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44.ろくでもない事~ベルグルside
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「団長、第5騎士隊隊長より至急お届けするよう仰せつかりました。
報告書は中に入れたとの事です。
第5騎士隊隊長は第4騎士隊隊長にこれを預けるとすぐにいずこかへ発たれました。
行き先は教えていただいておりません」
「····わかった、下がれ」
グランに贈った収納鞄であるのを確認し、彼が休暇を終えてもまだこちらに戻らない事から魔の森のあの愛くるしい黒の番に何事かが起きたと悟る。
自然と深く、長いため息をつく。
「絶対ろくでもない事だろ」
思ってた言葉がついつい口をつくが、誰にも咎められはしない。
あの小さく可愛らしい番が絡んだのなら、全く可愛らしくない事態が起こったに違いない。
あー、1人でこの鞄開ける勇気が湧かんな····。
「レイブ、すぐ執務室に」
この嫌な予感を分かち合える唯一にして無二の直属の部下であり、右腕であり、親友でもある男を風を使って呼びつける。
彼はいつも通りすぐに訪れた。
が、ドアを開けて目の前の来客用のテーブルに置いた鞄を見た途端、いつもは冷静沈着で優雅な動作を自然に行う黒兎は勢い良くドアを閉めた。
ヤバイ!
兎の危機管理能力は高かった!
俺は一瞬の判断の元に目前のテーブルを飛び越え、部屋のドアノブに手を掛けた。
チッ!
向こうもドアノブに手を掛けて阻んでやがる!
「待て待て待て!
入って来い!」
「嫌ですよ!
絶対ろくでもない事でしょう!」
「頼む!
俺だけに押し付けてくれるな!」
「巻き込み事故は御免です!」
そんな押し問答をドアの内と外で5年ぶりくらいにした後、レイブがドアノブが軋み始めたのに怯んだ瞬間何とかドアを開けて引きずり込んだ。
純粋な力比べならば俺が上だ。
なおも悪あがきをするレイブを執務机の前にある来客用ソファに座らせる。
俺は以前グランが座った向かい側だ。
暫しの沈黙の後、レイブが動く。
「····開けますよ」
「····ああ」
鞄には個別識別の魔法が施されており、俺達とレン、グランだけが開けられるよう設定されている。
俺が逃がす気が無い事を悟ったレイブが観念して鞄を開ける。
中からはまずは弁当の包み。
こないだの3倍ほど入っている。
多分俺達3人分だろう。
その気遣いにほっこりさせられる。
「良い匂いですね。
カラアゲもありますね」
微笑んだレイブが匂いを嗅いでごくりと喉を鳴らした。
俺も口の中に湧き出た唾液を飲み込む。
他に花茶が入った包み、グランの私物が出てきた。
····ちょっと待て。
レンが森で髪を結んでいた紐も出てきたが、断りは入れたよな?
いくら番の物でも無断はダメだ。
グラン、お前一応騎士だからな。
そして最後に四つ折りにした紙が出てきた。
「ベルグル、この雑に折った紙が嫌な予感を掻き立てるんですが····」
「奇遇だな。
俺もそうだが、やっぱり先に俺が読むべきなのか?
俺じゃなくてもいいんじゃないのか?」
何言ってる、当然だろうと目で物を言いながら神妙な顔で頷いて渡された。
雑な折り方で予想していたが、やはり急いでいたようで走り書きのように書きなぐられていた。
「····読んで見ろ」
内容を確認して、再びため息がこぼれる。
その後のレイブも同じだった。
「「やっぱりろくでもない」」
2人してソファに深くもたれた。
「レン····ちっこいくせに、何でっかい事してるんだ」
「大叔父はどうやってレンみたいな子に育てたのか1から聞かせて欲しいものです」
しばらく無言で過ごす。
むしろ何から手をつけるべきか。
「団長、今時間はあるか」
不意に風が声を届ける。
王太子殿下の声だ。
すぐに応じ、レイブは窓を開けて風を使って換気し、俺は弁当を再び戻して鞄を隠してから共に腰かけて来客を待つ。
やがてドアがノックされた。
「ビビット商会の副会長殿がいらっしゃいました」
「話は聞いている。
通せ。」
レイブが入ってきた焦茶短髪に青灰細目で細身の虎属の男に対面のソファをすすめた。
「いやぁ、急にすんません。
国王陛下と王太子殿下より、お2人にもすぐにお伺いするようご指示がございまして。
ビビット商会副会長のトビドニア=エトランと申します。
トビとお呼び下さい」
「騎士団団長のベルグル=ドランクだ」
「騎士団副団長のレイブ=ワグナロスです」
自己紹介が終わる頃を見計らい、応対係がお茶を置いて退出した。
商会の副会長が一体何の用があるのか。
レンの事もあるし、タイミング的にも嫌な予感がして仕方ない。
報告書は中に入れたとの事です。
第5騎士隊隊長は第4騎士隊隊長にこれを預けるとすぐにいずこかへ発たれました。
行き先は教えていただいておりません」
「····わかった、下がれ」
グランに贈った収納鞄であるのを確認し、彼が休暇を終えてもまだこちらに戻らない事から魔の森のあの愛くるしい黒の番に何事かが起きたと悟る。
自然と深く、長いため息をつく。
「絶対ろくでもない事だろ」
思ってた言葉がついつい口をつくが、誰にも咎められはしない。
あの小さく可愛らしい番が絡んだのなら、全く可愛らしくない事態が起こったに違いない。
あー、1人でこの鞄開ける勇気が湧かんな····。
「レイブ、すぐ執務室に」
この嫌な予感を分かち合える唯一にして無二の直属の部下であり、右腕であり、親友でもある男を風を使って呼びつける。
彼はいつも通りすぐに訪れた。
が、ドアを開けて目の前の来客用のテーブルに置いた鞄を見た途端、いつもは冷静沈着で優雅な動作を自然に行う黒兎は勢い良くドアを閉めた。
ヤバイ!
