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混沌
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新たな生活を開始するのに三ヶ月もかかった。
結局採用できたのは三人で、後は男爵家から交代で来てくれる。
自分の屋敷で暮らすようになって一ヶ月。
数日に一度サルト邸に行き、ハヴィエル様のお散歩係をしている。
ほとんどのことが自分でできるからいいんだけど。
それに意外だったのはこの人だ。
「アーノルド、そんなに鍵要る?」
「要る」
「隠し武器、多すぎない?」
「罠も仕掛けたいくらいだ」
私に付き添う男は第四のアール。元第四。
また戻るかもしれないけど私の安全が分かるまでフィンネル邸で働いてくれるらしい。
ハヴィエル様はかなり警戒して反対していたけど私が引かないので渋々といった感じで同意した。
「アネット様、それほど寒くはなりませんが冬に備えてお召し物などを買い足された方がよろしいかと」
「そうね、じゃあ、」
立ち上がった瞬間、立ちくらみで倒れたがアーノルドが抱き止めてくれた。
「サラ、医者を」
「直ぐに」
「大袈裟よ。ちょっと眩暈がしただけなの」
「いいから、横になろう」
アーノルドに運んでもらいベッドで横になった。
医者が来て診察をすると人払いが成された。
「先生?」
「確か独身とお伺いしましたが」
「はい」
「ご結婚の予定は」
「ありません」
「ご懐妊です」
「は?」
「お腹に赤ちゃんがおります。月のモノが無かったのでは?」
事件があって、皆と別れて……
「慣れない生活が始まってストレスかと」
「心当たりはどのくらい前ですか」
「四ヶ月ちょっと前です」
「もし、堕胎なさるなら時間がございません。直ぐに入院が必要になります。
産むのでしたら乳母を雇った方が宜しいかと」
「一晩考えて、お返事をお手紙で出します」
「分かりました。悪阻はございませんか」
「無いわ」
「急に発現しますので桶を側に置いておくといいでしょう。
匂いに敏感になったり、食の好みが変わる方もいます。
目眩を感じたらとにかく座ってください。立っている状態から倒れては危険です。
立ち上がる時は何かにつかまるなどしてゆっくり動いてください。
水は常に置いて、夜に取りに行く必要が無いようになさってください。タオルと置いておくといいでしょう。
明日のお返事を見て必要な措置をします」
「ありがとうございました」
それから私は部屋に篭った。
幼い頃から最後の日の事まで思い出していた。
お腹に手を置きながら、ここにテオと私の子がいると嬉しい反面怖かった。
血が近いことの弊害が複数あったから。
五体満足に産まれるのだろうか、大きくなって差別を受けないだろうか、父親を知りたがった時にどう説明したらいいか。
だけど、私には殺せない。
翌朝、アーノルドを呼んで手紙を渡した。
「昨日のお医者様に届けさせてもらえる?
あと、大事なことを話さないと。
今は他言無用でお願い。すぐに皆にも知らせるけど数日はお願い」
「分かった」
「妊娠したの」
「バトラーズ卿?」
「違う。別の人よ。
告げるつもりも認知してもらうつもりもないから。この子に資産を残して生きていけるようにするわ」
「知られるとマズい?」
「そうね。揉めるわね」
「分かった」
「ありがとう」
その後使用人に告知し、ハヴィエル様にも告げた。
乳母を募集しようとしたらサルト家の乳母を紹介された。
悪阻はほとんど無く順調だった。
ハヴィエル様も三日に一度は訪ねてきてくれて、話し相手になってくれたり散歩に付き合ってくれた。
お医者が言った。
「心音が複数です。
多分双子だと思います」
その後、ハヴィエル様が慌てて乳母を探して雇った、
時が過ぎ、陣痛が始まった。
怖いので入院したら二日後には産気付いた。
こんなに痛いものだなんて思わなかった。
丸一日以上痛みと格闘し、やっと産まれた双子は男の子と女の子。
出産からもうすぐ四年、
「ママ、パパはまだ?」
「ミーシェ、ハヴィエル様はパパじゃないの」
ミーシェの顔立ちは私にそっくりで瞳の色も同じ。
「ママ、パパが消えた」
「ライアン、アーノルドはパパじゃないのよ」
ライアンの顔立ちはテオ寄りだ。瞳の色も。
双子でもそっくりとは限らないらしい。
だけど共通点は、なぜか笑い顔がテオにそっくりでびっくりした。
初めて気がついた時には涙が止まらず、双子まで泣き出して皆を混乱させた。
