【完結】ずっと好きだった

ユユ

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サックス邸に移り住む双子

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【 テオドールの視点 】


帝国から帰った双子は最初は寮に帰ったが、男女別の為に一緒に勉強することができない。
学園の図書室という手もあるが、休んでいるので避けたい。
だからサックス邸にライアンを連れて帰って勉強をしていてもいいかとミーシェから手紙がきた。

直ぐに使用人を向かわせて双子を連れてきてもらった。

それが帰国の2日後の朝。
3日後の夕方に王宮から遣いが来た。

「エヴァン王子殿下がミーシェ様とライアン様にお会いしたいと希望なさっています」

ミーシェ達に聞くと、

「きっと寮におしかけたんだな」

「休みたいし、勉強に集中したいので断ってもらってもいいですか」

「任せなさい」

待合室まで戻り、使者に告げた。

「半年近く学園に通えず、卒業間近で時間がありません。疲れているし勉強が忙しいのです。登校を再開しても当面はそっとしておいて欲しいとお伝えください」

「……かしこまりました」


あの子はアネットと同じ表情をする。
あの表情は会いたくない時の顔だ。

「ありがとうございます」

「しばらくそっとしておいて欲しいと伝えてもらったよ」

「ありがとうございます」

「ライアンは卒業したらどうするか聞いているか?」

「聞いていませんが、後継ぎですのでサルトへ向かうと思います」

「分かった」


ライアンに聞いてみると、

「婚約の申込みをしたいのでサルトに戻るつもりです」

「誰なんだ?」

「隣の領地の子爵令嬢です。卒業パーティのパートナーでもあります」

「恋愛結婚か?」

「いえ、どちらでもありません。
隣だということと、無害そうなので」

お前もミーシェにとって無害かどうかで選んだのだな。

「そうか。私にできることがあれば言いなさい。協力しよう」

「ありがとうございます」

「しばらく王子をミーシェに近付けさせないでくれ」

「ミーシェが何か言っていましたか」

「いや、勘だ。アネットと同じ表情をしたから今は煩わしいことは嫌なのだろうと判断した」

「ドアを閉めてもらっていいですか。耳に入れておきたいことがあります」

ドアを閉めて座ると、セーレンでのこと、サルト領でのこと、帝国でのことを話してくれた。

「帝国の正妃か」

「それがなかなかいい人で、しかも異母弟と実父よりミーシェを選んでくれたのです」

驚いた。セーレンではミーシェが王子に襲われて影と当時の王太子によって刺殺。
帝国では帝王の乱心で、ミーシェを襲った当時の帝王をミーシェと影によって刺殺。

ライアンも認めるミーシェを優先する男か。

「気持ちの整理をする時間が必要なのだな。
学園では頼んだぞ」

「はい。場合によっては登校せずに試験とパーティだけ出ようと思います。
今まで休んだ日数はほとんど公務扱いなので、休んだとしても卒業資格はありますから大丈夫です」

「では、あとは卒業試験に合格するだけなのだな?」

「はい 」

「なら、二人とも荷物を引き上げてここから通ったらどうだ」

「ミーシェが希望したらお願いしてもいいでしょうか」

「遠慮などいらない」

夜はソラルも含めて三人で勉強をしていた。
すっかりソラルも兄弟の仲間入りだ。


一週間の休暇が過ぎると、サックス邸から通い出した。

昼食はソラルと三人で予約した席で食べながら不在中の授業ノートをソラルが見せて、放課後はさっさと帰ってきた。



ソラルを呼び出し、状況を聞いた。

「時々接触を持とうとしてきますが、学園では大っぴらに追いかけ回せないので苛立ってきています。

馬車乗り場で待ち伏せされたこともありますが、父上と約束があると言って帰ることにしています。

今は殿下は下級生への引き継ぎがありますので放課後に残ることが多いのです。

それより、殿下には今噂が立っています」

「どんな噂だ」

「下級生の令嬢との仲です。婚約秒読みではないかと。
その令嬢は伯爵家から侯爵家に養女に入って一年になるところです。卒業パーティも貴賓の案内などで出席します。

今そのことで殿下と関わりがあるのです。
引き継ぎなのでグループなのですが、令嬢は頻繁に不明点や問題点をあげて殿下の教室へ質問をしにくるらしいのです」

「質問だと周囲が分かっているなら大丈夫ではないのか?何故そんな噂になるんだ」

「王宮にも時々父親に連れられて来ていて、誰かを買収しているのか偶然の遭遇があるそうです。

それに令嬢は満面の笑みで、殿下も珍しく優しげに微笑むので、もしかしてと思う者が出てきているようですね」

「ライアンは?」

「敢えてその令嬢との行動だけは放置しています」

「何故だろう」

「最終試験中だと言っていました」

「そういうことか」

「父上はライアンの目的がわかるのですか?」

「今、殿下はミーシェと婚約できるほど成長できるか試されている期間なんだ。
ライアンはミーシェにとって殿下が夫として本当に相応しいか一歩引いて試験しているんだ」

「相応しくなければ?」

「国を出ることになるかもしれないな」

「そんな、」

「私だって手放したくはないがミーシェが幸せになれるよう応援したい」




数日後、

「父上、どうやら例の下級生は曲者のようです。私が見かけた限りでは態とらしさがあります。
躓いて殿下に抱きつくかたちになったり、担当じゃない係の手伝いを申し出て、殿下に質問をしに行きます。

そしてクラスで殿下に好意を向けられているかのような話をするそうです」

「殿下は?」

「変わらず後輩として優しく接しているようです」

「ミーシェに直接何かしたか?」

「ミーシェが殿下と接触しないので今のところ大丈夫です」

「分かった」







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