらです」



奥に進むと階段があって、上に案内された。

二階は事務所のような感じになっている。


「それで、お嬢さん。何用かな?
確かバトラーズ家のお嬢さんだよね」

「はい。リリアンと申します」

「すごい指輪してるね」

「贈り物ですわ」

「座って。で何の用かな?」


事情と目的を話した。

「バトラーズ公爵のような、独身、婚約者無し、恋人無しの令息を国内で探せと?」

「はい」

「はぁ。いるわけないだろう」

「…実は、王妃殿下に相談して、婚活パーティでも開いてもらおうかと思ったんですけど、それだと未婚や婚約者がいないのは保証されても、恋人がいるかとか、素行やおうちの状況は分からないので、こちらの方が詳しいかと」

「王妃殿下を使うつもりだったのか」

「使うだなんて。
独身の貴族達が結ばれていけば国のためにもなるじゃないですか」

「公爵はここに来ることや目的はご存知か?」

私は首を振った。

「まったく…」

「おすすめの令息はいませんか」

「迂闊なことは言いたくない」

「情報屋さんなのに」

「仕事は選ぶ」

「お金は払いますよ」

「公爵の金だろう」

「当たり前です」

「はぁ。帰れ」

「酷い グスン」

「俺に泣き落としは通用しない」

「毎日ここに来てやる」

「何で脅すんだよ!」

「脅しじゃないです。毎日拝んで頼もうかなと」

「それが脅しだ!」



結局追い出されてしまった。





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