アーノルドは子煩悩のようで遊び相手になってくれるから特にライアンからは絶大に慕われている。
そしてハヴィエル様は、
「遅くなってごめん」
「パパ!」
「ミーシェ!サルト様って呼びなさい!」
「いいじゃないか。まだ小さいんだから。
ミーシェ、ママの言うことを聞いていたかな?」
「たぶん?」
「そうか、困らせたのか」
「だっこして!」
「誤魔化す気だな?」
そう言いながらソファに座り、ミーシェを膝の上に乗せて抱きしめている。
「ハヴィエル様は子供に甘いのね」
「ミーシェに甘いだけだよ。ライアンは?」
「アーノルドとかくれんぼしてるわ」
「いつも見つからないのに?」
「執念深いのね」
心配した血の影響は無く、五体満足だし、知能などにも問題ない。賢い方だと言われた。
「ミーシェ、ライアンを呼んできてくれないか。昼食の時間だ」
「は~い」
「アネット、双子の誕生日に結婚してくれないか」
「私など妻に迎えてはいけません。
傷モノの未婚の母で二人の子までいるのです。
サルト家に相応しくありません」
出産以降、毎年この時期になるとハヴィエル様は求婚してくる。
慈悲深い人だ。
「ハヴィエル様は有能で格好良い殿方ですから、望めば貴方だけのレディが現れますわ」
「そう言ってくれるなら私に惚れてくれないか」
「私はハヴィエル様に相応しくないのです。
私はあの子達の母として生きていきますわ」
「君が頷くまで来年も再来年も求婚するよ」
「いけません。そろそろお見合いをなさってください」
「私の心は私のものだ。その心がアネット向いている以上愛せないしサルト家の為だけに娶っては令嬢に失礼だ。
私に好きでもない女を抱けというのか?」
「ハヴィエル様」
「パパ~!ライアン見つけた~!」
「ママ~!パパが見つからない!」
絶対この屋敷には他の人を呼べない。
結局採用できたのは三人で、後は男爵家から交代で来てくれる。
自分の屋敷で暮らすようになって一ヶ月。
数日に一度サルト邸に行き、ハヴィエル様のお散歩係をしている。
ほとんどのことが自分でできるからいいんだけど。
それに意外だったのはこの人だ。
「アーノルド、そんなに鍵要る?」
「要る」
「隠し武器、多すぎない?」
「罠も仕掛けたいくらいだ」
私に付き添う男は第四のアール。元第四。
また戻るかもしれないけど私の安全が分かるまでフィンネル邸で働いてくれるらしい。
ハヴィエル様はかなり警戒して反対していたけど私が引かないので渋々といった感じで同意した。
「アネット様、それほど寒くはなりませんが冬に備えてお召し物などを買い足された方がよろしいかと」
「そうね、じゃあ、」
立ち上がった瞬間、立ちくらみで倒れたがアーノルドが抱き止めてくれた。
「サラ、医者を」
「直ぐに」
「大袈裟よ。ちょっと眩暈がしただけなの」
「いいから、横になろう」
アーノルドに運んでもらいベッドで横になった。
医者が来て診察をすると人払いが成された。
「先生?」
「確か独身とお伺いしましたが」
「はい」
「ご結婚の予定は」
「ありません」
「ご懐妊です」
「は?」
「お腹に赤ちゃんがおります。月のモノが無かったのでは?」
事件があって、皆と別れて……
「慣れない生活が始まってストレスかと」
「心当たりはどのくらい前ですか」
「四ヶ月ちょっと前です」
「もし、堕胎なさるなら時間がございません。直ぐに入院が必要になります。
産むのでしたら乳母を雇った方が宜しいかと」
「一晩考えて、お返事をお手紙で出します」
「分かりました。悪阻はございませんか」
「無いわ」
「急に発現しますので桶を側に置いておくといいでしょう。
匂いに敏感になったり、食の好みが変わる方もいます。
目眩を感じたらとにかく座ってください。立っている状態から倒れては危険です。
立ち上がる時は何かにつかまるなどしてゆっくり動いてください。
水は常に置いて、夜に取りに行く必要が無いようになさってください。タオルと置いておくといいでしょう。
明日のお返事を見て必要な措置をします」
「ありがとうございました」
それから私は部屋に篭った。
幼い頃から最後の日の事まで思い出していた。
お腹に手を置きながら、ここにテオと私の子がいると嬉しい反面怖かった。
血が近いことの弊害が複数あったから。
五体満足に産まれるのだろうか、大きくなって差別を受けないだろうか、父親を知りたがった時にどう説明したらいいか。
だけど、私には殺せない。
翌朝、アーノルドを呼んで手紙を渡した。
「昨日のお医者様に届けさせてもらえる?
