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番外 十三 教会と聖女編
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前回教会関係者が三名訪ねて来て、これからもよろしくね(超要約)とあいさつされた。テオドールのことは教会も知っていたらしく、言うこと聞かすか、支配権譲れ、なんなら調伏するみたいな考えでいるらしい。だが、仲介できたマリアいわく、テオドールのことは刺激したくない……と脂汗かいて言われてしまえば、ダリオも「大変っすね」となってしまい、今後イイ感じに協力しあうことで落ち着いたのだった。
テオドールがこの館を手配した当初、周辺の怪異からはなんかクソヤバい奴来たという認識で挨拶詣でされていたのを思い出すにつけ、なるほどな~~~となってしまうダリオである。
とりあえず、周辺と摩擦を積極的に起こすのもしたくない。
なので、ダリオは分かってるのか分かってないのか謎に無関心そうなテオドールに、「教会関係者ともめごと起こさんでくれ」と伝えた。ついでに、マリアの胃痛を思い出して、「できるだけ優しくしてやって」と付け加えたのである。
話はいったん終わりだった。ひとまずは。
「あ? え? テオが人助けしてきたんですか?」
その第一報は、ダリオの携帯フォンに入って来た。教会のファースト・コンタクトから数か月は経過してのことだ。連絡を寄越してきたのは、聖マジオ騎士団管区長のナサニエル・ヘルシングである。電話を受けたのは、ちょうど講義の直後だ。てか、なんでこの人俺の携帯フォンの番号知ってんのかね、とまずダリオは疑問に思った。ひとまず首に携帯フォンを挟みながら荷物をひとまとめすると、講義室を出て、移動しながら話を聞く。
『うん、そう。うちの見習いを助けてくれてね。ああ、この間君のところに連れて行ったアリアラエルという子なんだけれど』
「あー」
玄関に放置されていじめられてんのか? と思った白修道服の女性だ。どうもてっきり彼女の所属はマリアの方かと思ったが、直属上司はナサニエルの方らしい。
『ちょっとしたトラブルがあってね、間に入ってかばってくれたようで』
へえ、とダリオは感心した。
『ふふ、トラブルと言っても、相手は悪魔だったんだけれどね。いわゆる悪魔憑きだね。肩を外された上にレイプされそうになったのを助けてくれたそうだよ』
「いやいやいやいやいや」
ダリオは思わず携帯フォンを取り落としそうになった。
「ちょっと情報量が多すぎますね! 大丈夫だったんですか、それは?」
『問題なかったよ、小鹿ちゃんは――ああ、私は彼女を小鹿ちゃんと呼んでいるんだが』
真面目に情報量多いなとダリオは無の顔となる。とりあえず講義棟を出ると、人気の少ない木陰の方へと歩いて行った。
ちょうどよい緑の広葉樹の下で、ようやく落ち着いてやり取りしたが、ナサニエルの言いたいことは改めて正式にお礼をしたいということだった。
「はあ。俺は構いませんが、テオにも話を聞かないと」
『うん。それはよろしくお願いしたいな。――ぜひとも改めて直接にお礼申し上げたい』
ん? とダリオは何か引っかかる。というか、この人最初からちょくちょく引っかかるんだよな、とダリオは相手に顔が見えないのをいいことに眉を寄せた。
あとは儀礼的に話して携帯フォンの電話機能を切ると、帰宅したらテオに確認すっか、とダリオは次の講義室へと向かった。
講義が終わると、クラブ・ラビットホールでアルバイトをして、今日はどういうわけかテオドールが迎えに来た。
「ダリオ君、テオドール君が来ているじゃないかね!」
「あ、お迎えだね!」
店内で待ってもらいなさい! と店長やアルバイト仲間のクリスから謎の歓迎と後押しを受ける。店長はテオドールが定期的に顔を出すと客が増えるからだろう。クリスは純然たる善意と思われる。しかし、毎回そういうわけには、とダリオは断って、テオドールにはあと少しだからと外で待ってもらうことになった。
