《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
98 / 210

98.通信~ベルグルside

しおりを挟む
「あっれー、レン寝ちゃったかぁ」

 例によって例の如く、やっぱり軽いな。
レンを寝かしつけつつ、体を冷やすレイブも呆れた目を向けている。
寝ているのを予想してか声は抑えているが、存在が騒がしい。

「レンも副会長と話すかなーと思って通信用の魔石具持ってきたんだけど」
『レンちゃんがどないしたん?』

 軽い男は手の平におさまる大きさの少し分厚い円盤を持っていた。
表面は丸く小さな穴が無数に空いていて、そこからトビの声がしている。
これが通信用の魔石具?
俺の知るそれは成人の頭ほどの大きさだが、とんでもなく小型化されているな。
もう驚いてやらん。
大方レンが改良したんだろう。

「熱が上がってきたからレイブって兎属が寝かしつけながら冷やしてるよ」
『合流できたんやな。
良かったわ』
「そちらはどうなっていますか?
グラン達は?」

 レイブも城の様子が気になってたんだろう。
少し早口だ。

『こっちは兄さん達のおかげで証拠を押さえて無事に合流でけたよ。
キョロもええ働きしてくれたしな。
ただジェロムのおっちゃんは捕まってもた』
「····そうか。
すぐそちらに戻りたいんだが、レンはこのまま商会の者に預けていいか?」

 ジェロムの言っていたレンカの話が気になる。

『それなんやけど、レンカちゃんがジェロムのおっちゃんが酷い目に合う言うてたり、ぼんく、ザガド様にはとにかく行動せんとまた側近を失うっぽく言うてたから、もうこのまま連中と対峙しよう言い出してんねん』
「····随分性急だな。
急ぎすぎではないか?」

 俺もレイブも眉をしかめる。
ぼんくらと言いかけた事は軽く流したが、事態があまりに性急なのは流せんぞ。

『確かに急いでる感は否めへんけど、兄さん達がなかなかええ証拠を見つけてきてくれてん。
そのうちの1つに絶対欲しかったペネドゥルが自国の兵士達にあの麻薬の実験をやってた直接的な証拠も入っててん。
それにその実験結果見てたら後手に回るほどジェロムのおっちゃんが取り返しつかへんようなりそうなんよ。
そっちでも中毒の竜人がだいぶ暴れたんやろ?』

 そこの男から本邸が砂塵になった話は聞いたようだ。

「まぁ、確かにな」
『予定は早まったけど、ジェロムのおっちゃんは料理長とかいうても実際はこの国で国王の次に強いらしいわ。
そんなんに麻薬使って竜化されたらこっちの計画が完全にダメになりかねへん。
ホンマはこの国の王がおらへんでもレンちゃんが動けたら1番手っ取り早いねんけど、今はレンちゃん動かせられへんみたいやん?
せやからまずはペネドゥルのやらかしてた事を国民に知らしめさした上でザガド様に捕らえてもらう。
昨日の朝のうちにもぎ取った城下に入る許可証使って商会の中でも戦闘と魔力量が多い奴らを先に城下に入れたから、そいつらと一緒にそっちはこの国自体を動かす準備に入ってや』
「国民を動かすと簡単に言うが、一体どうやって····」
『15年前に国民が決起して王が代替わりしたリドラビルは知ってる?』
「リドラビル旧帝国がどうして····」

 俺の言葉を遮りトビが引き合いに出した国、リドラビル旧帝国。
我が国から海を渡り、あのお家騒動のあったジャカネスタ国を更に北に進んだ場所にある旧帝国だ。
帝国と名のつく程に遥か昔から長く栄華を極めた国だったが、今から100年ほど前から徐々に衰退していった。
15年ほど前が王族や高位貴族の腐敗のピークで、側室も数が多くて何人もの王位継承者達が苛烈な争いに日夜明け暮れていた。
酷い者は王族であっても無実の罪を着せられ拷問の末に奴隷へと落とされる事も珍しくなく、当時はまさに衰退の一途を辿っていた。
国民の多くは餓死や疫病で死んでいき、難民も流出し始める程に国内は王公貴族への不満が爆発しかけていた。
表向きは他国の国民の為として周辺国が秘密裏に同盟を結び、解体する動きを見せていた。
内実は流民や疫病の歯止めも出来ないくせに金の無心ばかりする帝国に業を煮やしたからだ。