あと、大事なことを話さないと。
今は他言無用でお願い。すぐに皆にも知らせるけど数日はお願い」
「分かった」
「妊娠したの」
「バトラーズ卿?」
「違う。別の人よ。
告げるつもりも認知してもらうつもりもないから。この子に資産を残して生きていけるようにするわ」
「知られるとマズい?」
「そうね。揉めるわね」
「分かった」
「ありがとう」
その後使用人に告知し、ハヴィエル様にも告げた。
乳母を募集しようとしたらサルト家の乳母を紹介された。
悪阻はほとんど無く順調だった。
ハヴィエル様も三日に一度は訪ねてきてくれて、話し相手になってくれたり散歩に付き合ってくれた。
お医者が言った。
「心音が複数です。
多分双子だと思います」
その後、ハヴィエル様が慌てて乳母を探して雇った、
時が過ぎ、陣痛が始まった。
怖いので入院したら二日後には産気付いた。
こんなに痛いものだなんて思わなかった。
丸一日以上痛みと格闘し、やっと産まれた双子は男の子と女の子。
出産からもうすぐ四年、
「ママ、パパはまだ?」
「ミーシェ、ハヴィエル様はパパじゃないの」
ミーシェの顔立ちは私にそっくりで瞳の色も同じ。
「ママ、パパが消えた」
「ライアン、アーノルドはパパじゃないのよ」
ライアンの顔立ちはテオ寄りだ。瞳の色も。
双子でもそっくりとは限らないらしい。
だけど共通点は、なぜか笑い顔がテオにそっくりでびっくりした。
初めて気がついた時には涙が止まらず、双子まで泣き出して皆を混乱させた。
アーノルドは子煩悩のようで遊び相手になってくれるから特にライアンからは絶大に慕われている。
そしてハヴィエル様は、
「遅くなってごめん」
「パパ!」
「ミーシェ!サルト様って呼びなさい!」
「いいじゃないか。まだ小さいんだから。
ミーシェ、ママの言うことを聞いていたかな?」
「たぶん?」
「そうか、困らせたのか」
「だっこして!」
「誤魔化す気だな?」
そう言いながらソファに座り、ミーシェを膝の上に乗せて抱きしめている。
「ハヴィエル様は子供に甘いのね」
「ミーシェに甘いだけだよ。ライアンは?」
「アーノルドとかくれんぼしてるわ」
「いつも見つからないのに?」
「執念深いのね」
心配した血の影響は無く、五体満足だし、知能などにも問題ない。賢い方だと言われた。
「ミーシェ、ライアンを呼んできてくれないか。昼食の時間だ」
「は~い」
「アネット、双子の誕生日に結婚してくれないか」
「私など妻に迎えてはいけません。
傷モノの未婚の母で二人の子までいるのです。
サルト家に相応しくありません」
出産以降、毎年この時期になるとハヴィエル様は求婚してくる。
慈悲深い人だ。
「ハヴィエル様は有能で格好良い殿方ですから、望めば貴方だけのレディが現れますわ」
「そう言ってくれるなら私に惚れてくれないか」
「私はハヴィエル様に相応しくないのです。
私はあの子達の母として生きていきますわ」
「君が頷くまで来年も再来年も求婚するよ」
「いけません。そろそろお見合いをなさってください」
「私の心は私のものだ。その心がアネット向いている以上愛せないしサルト家の為だけに娶っては令嬢に失礼だ。
私に好きでもない女を抱けというのか?」
「ハヴィエル様」
「パパ~!ライアン見つけた~!」
「ママ~!パパが見つからない!」
絶対この屋敷には他の人を呼べない。
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