《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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149.朔月1

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「千年前の僕の魂の名前はサクゲツ。
サクゲツの事を話す前にあっちの世界の常識で言えば、まず魔法はないの。
代わりに色々な物質変化による反応、凄くざっくりだけどそれを化学反応っていって、そういう類いのものや技術力で文明が発達していった。
サクゲツの頃はこの世界よりすこし遅れた文明だったけど、レンカの時代にはかなり文明が発達してる。
それはグランさんから聞いたよね?」

 少し前に奥の部屋でレンに謝った時に伝えたから、もちろんレンは団長達に俺が何を報告したのか知ってる。
団長達も当然のように頷いた。

「あっちには獣人ていう種はないし、人属しかいない。
魔獣の代わりに動物····獣はいて、それはこっちで言えば皆が獣体になった時の姿にとっても似てるんだ。
大きさはあっちの世界の方がずっと小さいと思う。
あと獣は人の言葉を話さない」

 ふんふんと全員聞き入っていると、レンはしばらく口をつぐんだ。

 どうした?
次の言葉がうまく見つからないか?
頑張れ、俺が見守ってるぞ。

「····あ、と····それで····その····性は····性別は····2つ、ある」

 いつの間にかレンはファルの手を離してトビにコアラをしている。
声がとても小さくなってしまったが、確かにその事はデリケートな話だろう。

「レン、2つというのは?」

 団長が話をうまく飲み込めなかったらしい。
副団長も思案顔でレンの後頭部を見つめている。
補足するべきかと考えていると、レンが再び口を開いた。

「ここ、みたいに····1つの、雄の、性だけじゃない。
メルやフィルメとかも無く、て。
孕みの大樹も無くて····孕み石も無くて····えっと····雄と····雌の性に人は分かれてて、魔獣と同じで自力で妊娠、して····子孫を残して、いく····」

 不自然に詰まらせながら少し早口になって、最後は声が尻すぼみに小さくてなってかき消えた。

 団長達は理解し、そうしてそんなレンを見て推察したんだろう。
躊躇いがちにレンに確認する。

「レン····もしかして、レンは····」
「雌、ですか?」

 その言葉にビクリと肩を震わせ、体を硬くしたのを肯定と捉えたんだろう。
トビが慰めるように、落ち着かせるように背中を優しく叩いている。

「そう、ですか。
だからそんなに小さい体躯なんですね」
「すまない、ちょっと情報の整理が追いつかない。
俺とレイブ以外は知ってたのか?」

 全員が頷く。
····全員?
あれ、親父も?

「ベル爺は何で知ってたん?
爺さんから聞いたん?」

 トビもそれは知らなかったみたいだ。

「そうじゃ。
リスティッドが死の数ヶ月前に己の死を悟ってのう。
レンちゃんを公の力で守れるのは儂くらいじゃ。
当然じゃがそれを教会の連中が知れば間違いなくレンちゃんは狙われる。
捕まれば殺されるかもしれんし、実験のように孕まそうと画策してくるやもしれん。
同じような雌を産まそうと考えるやもしれんが、ろくな事にはならん」

 思わずギリギリと歯軋りする。
教会は各国の王家からも独立しているが、孕み石の権限があるからこそ完全に無くす事もできない。

「うん。
お爺ちゃんもそう言ってた。
でももし僕がこの世界で子供を作る事があったとしても、既にこの世界の理に縛られてるから男しか産めないってゼノは言ってたよ」

 おい、ゼノリア神よ。
それは初耳だぞ。
レンといずれは子作りだってすんのに、その情報大事だろう?!

「レンちゃん、ゼノとは?
それは初耳じゃ」
「ゼノはゼノリアだよ。
この世界の神だって言ってた。
白い髪で藍色に金が散ってる目をしてるんだ。
サクゲツの時は小さくて消えちゃいそうな神様だったけど、サクゲツの魂が業を背負ってからは力を付けて世界を創成できるくらいに成長したんだ」
「「「「「····」」」」」

 ファル以外絶句だな。

 レンとゼノリア神は元々知り合いか?
いや、知り合いなのはサクゲツか。

「話がいっぱい飛んじゃうね。
やっぱり上手く話せない····ごめんね」

 トビの上で申し訳無さそうに背中が丸くなる。
緊張してるんだろう。
ずっとトビの服の裾を握る手を硬くしている。

「大丈夫やで。
ただ内容がぶっ飛んでて色々追いつかへんだけや」
「レンちゃん、サクゲツについて教えてくれるかのう」

 親父が平静を取り戻して話をうながす。

「サクゲツは朔に月って書く。
あっちでは新月って意味で、アルビノっていう色素が無い、白っぽい人間として生を受けたの。
こっちもそうだけど、新月には月が見えないでしょ。
朔月は無い者として神社····えっと、あっちの神殿みたいな場所の奥深くで生かされて、いずれは神の供物として殺される為に育てられた」

『そなたは何故このような場所にいる?』
『閉じ込められておるのか?』

 どこからともなく声が聞こえた。
 頭の中で突然見たことがないはずの場所が思い浮かぶ。

 積み上がった岩の隙間をのぞくと薄暗がりの中にぼんやりと白い何かがいた。
隣にいた黒目黒髪の少年と声をかけると何かは近づいてきてその姿を現す。

 白くて可愛らしい垂れ目の顔。
左の目元には泣き黒子。
岩の隙間からのぞく目に光が当たると血の色をしていて
、暗がりの中にいたからか光に眩しそうに目を細める。
前に見たような四角い袖をした白い衣を身につけているが、外は雪が積もっていて寒そうだ。
くたびれた襟元からのぞく首は細くて鎖骨が少し浮き出ていた。

 時々夢に見た、あの夢見でも見た人属の子供····この子が朔月だ。
よくわからないが、そう確信した。

「色素が無いっていうのは?」

 トビの言葉にハッとする。
今のは何だったんだ?
白昼夢?

「うーんと、僕の髪と目は黒いでしょ?
向こうの世界の僕の祖国は黒い人がほとんどだった。
特に千年前は交通手段も限られてたから、外国の人もいなかったし、年を取って白髪になる人を除けば黒髪で黒目ばっかりだったんだ。
あっちの世界でも金髪や目も青とか茶色とか緑もあるけど、それは体にメラニン色素····色の元になる物質があるからそういう色に見える。
色素が濃ければ黒に近づくんだけど、そういう色素が生まれつき欠乏してると、全体的に白っぽくなるの。
朔月はそんなアルビノの中でも本当に白に近かったし、目にも色素がなかったから目の血流がそのまま見えて血の色をしてた」

 だからかな、と少し寂しそうに呟いた。

「物心つく頃には薄暗い岩牢の中にいて、神に捧げられる為だけに生かされてた。
朔月にとって食事が少なくていつも空腹なのも、薄暗い牢で寒さに耐えるのも、時々世話をしに来たり禊に連れ出されたりしても誰からも話しかけられないのも全てが普通だった。
黒目黒髪の中で自分だけ外見が違うのも、供物だからだと言われて素直にそれを信じてた。
何も疑問にも思ってなかったし、だから····初めて外から普通に話しかけてきたあの2人に執着してしまったんだと思う」

 レンはそれきり黙り込んでしまった。
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