 そんなある日、当時の皇太子が民衆の前で幼子を手にかけた。
それによって国民の不満は一気に爆発してリーダー的な国民が先導し、王都中の国民が城へ押し寄せた。
ただその先導者がいたから腐敗して断罪されるべき皇族や貴族達が奇跡的に無血で国民に捕らえられた。

 その後、現皇帝が正妃の不義の子だったという噂が国全体に囁かれたかと思えば、直後に周辺国や国民立ち会いでの裁判では皇帝や皇太子達皇族の命によって些細な事で奴隷にさせられた者や無実の罪で殺された者がかなりいた証拠まで発見されたんだったか。
先導者が実は先代の皇帝の子供だった事もあって帝国、いや王国始まって以来の国民に推された形で王位についた。

 まてよ、15年前?
レンカは15年ぶりに出てきたと言ってたな?
鎖国という背景は違うにしてもこれから国民を動かそうとする所に共通点が····。
それに確かあの騒動の後に国土を他国に譲渡して再建を計るために帝国から国へと国名を変えたあの国の今の国王は虎属だ。

「副会長、あなた、まさか····」
『俺がどうかは関係あらへんけど、あの時ちょっと色々ブチ切れたレンカちゃんがたった2日で当時の皇帝と腐敗しまくってた貴族連中の大半を退かせるよう仕向けてん。
その方法を今から再現するつもりや。
ただあの時は皇帝だけやなくて帝国の上位貴族全部の断罪でかなり大事やったし、レンカちゃんが夢見の力を相当使って帝国中の国民に干渉してたし、煽りに煽って国民引き連れて城に攻め入ってめちゃくちゃしてくれたけど、今回はあくまで国王不在の中でのペネドゥルの失脚がメインやからあの時みたいに事後処理で走り回る事はあらへん。
あの時は爺さんと師匠が動かせるだけのコネクション駆使して周辺国に根回ししまくってたから骨折れたもんやわ。
ついでで開国とザガド様の今後の王位継承の為の印象操作くらいができたら御の字くらいやな』

 待て、何かとんでもない裏話をさらっと言ってないか?!
レイブもかなり慌てだしたぞ。

「待って下さい、レンカは何故そんな無茶を?!」
『それは色んな国の思惑が絡んでて秘匿扱いやから言えへんよ』
「ならばなぜレンが動けば早いかだけでも教えてくれ。
俺達はビビッド商会の指示に従って開国への足がかりをつけるのが勅命ではあるが、恩人のレンが絡む事は知っておきたい」

 トビが答える前に、それまで成り行きを見守っていた軽い男が答えた。 
 
「そりゃ黒竜の番だからだよ。
この国では白竜と黒竜は別格の存在だし、その番も特別なんだ。
特に黒竜は元王配だし、今の王が使い物にならない時の国民に認められる譲位の切り札になりそうなのはレンだからね」
『まぁそうやねんけど、今のレンちゃんは色々不安定で何か危うい気がするからなるべく関わらせたないっちゅうのが本音やな。
商会としても最優先はレンちゃんを無事に森へ帰す事やし、そうでないと黒竜の機嫌損ねて解毒薬の月花が取れんようなるやん』

「わかった。
それならレンはこのまま城下に留めておこう。
グランにはそのままトビの指示に従えと言っておいてくれ」

 そして通信が切れ、あの男も今後の準備の為に部屋を後にした。

 にしても相変わらずレンには驚かされるばかりだ。
レイブと2人で同じタイミングで大きくため息を吐いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

処理中です...