《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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73.焦燥~ザガドside

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 兄とその伴侶の周りに張り巡らせた結界に異常は無かった。
ここに来たのもたまたまで、兄上の顔を見て英気を養いたかったからだ。
なのに····。

 「何故····」

 朝日が徐々に差し込むこの国の国王夫妻の寝所で目の前の光景と黒を纏う後ろ姿をただ呆然と見つめる。

 ゆっくりと振り返った小さな体躯の少年の眼は魔の森で見せたあの時とは比べ物にならないくらい冷たい。

「そろそろ私の時間が無いから手短に伝えておく。
あの刀は絶対に抜くな。
そしてその飾り紐は元の持ち主に戻せ。
心配しなくてもあのヘタレ王弟がこの2人を狙ったところで、この刀が、雪火がここにある間は手が出せない。
雑魚は君の結界がちゃんと弾く。
この2人の事よりもまずはこれからの事に集中しろ。
ヨハン=クラインをどうするかは全ての騒動が終息すればその時レンが決める」

 思わず共に眠る兄に抱きしめられて眠る伴侶に目をやる。
彼の胸には刀と呼ばれた一振りの片刃の剣が突き刺さっているものの血は流れていないし呼吸もちゃんとしている。
恐らくあの刀には何らかの力が宿っているのだろう。
私の張った結界は依然として機能しているものの、あの刀は防げなかったらしい。

「君は本当にレンなのか?
まるで別人のような目をしている。
それに僕ではなく私と言ったり、何故が決めるなどと自分の事を他人事のように話す?」

 あまりの光景に詰め寄りたい衝動を自分の恩人なのだと言い聞かせてどうにか抑える。
先程から感じる違和感を素直に口にすれば、愛らしい顔でとてつもなく面倒そうにため息をつかれてしまった。

「私は君の知るレンとは違う。
だが少なくともレンにとって不利な事はしないし、この子に対してどう思っているかはともかくはむやみにその子を傷つけるつもりもないから安心していい」

 形の良い顎をクイッと持ち上げて兄の伴侶、ヨハンを指しながら冷え冷えとした表情で話す。

「ヨハンの婚姻前の姓は誰から聞いた?
彼をその子と表現するのは何故だ?
まさかとは思うが、君とは知り合いなのか?」

 私の問いに今度は形の良い眉を不機嫌そうに寄せた。

「一々君の質問に答える理由は私にない。
伝えるべき事は伝えた。
後は君が好きにすればいい。
私は君達のこの先になど全く興味がない」

 その言葉の通りここで出会ってからは1度も私に興味を示した様子もなく、事務的に伝えるだけ伝えて金色の光が彼を包み始める。

 用は済んだとばかりに今にも踵を返そうとした時、不意に動きを止め、少し目を見開いて何かを見るようにその視線が宙を彷徨う。

「レン?
····もしかして何か視えているのか?」

 昔、興味本意で巷の占い師とやらに未来を占って貰った時の事を思い出す。
まぁあの時の占いは内容こそ忘れてしまったが、大ハズレだった記憶だけは残っている。

 私の言葉にハッとしたようになった彼はギュッと目を閉じて頭を振る。
やはり彼には見えない何かが視えたようだ。

「時間の問題だろうけど、大事な腹心がいるならさっさと懐にしまってしっかり守るんだな。
後手に回らず先手必勝を狙う事だけが腹心への最大の守りになるし、誰も欠ける事はなくなると肝に銘じてとにかく行動していけ」

 そう言うと今度こそ光の中に消えて行く。
私はただ呆然とその背を見送りながら彼の言葉を反芻した。

 ····腹心?
····ジェロムか!?

 無事な元側近の内、ラスイードは初めからペネドゥルの忠実な臣下とは双子だし、何より今は弟の側近となっている。
危険があるならジェロムのはず!!

 あの時レンが眠る傍らで聞かされた麻薬漬けにされた元側近2人の今が頭によぎる。
いつの間にか完全に朝日が差し込んで明るくなったこの部屋を焦燥感にかられて全力で駆け出した。
今なら厨房にいるはずだ。
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