兎の危機管理能力は高かった!
俺は一瞬の判断の元に目前のテーブルを飛び越え、部屋のドアノブに手を掛けた。
チッ!
向こうもドアノブに手を掛けて阻んでやがる!
「待て待て待て!
入って来い!」
「嫌ですよ!
絶対ろくでもない事でしょう!」
「頼む!
俺だけに押し付けてくれるな!」
「巻き込み事故は御免です!」
そんな押し問答をドアの内と外で5年ぶりくらいにした後、レイブがドアノブが軋み始めたのに怯んだ瞬間何とかドアを開けて引きずり込んだ。
純粋な力比べならば俺が上だ。
なおも悪あがきをするレイブを執務机の前にある来客用ソファに座らせる。
俺は以前グランが座った向かい側だ。
暫しの沈黙の後、レイブが動く。
「····開けますよ」
「····ああ」
鞄には個別識別の魔法が施されており、俺達とレン、グランだけが開けられるよう設定されている。
俺が逃がす気が無い事を悟ったレイブが観念して鞄を開ける。
中からはまずは弁当の包み。
こないだの3倍ほど入っている。
多分俺達3人分だろう。
その気遣いにほっこりさせられる。
「良い匂いですね。
カラアゲもありますね」
微笑んだレイブが匂いを嗅いでごくりと喉を鳴らした。
俺も口の中に湧き出た唾液を飲み込む。
他に花茶が入った包み、グランの私物が出てきた。
····ちょっと待て。
レンが森で髪を結んでいた紐も出てきたが、断りは入れたよな?
いくら番の物でも無断はダメだ。
グラン、お前一応騎士だからな。
そして最後に四つ折りにした紙が出てきた。
「ベルグル、この雑に折った紙が嫌な予感を掻き立てるんですが····」
「奇遇だな。
俺もそうだが、やっぱり先に俺が読むべきなのか?
俺じゃなくてもいいんじゃないのか?」
何言ってる、当然だろうと目で物を言いながら神妙な顔で頷いて渡された。
雑な折り方で予想していたが、やはり急いでいたようで走り書きのように書きなぐられていた。
「····読んで見ろ」
内容を確認して、再びため息がこぼれる。
その後のレイブも同じだった。
「「やっぱりろくでもない」」
2人してソファに深くもたれた。
「レン····ちっこいくせに、何でっかい事してるんだ」
「大叔父はどうやってレンみたいな子に育てたのか1から聞かせて欲しいものです」
しばらく無言で過ごす。
むしろ何から手をつけるべきか。
「団長、今時間はあるか」
不意に風が声を届ける。
王太子殿下の声だ。
すぐに応じ、レイブは窓を開けて風を使って換気し、俺は弁当を再び戻して鞄を隠してから共に腰かけて来客を待つ。
やがてドアがノックされた。
「ビビット商会の副会長殿がいらっしゃいました」
「話は聞いている。
通せ。」
レイブが入ってきた焦茶短髪に青灰細目で細身の虎属の男に対面のソファをすすめた。
「いやぁ、急にすんません。
国王陛下と王太子殿下より、お2人にもすぐにお伺いするようご指示がございまして。
ビビット商会副会長のトビドニア=エトランと申します。
トビとお呼び下さい」
「騎士団団長のベルグル=ドランクだ」
「騎士団副団長のレイブ=ワグナロスです」
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