夫の愛が偽りだったと知った妻は離婚という名の復讐を決意する

ユユ

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忘れるほどの存在

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フォーソード大公様との時間は楽しかった。コレクションの逸話がとても興味深かった。結局数点で夕食の時間になりご馳走になった。

「予定がないのならしばらくうちに滞在しませんか?互いの情報交換ができると思うのです。それに買い付けもご一緒してあなた方から学びたいのです。明日宿を引き払って此処に来てもらえませんか?」

「ですがご迷惑ではありませんか?」

「だとしたらお誘いしませんよ。表向きは古物の取引のために叔父と姪かぞく友人の屋敷ここに滞在するだけですので心配ありません。ぜひお待ちしております」

「エリン、折角のご縁だ。有り難くお言葉に甘えさせていただこう」

「はい、叔父様」

「大公様、明日宿を引き払ってこちらへお伺いします」

「ええ、お待ちしております」

宿に戻り荷造りをした。
翌朝、朝食を食べた後、忘れていた話題を叔父様が口にした。

「あの男のことだが、最終的にはどうしたい?」

「え?」

「浮気夫のことだ。女と別れさせるのか、離縁したいのか。ただ…あの男は別れたフリをするか、ほとぼりが冷めた頃にまた繰り返すだろう。もしかしたらいずれ婚外子を連れてくるかもしれないし、母親も一緒かもしれない。5年経ったからな」

すっかり忘れていたわ。大公様とコレクションの話をしていたら、ヘンリー様の存在自体頭になかった。

「私、ショックでした」

叔父様は私の手の上に自身の手を乗せた。

「ですがコレクションルームで古物の話をしているうちにヘンリー様のことをすっかり忘れていたんです。今叔父様に話題に出されるまで微塵も頭にありませんでした。私、彼を愛していたはずなのに、もういなくてもいいみたいです。彼にとって私は妻ではなかったということは昨日わかりましたし。子ができる前で良かったです」

「良かった。住むところはあるから安心しなさい」

「もう彼に情報は渡しません」

婚家のため、私とヘンリー様の未来のために値が付く品を教えてきたのに、浮気相手に貢ぎ逢瀬を楽しむ資金を与えていたことになってしまった。

「念のため、姉上と義兄上にも報告しよう。こっそり金の無心に行かれて貸してしまっては困るからな」

「お父様と会うのは憂鬱ですが、仕方ありませんね」


宿を引き払って大公邸にやってきた。冗談だったのになんて言われなくて良かった。
客室は準備してあるし、昼食も準備してくれていた。大公様は来客中とのことで、私達だけで昼食を食べていた。

「詳しく調査をしてくれる者を探さないとな。オークションの主催者なら、良い人を紹介してくれるかもしれない。あいつに気付かれないようにしないとな」

「失礼、その話を詳しく聞かせてもらってもよろしいでしょうか」

「あ、大公様」

「お言葉に甘えさせていただいております」

「昼食もありがとうございます」

「座ってください」

大公様が席に着くと彼の食事が運ばれてきた。

「それで?何の調査ですか?」

私と叔父様は顔を見合わせた。

「調査内容によってご紹介できる調査所が違うのです」

「……実は」

夫ヘンリー様をレストランで見かけて浮気していると知ったこと、相手を妻だと言っていること、他のホテルも使ってるはずだということ、彼の言う事業が本当にあるのか疑わしいこと、不在の頻度、浮気の費用は私の情報で得た利益から捻出している可能性が高いことを話した。

「それは酷い。だから昨日、気分じゃないと言っていたのですね?」

「はい。ですがコレクションルームで古物を見て話をしているうちに夫の存在を忘れていたんです。それに気が付いたら、今の私に夫は必要ないなって気付いたんです」

「つまり離婚の意志があるということですね?」

「はい。ただし夫の有責にしたいので証拠隠滅をさせないよう気付かれずに証拠を集めたいのです」

「なるほど。シトロス伯爵家の帳簿は自由に見ることができますか?」

「いいえ、頼まないと見ることはできません。見せて欲しいと言っても拒否されると思います。見せたらシトロス伯爵家には不相応な大きなお金が使われていることがバレますから」

「よく分かりました。全ての調査は一任してもらえますか? その手の伝手も豊富ですので必ずご満足いただける結果をお渡しします」

「そのようなことをお願いするわけにはまいりません」

「私達は仲間であり友人です。昨日楽しかったと思っているのは私だけでしょうか?」

「とても楽しく興味深い時間でした。私もエリンも大公様との出会いに感謝しています」

「ですが私には借りをお返しすることはできません」

「借りだなんて。でしたらコレクションを増やす手伝いをしてくれたら有り難いです。あなたの勘で助けてください。私が狙った古物が入手すべきかどうか見定めて欲しい」

「お言葉に甘えさせていただきます」

「良かった…これからは友人としてお互い気楽に話しましょう。いいですか?」

「は、はい」

「よろしくお願いします」

食後、3人で王都の西側の再開発エリアを見て回った。



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