【完結】ずっと好きだった

ユユ

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ベレニス・サックス(一つ目の過ち・微)

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【 ベレニス・サックスの視点 】


私の家はあまり裕福ではなかった。だけど夜会のドレスだけはいい物を与えてもらった。

「いいか、ある程度裕福で、できれば伯爵家以上の男を捕まえてこい。既成事実でもいい。だが、狙うのは独身だぞ」

「あなた、ベレニスはそこまでの容姿はありませんわ」

「世の中には事情持ちもいるし、色々趣向がある。瞳の色だけは良い色だ」

両親に酷いことを言われながらいつも送り出されるのは中流以上の貴族の集まる夜会だ。
どうやって招待状を手に入れているのか謎だった。

何度行っても誰にも声をかけられない。
そんな時にやっと声をかけられたのは赤茶色の瞳の人だった。

一人の私に歯の浮く様なセリフでお姫様の様に扱ってくれた。
ダンスは優しくリードして、お酒を飲みまたダンス。

メイドに起こされた。

「お客様、もうお昼になります。馬車のご用意をさせていただきました」

ハッと目を覚ますと陽は高く、迷惑そうなメイドの顔があった。

「10分後に身支度のお手伝いに参ります。お水をどうぞ」

そう言って出て行った。

喉がカラカラで水を飲み干すと、裸だということに気が付いた。

辺りを見渡すとドレスや下着が散乱していた。
起きてシーツを確認すると破瓜の証があった。しかも秘部からドロッとしたものが垂れ落ちた。タオルで拭い匂いを嗅ぐと、今までに嗅いだことのない匂いがした。

確信はないが、精液というものだと思った。

屋敷に帰ると母に叱られた。本格的に叱られるのは王宮勤めの父が帰ってから。

メイドに避妊薬を持ってくるように指示を出した。


夜帰ってきた父はいきなり私を殴った。

「アバズレが!!」

「あなた!」

「ベレニスは生娘ではなくなった」

「ベレニス!?」

「酔い潰れて寝てただけじゃない!何処の誰か分からぬ男に股を開いたんだ!」

「なんてこと!」

「これで良家には嫁げない。唯一の価値は純潔だったのに」

散々罵られた後に父が吐き捨てた言葉に絶望した。

「駄目なら娼館に売ろう」

娘をそんなところに売るほど困ってるの!?

「お父様、もっと条件を下げてください」

「下げざるを得ないだろうな。
だが、持参金を持たせられない」

そう言って部屋から出て行ってしまった。


その後、流感で大勢の人が感染した。終息する頃にはさらに子爵家は傾いたようだ。

そんなある日、父が機嫌良く帰ってきた。

母と私と弟を集めて説明をした。

「喜べ。サックス侯爵家の後妻の話が来た」

サックス侯爵家と言ったら、裕福な家門に入るし、あそこの令息は容姿も良かった。

「あなた、まさか当主の方ですか」

「次期侯爵だ。奥方が流感で亡くなり、子がいない」

「父上、条件があるのですね?」

「大きな額ではないが、毎月援助してくださる。持参金も要らないそうだ」

「まさか姉上を見染めたのですか!?」

「いや、煩わしい妻は要らないそうだ。

つまり、必要最低限の侯爵夫人の務めを果たすこと。

サックス家の方針に逆らわないこと。

サックス家とゲラン家の者に危害を加えないこと。

予め離縁届に署名をすることが条件だ」

「そんな!ベレニスを使い捨てに!?」

「そうじゃない。条件を破った時にすぐ離縁なさるそうだ。特に危害を加えないという項目が大事だ」

テーブルの上には婚姻契約書と離縁届が置かれた。

「ゲラン家?」

「当主の妹が嫁いでいる。そこの娘は美しくて有名だ。よく妬まれて被害に遭うそうだ」

「嫁になる姉が妬まないようにということですね」

「そういうことだろう。男児を産めば済む話だ。ベレニス、署名をしろ」


署名をして翌月、サックス家に移った。


結婚式やお披露目などもなく、書類の提出だけで終わった。

初日に屋敷の説明と禁止事項を聞かされた。
翌日からは領地の説明を受けて、教師が付けられた。

侯爵夫人となるとレベルが違い、大変だった。その間に医師の診察を受け、体調管理を担当する侍女が付けられた。

なんとか教育を終えたのが婚姻から四か月後、やっとテオドール様にお会いできた。

そして社交が解禁になった。

夢のようだった。

次期侯爵夫人として丁寧に扱われ、凛々しい美男子の次期侯爵が夫、素敵なドレスに宝石。羨む令嬢や夫人達。

優越感を感じていた。

ただ、公私共に接触は必要最低限、閨も日にちが決められていた。

潤滑油を使い解しながら、テオドール様は己を高めていた。挿入するとすぐに吐精して引き抜いた。
秘部を拭き、毛布をかけて部屋を去った。
一日休み、また同じことをした。

月に二回、子作りの為だけの時間だった。

月のモノがきてまた閨の日が定められた。
その二日前に出席の返事を出していた夜会に彼が行けなくなってしまった。

「一人で行けるな?」

「はい」

そして出向いた夜会で再開したのは私の初めてを奪った男だった。

文句でも言おうと思ったのに、

「何で連絡をくれなかったの?」

「は?」

「カードに連絡先と愛の言葉を書いて枕元にに置いたのに。遊びだったとは思わなかった」

え? 私が遊ばれたんじゃなかったの!?
あの時、混乱して慌てて身支度をして枕元はよく見なかった。

「ごめんなさい。気が付かなくて」

「じゃあ、遊ばれたんじゃなかったんだね」

そしてまた繰り返してしまった。
今度は眠ることなくサックス邸に戻った。

何故彼と寝てしまったのか。
それは彼が一時でも私の心を満たしてくれたから。

私を優しく丁寧に扱い、ダンスを楽しみ、酒を飲みながら談笑し、ベッドで愛を囁く。
深い口付け、口を使った愛撫、抱きしめられ、体中を触れられ、名を呼ばれ、自然と勃ち上がった陰茎を高めることなく挿入して、情交を楽しむ。

私の体で気持ち良さそうに果て、抱きしめながら“良かったよ”と囁いてくれる。

全てテオドール様からは得られないものだった。

そして私は後悔することの二つの内の一つをここでおかしてしまう。


二日後、前回のようにテオドール様は挿入前に己を扱いていた。

三度目にして気が付いた。勃たせる為だけではない。
できるだけ私のナカに挿れている時間を最小限にするためにできるだけ高めて挿入していた。

それだけでもショックだったのに、挿れると少し萎えたのか分かった。

数分後に吐精して拭き、部屋を去って行った。

私室に戻り泣き疲れて眠るまでずっと泣き続けた。








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