店長は残念がっていたが、客ならともかく、迎えに来ただけのテオドールを毎回クラブのメイン看板にしようと企てるのは止めた方がいいのではないだろうか。その内、テオドールに熱を上げた客による殺傷事件でも起きそうで、ダリオは本当にお勧めしない。
ダリオが店を出てクラブの入っている建物のメインエントランスに降りると、すでに事件は現場で起きていた。野太い号泣めいた嘆声が聞こえてくる。見れば、身なりのよい壮年男性が、撫でつけていたらしい黒髪を振り乱し、顔の穴という穴から液体を吹き出して、テオドールの足元に触れることもできず取りすがっていた。腕時計も靴も、足元に落ちている帽子も、一目でゼロがいくつも並ぶ高級ブランド品とわかる。
うわー……とアルバイト上がりのダリオは一気にダウナーになった。
適当に時間をつぶしてもらっている間に、クラブの入っている建物で鉢合わせたようだ。
「奴隷にしてください! なんでもする! なんでも差し上げるから! 私をしもべにしてください!!」
懇願されているテオドールは、まるで見えていないかのように涼しい顔である。俺ここに割って入っていかないといけないのか、なんの罰だ……とダリオは一種の諦観を覚えた。
テオ、と声をかけるまでもなく、青年はダリオに気づいていたようだ。「ダリオさん」と口角を少し微笑の形に上げたよう見えた。必死に請うていた身なりの良い壮年男性が、ぽかんと口を開ける。やばい、とダリオは先回りして、彼に声をかけた。
「えーとあの、すみません、知人でして」
穏便に取りなそうとしたダリオの努力は、念入りに小麦粉を空中に含ませて、火炎放射器で着火したかのように、見事な粉塵爆発をした。
「アァぁあああ?!?! きっきしゃまっ、わたしがこの方と話しているのだ!! ちじ、知人?! 凡人が戯言をいウナッッ」
目の色を変えて、男性は顔色がどす黒くなっている。唾を飛ばし怒鳴り散らす男性の上から、テオドールがダリオを見つめた。
「ダリオさん」
「駄目だ」
このダリオさんは、殺していいですかのダリオサンだよね、俺わかるよ、とダリオは首を振った。なんで許可すると思った、いや駄目って言われるの分かってて言ってるよな、一応ダメもとで言ったんだよな。いいか、駄目だ。
ダリオが言いたいことは伝わったらしい。テオドールは壮年男性を無視してすたすたとダリオの傍に寄って来た。呆然とする男性が、う、とか、ああ、とか濁音混じりに呻き声を上げる。はた目にも、とうとう口角泡を吹いているのがわかった。
「何故です。なんでも差し上げます。お金、私の持つ財産をすべて差し上げます。不動産もあります。株もあります。家族も好きにしていい!! 私を、私をしもべにしてくださいッ、おお、どうか、おねがいです! おねがいです!」
白い大理石模様の床に膝まづいて身を投げ出すように言う男性に、ダリオの方が引きつった。よくよくテオドールのしもべ志願はあるが、中でもやばいやつだ。これ放置していいやつか? 帰したところで、メンタル大丈夫か? ご家族無事なやつか? とテオドールを見る。
テオドールもダリオを見ていた。しばし見つめ合い、テオドールの方が折れたらしい。青年は小首を傾げると、「名刺」と口にした。
顔をぐちゃぐちゃに液体で汚した元は身なりのいい男性は、しばらくして意を汲んだらしい。四つ這いから、慌てて立ち上がり、懐から名刺入れを出して、テオドールにまるごと差し出した。テオドールは表情を変えず、黒手袋で一枚抜き取ると、文面を無関心に一瞥する。彼が手の甲をふるともうそこに名刺はなかった。
「必要な時は呼びます」
男性はそれだけで、どっと涙を流し、理解したらしい。
「必ずッ、必ずお役に立ちます!」
彼はそのまま何度もお礼を言いながら立ち去って行った。
テオドールと残されたダリオは思った。
ええ、俺何見せられたんだ……と。
