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27.毒草マニア
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「ジェス、ちょっと良いですか」
隊長会議が終わって副団長が第3騎士隊隊長ジェス=セシリバーを呼び止めた。
薄茶色の髪と目の彼は大リス属で肉食系獣人と比べれば小柄だが、リス属とは違い大リス属はキレた時の馬力が肉食系獣人と遜色ない。
獣人の中でも基本的には魔術に長けた種族だ。
他の隊の隊長や副隊長達は関係ないと出て行っている。
「個人的に聞きたいのですが、実は魔の森で月夜花を見つけたんです。
大叔父が紅茶に浮かべて飲んでいたのを思い出して採取してきたんですが····」
「え、何でそんなもんが魔の森に?!」
ジェスが話を遮って興奮したように副団長に迫る。
部屋には月夜花の話に気を取られた俺とジェス、団長、副団長だけになった。
「それって根っこごとっすか?!」
「え、いえ、執務室にしばらく飾ろうと茎から切りましたが」
ジェスの圧に副団長が思わず後ずさる。
「えぇー、もったいない!
その花はワルシャマリ国原産で、昔と違って国交断絶したからこっちじゃ手に入らないんすよ!
まぁ根っこごとでもあの国以外で根付くのは難しいはず····そうか、魔の森の主が黒竜だからか。
一昨日は冬月の満月だったから月花から月夜花に変わったんすね。
でも飲むなら生の花は駄目っす。
必ず日光で乾燥させて飲むっす。
てか俺もそれ飲みたいっす!」
興奮したからか副団長が思わず後退るくらいにぐいぐい近づいている。
「で、ではある程度観賞したら紅茶にして一緒に飲みましょう。
ところでどうして生は駄目なんですか?」
いささか気圧されたのか声が上ずっているが、そういえばレンも乾燥させえ飲むように言ってたな。
「麻痺毒があるんすよ。
まぁそれは月花もそうなんすけど、それよりも強くなるんす。
月夜花は月花が咲いた後、その早朝から中心部分だけ残して散ってって、昼頃に赤く染まるんす。
本来の名前は月夜の後花っす。
その間に甘い香りも毒も凝縮していって赤くなるんす。
日光に当てると揮発して毒の成分は無くなるんすけどね。
まぁ生だからって毒性はそこまで強くはないんすけど、5日くらい生で飲み続けたら思考力低下してとにかく動かなくなってくるっす。
抜けるの少し時間がかかるんすよ。
根っこは少量でも幻覚とか見ちゃうし、神経性なんで針とかで刺されたら即効きして暴れたりするからそこらの麻薬よりよっぽど危険すね。
ただ常習しなければ数日くらいで体からは抜けるっす」
ジェスは40才で騎士歴も長いが、敬語が残念な男なのだ。
にしてもレン、なんて物を笑顔で渡したんだ····。
まぁ注意は教えてくれたけど、圧倒的説明不足なんじゃ····。
「そうかぁ、俺、魔の森忍び込んでみたいっすね。
魔獣避けの魔石で何とかなるんすよね?
こないだの麻薬といい、月花といい、他にも色々毒草ありそうでめっちゃ魅力的っす」
でたよ、毒草好きめ。
つうか自主的に忍び込んだらファルに瞬殺されるぞ。
流石にレンもこの場合は止めないだろうし。
「やめときなさい。
黒竜に殺されますよ。
それよりどうして竜がいると自生するんです?」
うん、副団長もそりゃ止めるよな。
「竜には竜気っていうのがあって獣気みたいに意図しないと発っせられないのと違って自然と体から漏れてるんす。
もちろん威圧するのに獣気みたいに意図して発っする事もできるらしいっすよ。
高位の竜ほど竜気は強くて質が良いらしいんすけど、その高位の竜気がないと月花は育たないって言われてるんすよ。
あ、てことはもうワルシャマリでも採れにくくなってるかもしれないっすね」
「そうなんですね。
しかし随分詳しいですね」
「そりゃ毒草マニアっすから、俺。
でも月花については副団長の大叔父殿の受け売りっすよ。
ほら、俺の祖父と仲良かったじゃないっすか。
祖父の家で30年くらい前に会った時に花茶貰って、その時質問責めにしたんすよ。」
そういえばジェスの祖父も元騎士団隊長だったな。
「そうだったんですね。
どこで放浪してるのかと思ってましたが、あの人は本当に」
仕方のない人だなぁと笑うその顔は故人を悼むものだった。
「引き止めてすみません。
ありがと····」
「あぁ!
