《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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78.レンとレンカと呪いと過去

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「グラン、隠し事をすればレンをかばう事もできなくなるかもしれん。
いかなる理由があろうと他国の国王の伴侶を刺した事実は変わらん」
「あの子についてはいくら黒竜の番だとしても謎が多すぎます。
魔の森だけで生きていくのならそれでも問題はないでしょう。
そう思って私達はあの子の存在を秘匿しました。
けれど実際拐われただけでなく自分から事を起こしてしまいました。
我が国がこの国の開国に力を貸すと決定している以上、勅命を受けた我々はレンの存在を秘密にすることは最早出来ません。
あなたも我が国の騎士として生きる以上、番への情に絆されて口を噤むような行為を私達も見過ごす事は出来ないのですよ。
それに事態はあなた1人の手には負えません。
グラン、私達は恩人であるレンを見捨てる事だけは誓って絶対にしません。
それに私にとって身内であると言った言葉を撤回もしません。
これは副団長としての命令です。
あなたが知っている事を教えなさい」

 団長達の言い分は最もだ。
確かにレンの事を何も知らずにこれ以上放置する事は勅命を受けた騎士として許されない。
けれど番を囲って守ろうとする俺の気持ちも理解してくれているのはわかる。

 目を閉じてまずは深呼吸をする。
ゼノリヤ神に口止めされた部分については絶対に言えない。
言えば聞いた者を存在ごと消すくらいはしてしまうだろう。

「俺が教えられる範囲で報告します。
レンは恐らく伴侶と同じ世界からの転生者であり、転移者でもある。
伴侶の事は間違いなく元の世界での知り合いでしょう。
元の世界は魔法はありませんがこちらよりもずっと進んだ文明で、レン、いや、レンカは医者であり薬学者でした。
だから治癒魔法は俺達の知らない進んだ医療の知識を元にして使役する事で異能ではないかと思うくらいの効果をもたらすのだと思います」
「医者で····薬学者····」

 ザガドが何かに思い当たったように呆然と呟いたが、今は無視しておく。

「なのでレンの魔法は異能ではありません。
けれど1つだけ異能のような力を扱う事ができます。
それは多分元の世界でも知る者は殆どいない異質な力で、あちらでは呪力と呼ばれる力です。
呪力は誰かを妬み、嫉み、憎しみ抜いた人のどす黒い怨念のような呪いの力で出来ていると聞きました。
こちらの世界では絶対にない力で、レンはレンカとして産まれる前からあちらの世界で何度も転生を繰り返して呪いを他者から浴び続け、魂そのものを怨嗟にまみれさせて生きていました。
魂に染みついた呪いだからこそ、転生したこの世界でも呪力としてその力を使う事ができます。
それが夢を自在に操り、時にその夢を介して過去、現在、未来を視る夢見と呼ばれる力ですが、詳しくどこまで力を持つのか俺にはわかりません」
「未来を····視る、だと····」

 団長の眉間の皺が更に濃くなった。
副団長も思わず息をのんでいる。

「ただ未来だけはザガドの話を聞く限り、自分の意志で視る事は出来ないのかもしれません。
とはいえ恐らくレンはレンカほど夢見を扱えないはずです。
今のレンの魂に呪力はほとんど残っていないと言っていました。
少し前、あの王弟とその側近が倒れていたのはレンカが夢見の力を使って呪いを集めていたんだと思います。
これは完全に予測でしかありませんが、夢を操って自分を憎ませる事で2人から呪われ、呪力を得ようとしたのではないかと。
実際レンカが雪火と呼んでいたあの刀は倒れた2人から回収した黒い霧のようなものから出てきました。
目覚めたあの2人が夢の内容を覚えているのなら、間違いなくレンを捕えて憎しみをぶつける為に危害を加えるはずです。
ジェロムが夢で見た内容から推察するに、あの王弟達はレンカによって夢見で強制的に自分を憎むように仕向けらたんだと思います。
それが引き金となった事によって幾らかは我を忘れてザガドも含めて消しにかかるつもりかもしれません。
ただ、レンもレンカもあの伴侶に危害を加えるつもりだけは今のところないと思っています。
むしろある意味では救う可能性すらある」

 そこでザガドは思わず腰を浮かせた。
何かを期待する顔に、俺は舌打ちしそうになる。

「ただしそれは病を治すという事ではありません。
伴侶はあちらの世界にいる時、レンカの過去の転生体が封印していた何かに憑りつかれた。
レンカがあちらの世界で死を迎えた後の話だから正直レンカに責任はありません。
そしてその状態でこちらに渡りました」
「····死を迎えた?」

 それまで腕を組んで黙って聞いていたジェロムが恐らく無意識だろうが呟く。

「レンカがあの刀を刺したのはその何かが悪さをしないように封印しておく為であり、憑りついた何かをどうにかしようとするレンをフォローする為、と俺は思っています。
レンカが15年ぶりに表に出てきたのはレンだけでは対処できず、このままだと死んでしまうからだと言っていました。
病について伴侶は再発したと言っていたようですが、本来その病は完治していたはず。
なのに再発したのはそれぞれの世界を渡るのに必要な何らかの代償やそれぞれの世界の許しを得なかったから。
そして病の再発が伴侶の支払うべき代償となったともいえます。
だからレンでは病をどうすることもできないかもしれませんし、生温い他力本願な期待はして欲しくありません。
それでもこの世界に本来いないはずの何かについてはレンが命の危険を冒してでも対処しようとしています。
レンカが表に出てきたのはレンの与り知らない事のはずですから、自分の命が危うい事をレンは承知して行動したと思って間違いありません」

 俺は1度息を吐く。
そしてザガドのどこか傷ついた顔をしっかりと正面に捕えた。

「これ以上お前達の国の勝手な事情に俺の番を巻き込むのも無責任に期待するのもやめて欲しい。
全てがそれぞれの身勝手さから招いた事だ。
レンだって自分の過去をこんな形で他人に知られたくはなかっただろう。
この事は出来うる限りの秘匿を願います」

 そうして俺は頭を下げた。
番だからじゃない。
を守りたい。


※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
全2話の短編小説を投稿しています。
<【花護哀淡恋】ある初代皇帝の手記>

ハロウィン→墓→ホラー→ミステリー?あれ?みたいな感じでハロウィンからかけ離れた内容の小説が出来上がりました。
よろしければご覧下さい。
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