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39.侵入者が増えた理由
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「私は兄の伴侶を助けて欲しくてこの森に入った」
「どうしてこの森に入ったら助けてもらえると思ったの?」
「竜人は精霊と相性が良い者が多いが私は特に良いらしく姿も見える。
中でも風の精霊とは仲が良く、伴侶を治癒できる術がないか世界中で何年も探らせていた。
少し前だが風の精霊に死ぬはずだった者達がこの森に入り、数日後には無傷で出てきたと伝え聞いた。
中でも腕と足を切り落とした者を黒髪の少年がその場でくっつけ、ただならぬ濃さになった魔素を消してから森に連れて行ったという話を聞いて黒竜の仕業だと思ったんだ」
それ、間違いなく俺を助けた時のレンだよな。
まさか俺がこいつを引き寄せたとは。
何とも申し訳ない気持ちになって膝の上のレンを抱きしめる。
「黒竜の支配するこの森の中での事は何故か精霊は口を閉ざすが、森の外の事なら森に関わる事も少しは教えてくれる。
だが今は治癒したのは君だったと確信している。
兄の伴侶を助けて欲しい。
この通りだ。
代わりに私ができることは何でもする」
ザガドが頭を下げたが、レンは気にせず追及していく。
「····だから最近竜人の侵入者が増えていたの?」
「それは違う!
あれは····我が国の麻薬中毒に陥った者達か、黒竜を取り戻そうとする愚弟のどちらかだ」
「どうして?」
「月花は高位の竜が放つ竜気で芽吹くが、我が国から白竜に続き黒竜もいなくなった事で月花が育たなくなって解毒出来ない者達が出てきた。
当時は月花の花びらがあるからと軽はずみに手を出した中毒者達の中でも特に竜人は寿命が長い。
黒竜が我が国からいなくなって500年ほど経ったが解毒出来ないまま気休めと称して月花の根を摂取し続けた中毒者達が今なおいる。
花は咲かずとも根は残っていたし、いつか咲くかもしれないとわざと残していた者達がいたのだ。
兄上が休眠する前までは国をあげて根を回収し、そうした者達を見つけ出しては隔離して時間がかかっても薬を抜いてきた。
もちろん上手く隠れた者はいたし、誘惑に負けた者もいただろうが、寿命を迎える者もいた事で少しずつ減っていた。
だが兄上が休眠してからのこの1年のうちに何故か中毒者達が増えた。
そしてその者達の間でこの森に月花が咲いていると噂が囁かれ始めたんだ。
噂の出所はこの森の端の方で自生する毒草を狙って侵入し逃げ帰った闇商人達だったが、精霊達を使って更に探れば愚弟が絡んでいた。
愚弟は当初ジャカネスタ国からワイバーンを密輸入し、月花が咲く夜に中毒者達を空から送ろうとした。
闇商人が放った青竜が上空からこの森に侵入できたのを知ってワイバーンに目をつけたらしい。
ただ時間がなかった為に麻薬で調教しようとした事と、何よりこの国の騎士達によって討伐された事で計画は流れ、今は狂った竜人が単身で乗り込むのみになった」
なるほど、やはりワイバーンの事件は2番目の王弟の仕業か。
俺は思わず眉間に皺を寄せる。
「その愚弟も中毒者?」
「いや、あれは狡猾な上に慎重な性格で麻薬には手を出さない。
だが月花の根には投与の仕方で竜人の身体能力を一時的に上げる作用がある。
月花の咲いたあの日、数人でも竜人が月花に到達すれば黒竜に対抗出来ると考えたのだろう」
「····馬鹿なの?
その程度で黒竜に勝てるなんて本気で王弟が考えたって事?」
「勝てる事が大事ではない。
黒竜を取り戻そうとした事実、竜人が力ある者であると証明する事が重要だったんだ。
竜人限定の月花の根の効力は私達王族が秘匿していたし、その効果が出るほど1度に多量に摂取した者もこれまでいなかった。
愚弟もワイバーンが来てから侵入する竜人に実行するつもりだった」
「それを証明して、王になろうとした?」
「大まかにはそれで正しい。
だが実際は兄が休眠した隙に伴侶共々殺し、王になった後は麻薬中毒者を兵器にして武力でもって諸外国を制圧する事が狙いだ。
恐らくその後は兵器を抹殺するだろうがな」
「····竜人の今の人口で可能だと思ってるの?
周りは同盟によって手を組んでるし、番との結び付きが獣人より強固な竜人だからこそ戦わない番を狙えば多少時間がかかっても簡単に数を減らせるよね?
国交を絶った本当の理由は当時強さに溺れた武力の派竜人を廃除するのに諸外国が彼らの番を狙ったからじゃなかったかな」
「よく知っているな」
淡々とした口調でレンは離しているが、抱きしめていた腕を緩めて顔を盗みみればほのかな怒りが黒い目に宿っているように思えた。
「ここの前の主は白竜だよ。
それに魔の森をここに作ったのは当時の竜人至上主義の武力派達が他の獣人を虐殺した怨嗟で大量の魔素を作ったから。
この国を含め諸外国が魔の森を治外法権扱いしてる本当の理由をどうして君達がちゃんと認識してないの?
