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番外編&ifストーリー
【ifストーリー】学園編・聖誕祭前夜
しおりを挟む帝国学園に首席で入学し、その後乗竜試験で高い成績を収めたウィオル・リードは優秀な生徒であった。しかし、不慮の事故により乗竜することが怖くなり、翼竜クラスから一般クラスへと落とされてしまった。
が、一般クラスへ入った早々見知らぬ男に殴り飛ばされ、2日ほど寝込んだ。
紆余曲折を経てその殴ってきた男と結ばれたが、その鈍さに早くもくじけそうになる。
とある休日の早朝。
ウィオルは身だしなみを整えて男、ギルデウス・バンデネールの寮部屋の前に来る。事前に受付で今日来ることを伝えたはずだ。
ギルデウスは暴力的であることから学園内でも避けられる対象にある。しかし今のウィオルにとってその暴力的なところも魅力に感じられた。
緊張した面持ちでドアをノックする。
中でゴトッと音がするのに続いてゴソゴソと布擦れの音が聞こえてくる。たっぷりと10分近く待つとドアがよろよろと開けられた。
寝不足を顔に描いたような半裸の褐色肌美丈夫が深緑の目を細めていた。
「……チッ、朝っぱらから来るなよ」
ギルデウスは少し前まで夜間通学をしていたため、朝に戻してからまだ慣れていなかった。そのため毎日が寝不足に悩まされている。
自分と一緒に通学するためだと知っているウィオルはただその健気な姿に胸を打たれた。
だがーー
「そんな姿を他人に見せるな!」
ギルデウスを中に押し込んだウィオルはついでに自分も中に入った。
物が極端に少ない部屋の中はがらんとして、がらんと……なんだか前よりさらに物が少なくなっている。特に目立つのが壁際に立てかけられたトランクケースである。
「ギ、ギルデウス……その、引越しでもするのか?」
「あ?」
シャツを着ていた部屋の主はあくびをしてから頭をかく。
右目に眼帯をしているため、金具が爪に当たって軽い音を出した。
「引越し?俺が?」
「そうだ!だってほら、あそこにトランクケースがーーハッ!」
まさかついにやらかして退学か!?
以前よりギルデウスの退学デモが学園内で行われていると聞いたことがある。
「大丈夫だ!例えあなたがどこに行こうとも俺はついてーー」
「何考えてんだ」
そう言って鋭い犬歯をのぞかせてニヤッと笑い、ウィオルの首に腕を回した。
間近にきた顔にぎくしゃくしたウィオルはそれでもそっと腕を相手の腰に回した。
「今日、聖誕祭前夜だろ」
「祝い事のことか……それがトランクケースと何か関係があるのか?」
ギルデウスは口をウィオルの耳に近づかせてつぶやくように言った。
「大事な人に贈り物するんだろ?俺からの贈り物だ。よろこべ、明日から俺はお前の同室だ」
「同、室……?」
俺とギルデウスが……?ギルデウスと!?
「受け取らなかったら殺すぞ」
「受け取る!!そうだ、俺からも贈り物がある。ちょっと早くなったけど、城下町の有名な職人に作らせたものだ」
ウィオルがここへ来た目的を思い出して服の内側をまさぐる。
取り出されたのは深緑の色を輝かせるブローチだった。
「本当は保管用の箱があったのだが、フレング先輩に取られてしまいました……」
ウィオルがどこか忌々しそうに唇を噛む。
「フレングの野郎がな。なるほど」
ブローチを手に取ったギルデウスが、はっ、と笑う。
「殴り込みに行くか!」
「え?ちょ、待っ……ギルデウス!!」
懐から包丁を取り出したギルデウスはそのまま部屋を走り出してしまった。
なぜ包丁がある!?
「ダメだ!見つかったら指導される!ギルデウス!あんなヘラヘラした人のせいで犯罪者にならなくていい!!」
ウィオルは慌てて追いかけた。
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