相変わらず夜は冷え込むイーストシティを、帰宅のため、ふたりで肩を並べて歩きながらダリオは尋ねた。
「最近あそこまでな人見なかったが、なんかあれ法則あるのか? 金持ちそうな人ばっかりだろ、ああなっちゃうの……」
テオドールは黒皮手袋をした指先を口元に当て、考えてますというポーズをした。たぶんポーズだけである。社会性演出に余念がないのだ。
「僕も人間のことは、あまりにも微小過ぎてはっきりとわかりかねますが」
ダリオは俺もその微小な人間なんだが……と思ったが、今は黙る。
「どうも虚飾の器をもつ人間が、ああなりやすいようですね」
「きょしょくのうつわ」
おうむ返しになった。
「虚飾とは、内容が伴わないのに外見だけを華やかに見せる、うわべだけ飾る体裁、みえ、という意味でしたか」
「あーそうだな」
「満たされているように見えて、底が抜けているそうです。注いでも注いだ端から、漏れていく。器はうわべだけ立派ですが、底が抜けているので、器としては虚飾の器であると」
「なるほど? わかったような?」
なんで伝聞系なんだ? とダリオは思ったが、携帯フォンから、アプリの通知音がして、あ、と思い出した。昼間の電話の件である。
「テオ、なんか教会の人? アリアラエルさんを助けたって?」
「……」
沈黙に疑問符がついてそうで、あ、これ覚えてないやつ……とダリオも理解した。
「教会の人らが初めてうちに来た時、映像見たんだろ。玄関にいた白修道服の女性だ」
「ああ。そういえば、死にそうになっていたので、死なないようにしました」
「あーそう、それだと思う」
言い方、とダリオは心情的には苦笑いしつつ、話を進める。
「彼女を騎士団の支部まで送ってくれたんだって?」
「はい。ダリオさんに以前親切にするようお願いされていましたので。ダリオさんがよく安全地帯まで相手を送っていらっしゃったので、同じようにしましたが、これでよろしかったでしょうか」
「うん。俺のこと参考にしたのか。そうか、ありがとうな」
ダリオは改めて先方が直接お礼に来たいと言ってるんだけど、テオはいいかな、と尋ねた。理解しかねるようだが、ダリオさんが希望されるなら、とテオドールはいつもの回答だ。
こうして聖マジオ騎士団管区長ナサニエルと、見習いアリアラエル・グリーンが再度屋敷を訪問することになったのだった。
テオドールがこの館を手配した当初、周辺の怪異からはなんかクソヤバい奴来たという認識で挨拶詣でされていたのを思い出すにつけ、なるほどな~~~となってしまうダリオである。
とりあえず、周辺と摩擦を積極的に起こすのもしたくない。
なので、ダリオは分かってるのか分かってないのか謎に無関心そうなテオドールに、「教会関係者ともめごと起こさんでくれ」と伝えた。ついでに、マリアの胃痛を思い出して、「できるだけ優しくしてやって」と付け加えたのである。
話はいったん終わりだった。ひとまずは。
「あ? え? テオが人助けしてきたんですか?」
その第一報は、ダリオの携帯フォンに入って来た。教会のファースト・コンタクトから数か月は経過してのことだ。連絡を寄越してきたのは、聖マジオ騎士団管区長のナサニエル・ヘルシングである。電話を受けたのは、ちょうど講義の直後だ。てか、なんでこの人俺の携帯フォンの番号知ってんのかね、とまずダリオは疑問に思った。ひとまず首に携帯フォンを挟みながら荷物をひとまとめすると、講義室を出て、移動しながら話を聞く。
『うん、そう。うちの見習いを助けてくれてね。ああ、この間君のところに連れて行ったアリアラエルという子なんだけれど』
「あー」
玄関に放置されていじめられてんのか? と思った白修道服の女性だ。どうもてっきり彼女の所属はマリアの方かと思ったが、直属上司はナサニエルの方らしい。
『ちょっとしたトラブルがあってね、間に入ってかばってくれたようで』
へえ、とダリオは感心した。
『ふふ、トラブルと言っても、相手は悪魔だったんだけれどね。いわゆる悪魔憑きだね。肩を外された上にレイプされそうになったのを助けてくれたそうだよ』