そっかぁ、そうっすよ!」
「どうしたんです?」
突然閃いたとばかりにぱあっと明るく笑うラングに訝しげな俺達。
「俺、やっばいからくり解いたかもしれないっす!」
ニカッと笑う毒草マニアだった。
隊長会議が終わって副団長が第3騎士隊隊長ジェス=セシリバーを呼び止めた。
薄茶色の髪と目の彼は大リス属で肉食系獣人と比べれば小柄だが、リス属とは違い大リス属はキレた時の馬力が肉食系獣人と遜色ない。
獣人の中でも基本的には魔術に長けた種族だ。
他の隊の隊長や副隊長達は関係ないと出て行っている。
「個人的に聞きたいのですが、実は魔の森で月夜花を見つけたんです。
大叔父が紅茶に浮かべて飲んでいたのを思い出して採取してきたんですが····」
「え、何でそんなもんが魔の森に?!」
ジェスが話を遮って興奮したように副団長に迫る。
部屋には月夜花の話に気を取られた俺とジェス、団長、副団長だけになった。
「それって根っこごとっすか?!」
「え、いえ、執務室にしばらく飾ろうと茎から切りましたが」
ジェスの圧に副団長が思わず後ずさる。
「えぇー、もったいない!
その花はワルシャマリ国原産で、昔と違って国交断絶したからこっちじゃ手に入らないんすよ!
まぁ根っこごとでもあの国以外で根付くのは難しいはず····そうか、魔の森の主が黒竜だからか。
一昨日は冬月の満月だったから月花から月夜花に変わったんすね。
でも飲むなら生の花は駄目っす。
必ず日光で乾燥させて飲むっす。
てか俺もそれ飲みたいっす!」
興奮したからか副団長が思わず後退るくらいにぐいぐい近づいている。
「で、ではある程度観賞したら紅茶にして一緒に飲みましょう。
ところでどうして生は駄目なんですか?」
いささか気圧されたのか声が上ずっているが、そういえばレンも乾燥させえ飲むように言ってたな。
「麻痺毒があるんすよ。
まぁそれは月花もそうなんすけど、それよりも強くなるんす。
月夜花は月花が咲いた後、その早朝から中心部分だけ残して散ってって、昼頃に赤く染まるんす。
本来の名前は月夜の後花っす。
その間に甘い香りも毒も凝縮していって赤くなるんす。
日光に当てると揮発して毒の成分は無くなるんすけどね。
まぁ生だからって毒性はそこまで強くはないんすけど、5日くらい生で飲み続けたら思考力低下してとにかく動かなくなってくるっす。
抜けるの少し時間がかかるんすよ。
根っこは少量でも幻覚とか見ちゃうし、神経性なんで針とかで刺されたら即効きして暴れたりするからそこらの麻薬よりよっぽど危険すね。
ただ常習しなければ数日くらいで体からは抜けるっす」
ジェスは40才で騎士歴も長いが、敬語が残念な男なのだ。
にしてもレン、なんて物を笑顔で渡したんだ····。
まぁ注意は教えてくれたけど、圧倒的説明不足なんじゃ····。
「そうかぁ、俺、魔の森忍び込んでみたいっすね。
魔獣避けの魔石で何とかなるんすよね?
こないだの麻薬といい、月花といい、他にも色々毒草ありそうでめっちゃ魅力的っす」
でたよ、毒草好きめ。
つうか自主的に忍び込んだらファルに瞬殺されるぞ。
流石にレンもこの場合は止めないだろうし。
「やめときなさい。
黒竜に殺されますよ。
それよりどうして竜がいると自生するんです?」
うん、副団長もそりゃ止めるよな。
「竜には竜気っていうのがあって獣気みたいに意図しないと発っせられないのと違って自然と体から漏れてるんす。
もちろん威圧するのに獣気みたいに意図して発っする事もできるらしいっすよ。
高位の竜ほど竜気は強くて質が良いらしいんすけど、その高位の竜気がないと月花は育たないって言われてるんすよ。
あ、てことはもうワルシャマリでも採れにくくなってるかもしれないっすね」
「そうなんですね。
しかし随分詳しいですね」
「そりゃ毒草マニアっすから、俺。
でも月花については副団長の大叔父殿の受け売りっすよ。
ほら、俺の祖父と仲良かったじゃないっすか。
祖父の家で30年くらい前に会った時に花茶貰って、その時質問責めにしたんすよ。」
そういえばジェスの祖父も元騎士団隊長だったな。
「そうだったんですね。
どこで放浪してるのかと思ってましたが、あの人は本当に」
仕方のない人だなぁと笑うその顔は故人を悼むものだった。
「引き止めてすみません。
ありがと····」
「あぁ!
そっかぁ、そうっすよ!」
「どうしたんです?」
突然閃いたとばかりにぱあっと明るく笑うラングに訝しげな俺達。
「俺、やっばいからくり解いたかもしれないっす!」
ニカッと笑う毒草マニアだった。
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