黒竜を取り戻すって認識がそもそもおかしいし、白竜も黒竜も君達竜人の為にここを管理してる。
好き勝手したワルシャマリ国の身勝手な保身の為の鎖国を何故諸外国が認めたのか、本当にわかってないの?」
「····すまない、それはどういう····」
ザガードが目を見開いて口ごもる。
初めて知ったということか。
奇遇だな。
俺も次々知らない情報が出てきてついてもいくのがやっとだ。
「どうしてこの森に入ったら助けてもらえると思ったの?」
「竜人は精霊と相性が良い者が多いが私は特に良いらしく姿も見える。
中でも風の精霊とは仲が良く、伴侶を治癒できる術がないか世界中で何年も探らせていた。
少し前だが風の精霊に死ぬはずだった者達がこの森に入り、数日後には無傷で出てきたと伝え聞いた。
中でも腕と足を切り落とした者を黒髪の少年がその場でくっつけ、ただならぬ濃さになった魔素を消してから森に連れて行ったという話を聞いて黒竜の仕業だと思ったんだ」
それ、間違いなく俺を助けた時のレンだよな。
まさか俺がこいつを引き寄せたとは。
何とも申し訳ない気持ちになって膝の上のレンを抱きしめる。
「黒竜の支配するこの森の中での事は何故か精霊は口を閉ざすが、森の外の事なら森に関わる事も少しは教えてくれる。
だが今は治癒したのは君だったと確信している。
兄の伴侶を助けて欲しい。
この通りだ。
代わりに私ができることは何でもする」
ザガドが頭を下げたが、レンは気にせず追及していく。
「····だから最近竜人の侵入者が増えていたの?」
「それは違う!
あれは····我が国の麻薬中毒に陥った者達か、黒竜を取り戻そうとする愚弟のどちらかだ」
「どうして?」
「月花は高位の竜が放つ竜気で芽吹くが、我が国から白竜に続き黒竜もいなくなった事で月花が育たなくなって解毒出来ない者達が出てきた。
当時は月花の花びらがあるからと軽はずみに手を出した中毒者達の中でも特に竜人は寿命が長い。
黒竜が我が国からいなくなって500年ほど経ったが解毒出来ないまま気休めと称して月花の根を摂取し続けた中毒者達が今なおいる。
花は咲かずとも根は残っていたし、いつか咲くかもしれないとわざと残していた者達がいたのだ。
兄上が休眠する前までは国をあげて根を回収し、そうした者達を見つけ出しては隔離して時間がかかっても薬を抜いてきた。
もちろん上手く隠れた者はいたし、誘惑に負けた者もいただろうが、寿命を迎える者もいた事で少しずつ減っていた。
だが兄上が休眠してからのこの1年のうちに何故か中毒者達が増えた。
そしてその者達の間でこの森に月花が咲いていると噂が囁かれ始めたんだ。
噂の出所はこの森の端の方で自生する毒草を狙って侵入し逃げ帰った闇商人達だったが、精霊達を使って更に探れば愚弟が絡んでいた。
愚弟は当初ジャカネスタ国からワイバーンを密輸入し、月花が咲く夜に中毒者達を空から送ろうとした。
闇商人が放った青竜が上空からこの森に侵入できたのを知ってワイバーンに目をつけたらしい。
ただ時間がなかった為に麻薬で調教しようとした事と、何よりこの国の騎士達によって討伐された事で計画は流れ、今は狂った竜人が単身で乗り込むのみになった」
なるほど、やはりワイバーンの事件は2番目の王弟の仕業か。
俺は思わず眉間に皺を寄せる。
「その愚弟も中毒者?」
「いや、あれは狡猾な上に慎重な性格で麻薬には手を出さない。
だが月花の根には投与の仕方で竜人の身体能力を一時的に上げる作用がある。
月花の咲いたあの日、数人でも竜人が月花に到達すれば黒竜に対抗出来ると考えたのだろう」
「····馬鹿なの?
その程度で黒竜に勝てるなんて本気で王弟が考えたって事?」
「勝てる事が大事ではない。
黒竜を取り戻そうとした事実、竜人が力ある者であると証明する事が重要だったんだ。
竜人限定の月花の根の効力は私達王族が秘匿していたし、その効果が出るほど1度に多量に摂取した者もこれまでいなかった。
愚弟もワイバーンが来てから侵入する竜人に実行するつもりだった」
「それを証明して、王になろうとした?」
「大まかにはそれで正しい。
だが実際は兄が休眠した隙に伴侶共々殺し、王になった後は麻薬中毒者を兵器にして武力でもって諸外国を制圧する事が狙いだ。
恐らくその後は兵器を抹殺するだろうがな」
「····竜人の今の人口で可能だと思ってるの?
周りは同盟によって手を組んでるし、番との結び付きが獣人より強固な竜人だからこそ戦わない番を狙えば多少時間がかかっても簡単に数を減らせるよね?
国交を絶った本当の理由は当時強さに溺れた武力の派竜人を廃除するのに諸外国が彼らの番を狙ったからじゃなかったかな」
「よく知っているな」
淡々とした口調でレンは離しているが、抱きしめていた腕を緩めて顔を盗みみればほのかな怒りが黒い目に宿っているように思えた。
「ここの前の主は白竜だよ。
それに魔の森をここに作ったのは当時の竜人至上主義の武力派達が他の獣人を虐殺した怨嗟で大量の魔素を作ったから。
この国を含め諸外国が魔の森を治外法権扱いしてる本当の理由をどうして君達がちゃんと認識してないの?
黒竜を取り戻すって認識がそもそもおかしいし、白竜も黒竜も君達竜人の為にここを管理してる。
好き勝手したワルシャマリ国の身勝手な保身の為の鎖国を何故諸外国が認めたのか、本当にわかってないの?」
「····すまない、それはどういう····」
ザガードが目を見開いて口ごもる。
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