夫の愛が偽りだったと知った妻は離婚という名の復讐を決意する

ユユ

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授かりもの

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シトロス家の分家ホース男爵家の屋敷に招待され、久しぶりにお茶会に出席した。
男爵夫妻は私よりも10歳近く歳上で、子も3人いる。夫妻は恋愛結婚でハンナ夫人は結婚を機に貴族になった。

「伯爵様は相変わらずですか?」

「はい。王都と行ったり来たりしています」

夫人の顔が曇った。

「もうすぐ5年ですわよね、紹介はしていただけたのですか?」

「紹介ですか?」

質問を質問で返すと同席しているリドック子爵の妻カレン夫人の顔も曇った。そして2人は目を合わせる。何が言いたいのかしら。

「5年授からないと第二夫人か妾を迎えることになりますでしょう。紹介してもらったのかと…」

「あの…確かに(妊娠は)未だですけど、夫は気長に待とうと言ってくれています」

「そうですか」

「申し訳ありません、お節介でしたわ。ただ、もしお迎えになるのでしたら新しく女性が増えるということですから」

「私達も気になってしまいまして」

この領地に夫人が加わるのならどんな女性なのか知りたかったのだろう。
この話はここで終わったけど、彼女達の曇った表情が頭の中に棲みつくようになった。


セラン王国の貴族法では、5年授からないと爵位持ちなら妻の同意なしに第二夫人か妾を迎え入れることができる。爵位無しだと妻の同意を得て迎える。とはいっても妻は夫に同意しないという選択肢はない。不妊が離縁の理由になってしまうから。
貴族の血を絶やさず未来に繋げるのは貴族の義務の一つ。
迎える女性が平民の場合は妾にしかしない。それは貴族出身の正妻に対する礼儀だ。
中には男児を産んでくれた妾を夫人にしたくて、正妻に離縁を迫る夫もいて、離縁された元妻の中には命を絶つ方もいる。

私とヘンリー様も後2ヶ月で結婚5年。ヘンリー様が領地のお屋敷に帰っている間は1週間に一度交わりがある。機会を増やした方がいいのかと相談してみたら、授かりものだから急ぐ必要はないと言った。

私達は円満夫婦だと思っている。だから心配する必要はないのに、夫人方のせいで不安で仕方ない。

屋敷に戻りヘンリー様にお茶会での出来事を話すと優しく微笑み、気にすることはないと言ってくれた。


王都に発つ前夜、ヘンリー様はいつものように私のナカに注いだ。私にはヘンリー様しか経験がないから何が普通かはわからないけど、彼が淡白なのではないかと思っている。交わる時間が短い。
他の夫人にどうですかなどと聞けない。年配の使用人に聞いてみようと思ったことはあるけど、彼が夫婦の寝室を使うのは交わっている間だけで、互いに睡眠の質を下げないように終わると自分の部屋に戻ってしまう。そんな状況を知ってる使用人達が何も言わないのだから普通なのだろうと思うことにしていた。

私達夫婦はシトロス邸や宿で共寝をしたことがない。共寝もいいのではないかしらと聞いたこともあるけど、翌日の夫の仕事に影響させないのも妻の務めだからと言われてしまった。

訪問先のお屋敷や王宮で部屋をあてがわれる場合は1室だけなので共寝になる。ヘンリー様はベッドの端で背を向けて眠る。結婚したての頃に彼の背中に手を添えたときは“止めてくれ”とはっきり拒絶された。ショックだったけど、寝室を共にしない夫婦は珍しくもないと聞いていたので仕方ないと思うことにした。それでもあの父が母と同じベッドで眠っていたので、私達夫婦もそうなれたらと思っていたから未だに寂しく思う時もある。


「奥様、マークス家からお手紙が届きました」

「ありがとう」

開封すると迎えに行くから王都に行こうという誘いの手紙だった。国王陛下の二番目のお妃様が離縁をして国に帰るらしい。不要なものを処分することになり、オークションにいくつか出品することになったのだとか。覗いたらどうかという内容に心が弾んだ。
アレックス叔父様の到着予定はちょうどヘンリー様と結婚して5年が経った日だった。


到着したアレックス叔父様は相変わらず生き生きとしていた。

「エリン、元気だったか」

「はい、叔父様はお元気でしたか?」

「もちろんだよ。健康に気をつけて生活してるよ。元気いっぱいじゃないとエリンと楽しく稼げないからね」

お茶の準備をさせてメイド達を退がらせた。
待ってましたとばかりに鞄から書類を取り出してテーブルの上に広げた。

「カイルが毎回不思議がってるよ。何でエリンは外さないんだって」

「私もよくわかりません」

カイルとはマークス家の会計係だ。

「イリーゼ姉上が心配していたぞ。何かあれば帰ってきなさいって言っていた」

「お母様が? 何かって何ですか?」

「ま、まあいろいろだよ。そういえばキングスの新しいベッドは当たったよ。王室があのベッドに総取り替えしたから良い宣伝になったよ。中の部品は開発させた特殊な機械でないと再現できないから、製品を解体して真似しようとしても無理だろうな」

「うふふ、良かったです」

「4ヶ月前に買った絵はすごい値段で転売できたぞ。12倍だ。この4ヶ月の転売リストだよ」

サッと目を通した。どれもだった。

「明日出発でいいか?」

「はい。もう支度は済んでいますので」

その日の夜は早めに就寝し明朝の出発に備えた。






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