「いやいやいやいやいや」
ダリオは思わず携帯フォンを取り落としそうになった。
「ちょっと情報量が多すぎますね! 大丈夫だったんですか、それは?」
『問題なかったよ、小鹿ちゃんは――ああ、私は彼女を小鹿ちゃんと呼んでいるんだが』
真面目に情報量多いなとダリオは無の顔となる。とりあえず講義棟を出ると、人気の少ない木陰の方へと歩いて行った。
ちょうどよい緑の広葉樹の下で、ようやく落ち着いてやり取りしたが、ナサニエルの言いたいことは改めて正式にお礼をしたいということだった。
「はあ。俺は構いませんが、テオにも話を聞かないと」
『うん。それはよろしくお願いしたいな。――ぜひとも改めて直接にお礼申し上げたい』
ん? とダリオは何か引っかかる。というか、この人最初からちょくちょく引っかかるんだよな、とダリオは相手に顔が見えないのをいいことに眉を寄せた。
あとは儀礼的に話して携帯フォンの電話機能を切ると、帰宅したらテオに確認すっか、とダリオは次の講義室へと向かった。
講義が終わると、クラブ・ラビットホールでアルバイトをして、今日はどういうわけかテオドールが迎えに来た。
「ダリオ君、テオドール君が来ているじゃないかね!」
「あ、お迎えだね!」
店内で待ってもらいなさい! と店長やアルバイト仲間のクリスから謎の歓迎と後押しを受ける。店長はテオドールが定期的に顔を出すと客が増えるからだろう。クリスは純然たる善意と思われる。しかし、毎回そういうわけには、とダリオは断って、テオドールにはあと少しだからと外で待ってもらうことになった。
店長は残念がっていたが、客ならともかく、迎えに来ただけのテオドールを毎回クラブのメイン看板にしようと企てるのは止めた方がいいのではないだろうか。その内、テオドールに熱を上げた客による殺傷事件でも起きそうで、ダリオは本当にお勧めしない。
ダリオが店を出てクラブの入っている建物のメインエントランスに降りると、すでに事件は現場で起きていた。野太い号泣めいた嘆声が聞こえてくる。見れば、身なりのよい壮年男性が、撫でつけていたらしい黒髪を振り乱し、顔の穴という穴から液体を吹き出して、テオドールの足元に触れることもできず取りすがっていた。腕時計も靴も、足元に落ちている帽子も、一目でゼロがいくつも並ぶ高級ブランド品とわかる。
うわー……とアルバイト上がりのダリオは一気にダウナーになった。
適当に時間をつぶしてもらっている間に、クラブの入っている建物で鉢合わせたようだ。
「奴隷にしてください! なんでもする! なんでも差し上げるから! 私をしもべにしてください!!」
懇願されているテオドールは、まるで見えていないかのように涼しい顔である。俺ここに割って入っていかないといけないのか、なんの罰だ……とダリオは一種の諦観を覚えた。
テオ、と声をかけるまでもなく、青年はダリオに気づいていたようだ。「ダリオさん」と口角を少し微笑の形に上げたよう見えた。必死に請うていた身なりの良い壮年男性が、ぽかんと口を開ける。やばい、とダリオは先回りして、彼に声をかけた。
「えーとあの、すみません、知人でして」
穏便に取りなそうとしたダリオの努力は、念入りに小麦粉を空中に含ませて、火炎放射器で着火したかのように、見事な粉塵爆発をした。
「アァぁあああ?!?! きっきしゃまっ、わたしがこの方と話しているのだ!! ちじ、知人?! 凡人が戯言をいウナッッ」
目の色を変えて、男性は顔色がどす黒くなっている。唾を飛ばし怒鳴り散らす男性の上から、テオドールがダリオを見つめた。
「ダリオさん」
「駄目だ」
このダリオさんは、殺していいですかのダリオサンだよね、俺わかるよ、とダリオは首を振った。なんで許可すると思った、いや駄目って言われるの分かってて言ってるよな、一応ダメもとで言ったんだよな。いいか、駄目だ。
