《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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38.クミヒモ

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「お前を助けたのはレンだ。
俺はお前に用はない。
グラン、起きたら飲ませろ」

 ファルは小屋に戻ってすぐにレンをベッドに寝かせた。
何かしら思うところはあるんだろうが、レンが眠ってからの仕草は優しい。
もちろんレン限定だ。
俺にあの薬を渡して消える。

「待ってくれ!」

 慌てて男が駆け寄るが、ファルはもういない。

 俺は薬をハンカチで包んで懐に入れ、ベッドの端に腰かけた。
持っている武器は全てテーブルに置くよう指示する。
ウォンが俺の足元に寝そべるとキョロが窓から入ってレンの枕元に座った。
男は一瞬迷うように視線をさ迷わせたが、腹をくくったのか武器を置いて俺達の目の前にドカッと胡座をかいて座った。

「私はザガド=ワルシャマリ。
ワルシャマリ国の第1王弟だ」
「俺はグラン。
この子の番だ。
黒竜から君を助けたのはこの子だ。
わかっていると思うが黒竜はまだ君を殺す気でいるし、殺すつもりで炎で炙った」
「あぁ、微かだが聞こえていた。
その子は何者だ?
本来なら治癒魔法などでは助からなかったはずだ。
ただの人属ではないだろう」
「俺は何も言う気はない。
すまないが、この子が起きるまで待っていてくれ」

 ザガドは当然だと頷く。

「消耗させたのは他ならぬ私だ。
首が赤いが、それも私のせいか。
私が探していたのはその子かもしれん。
最近まともに寝ていなくてな。
休みながら待たせてもらう」

 俺達は何をするわけでもなくただレンが目覚めるのを待った。

ーーーー

「ん····ぅ?」
「起きたか。
体はどうだ?」
「····ファルは?」

レンの頬に手を添えながら話す。
小屋の中はいささか薄暗くなってきたので明かりをつけた。
レンはやはりファルが気になるようで、俺の質問には答えてくれず、不安そうに誰かを探して視線をさ迷わせる。

 ····つれない。
だがまだ子供だ。
保護者役のファルがあんな事の後にいなかったら不安にもなるよな。

「ファルはいつも通りその辺にいるんじゃないか」
「そう····」

 無半ば理矢理納得しようとしたが、他の男の事で目に見えて落ち込まれるとやっぱり妬けてしまうぞ。

「起こしても大丈夫か?」

 頷くのを確認して抱き上げて膝に座らせ、薄手の毛布を肩から掛けてくるむ。
ザガドとレンの目が合ったのを確認する。

「彼はザガド、ワルシャマリ国の王弟だ」
「助けてくれた事、礼を言う」
「助けたわけじゃないし、今度こそ殺されるかもしれないよ。
黒竜は君を助けるとは言ってない。
君が侵入者である事も変わらない。
下手な期待はせずに僕が君に聞きたい事があって延命しただけだと思ってた方がいい」
「わかっている。
全てとは言わないが、聞こえてはいた」
「そう、黒炎に炙られてたのに随分頑丈だね」

 無表情なレンも、こんなに静かで冷たい声も森に来てから初めてだ。

「これでも竜人の王族だ。
そこらの獣人より頑丈なんだ。
聞きたいのはこの飾り紐の事だろう?」

 あの黒炎のなかでも聞いていたというのは本当のようだ。

「うん、それは誰の物?」
「兄である国王の伴侶の物だ」
「どうして君が持っているの?」
「兄の伴侶が今死にかけている。
兄が延命に力を注いで伴侶と共に休眠し、私が兄達の周りに守護結界を張っている。
だが伴侶の容態がいつ急変するかわからない為、彼が肌身離さず大事にしてきたこれを依代にして感知できるよう術を施した」
「少し····見せてもらってもいい?」

 本当に微かだったが、躊躇ったのか?

 頷いたザガドが差し出した小さな手の平にのせると片方の細い指先がそっと編まれた糸をなぞる。
レンは確かクミヒモと言っていた。

「何故死にかけているの?」
「私達にはわからない。
だが伴侶は理由を知っているらしく、昔一度は完治した病が再発したと言っていた」
「再発?」
「こうなる可能性がある事は説明を受けた上で薬と手術という異世界の治癒術の実験を受けて1度は完治したらしい。
実験とは言ってもチケンというもので非人道的な術ではないらしい。
元々の病で外傷ではないから治癒魔法では治らないし、私達の世界の医療技術では治癒できない」
「····異世界に、私達の世界?」
「そうだ。
彼は魔法がない異世界より召還したイギリスジンという種族だ。
飾り紐は元の世界で共にチケンを受けた年下の子供が亡くなった母親から習って作った物らしい。
その母親が薬や治癒術を発明し自分は助かったと、これを見る度感謝しているのだと言っていた」
「それを伴侶に渡した子供がどうなったか聞いてる?」
「チケンを乗り切った同志として定期的に会っていたと聞いている」
「····そう」

 飾り紐を返すとそれきりレンは黙り、無意識にだろうが右手で左胸、左手で腹の上の服をギュッと握る。
無表情なレンからは何の感情も読み取れない。
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