ダリオが言いたいことは伝わったらしい。テオドールは壮年男性を無視してすたすたとダリオの傍に寄って来た。呆然とする男性が、う、とか、ああ、とか濁音混じりに呻き声を上げる。はた目にも、とうとう口角泡を吹いているのがわかった。
「何故です。なんでも差し上げます。お金、私の持つ財産をすべて差し上げます。不動産もあります。株もあります。家族も好きにしていい!! 私を、私をしもべにしてくださいッ、おお、どうか、おねがいです! おねがいです!」
白い大理石模様の床に膝まづいて身を投げ出すように言う男性に、ダリオの方が引きつった。よくよくテオドールのしもべ志願はあるが、中でもやばいやつだ。これ放置していいやつか? 帰したところで、メンタル大丈夫か? ご家族無事なやつか? とテオドールを見る。
テオドールもダリオを見ていた。しばし見つめ合い、テオドールの方が折れたらしい。青年は小首を傾げると、「名刺」と口にした。
顔をぐちゃぐちゃに液体で汚した元は身なりのいい男性は、しばらくして意を汲んだらしい。四つ這いから、慌てて立ち上がり、懐から名刺入れを出して、テオドールにまるごと差し出した。テオドールは表情を変えず、黒手袋で一枚抜き取ると、文面を無関心に一瞥する。彼が手の甲をふるともうそこに名刺はなかった。
「必要な時は呼びます」
男性はそれだけで、どっと涙を流し、理解したらしい。
「必ずッ、必ずお役に立ちます!」
彼はそのまま何度もお礼を言いながら立ち去って行った。
テオドールと残されたダリオは思った。
ええ、俺何見せられたんだ……と。
相変わらず夜は冷え込むイーストシティを、帰宅のため、ふたりで肩を並べて歩きながらダリオは尋ねた。
「最近あそこまでな人見なかったが、なんかあれ法則あるのか? 金持ちそうな人ばっかりだろ、ああなっちゃうの……」
テオドールは黒皮手袋をした指先を口元に当て、考えてますというポーズをした。たぶんポーズだけである。社会性演出に余念がないのだ。
「僕も人間のことは、あまりにも微小過ぎてはっきりとわかりかねますが」
ダリオは俺もその微小な人間なんだが……と思ったが、今は黙る。
「どうも虚飾の器をもつ人間が、ああなりやすいようですね」
「きょしょくのうつわ」
おうむ返しになった。
「虚飾とは、内容が伴わないのに外見だけを華やかに見せる、うわべだけ飾る体裁、みえ、という意味でしたか」
「あーそうだな」
「満たされているように見えて、底が抜けているそうです。注いでも注いだ端から、漏れていく。器はうわべだけ立派ですが、底が抜けているので、器としては虚飾の器であると」
「なるほど? わかったような?」
なんで伝聞系なんだ? とダリオは思ったが、携帯フォンから、アプリの通知音がして、あ、と思い出した。昼間の電話の件である。
「テオ、なんか教会の人? アリアラエルさんを助けたって?」
「……」
沈黙に疑問符がついてそうで、あ、これ覚えてないやつ……とダリオも理解した。
「教会の人らが初めてうちに来た時、映像見たんだろ。玄関にいた白修道服の女性だ」
「ああ。そういえば、死にそうになっていたので、死なないようにしました」
「あーそう、それだと思う」
言い方、とダリオは心情的には苦笑いしつつ、話を進める。
「彼女を騎士団の支部まで送ってくれたんだって?」
「はい。ダリオさんに以前親切にするようお願いされていましたので。ダリオさんがよく安全地帯まで相手を送っていらっしゃったので、同じようにしましたが、これでよろしかったでしょうか」
「うん。俺のこと参考にしたのか。そうか、ありがとうな」
ダリオは改めて先方が直接お礼に来たいと言ってるんだけど、テオはいいかな、と尋ねた。理解しかねるようだが、ダリオさんが希望されるなら、とテオドールはいつもの回答だ。
こうして聖マジオ騎士団管区長ナサニエルと、見習いアリアラエル・グリーンが再度屋敷を訪問することになったのだった。
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