《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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178.冷たい汗

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「少しぐらい良いではないか。
こんな機会なぞもうないのじゃぞ?」
「朔月がたまたま幽世開いておたくらの世界に繋がったからって、日本で3本くらいに入る位がクソ高い神が一々来るな。
それか今までの迷惑料まとめてよこせ。
したら話くらいはしてやらなくもない」

 えっと、あれ、やっぱり神なんだよな?
めちゃくちゃ普通にあしらわれてるけど。
日本でって事は蓮香の母国の神か?
位がクソ高い神とやらにそんな口をきいて大丈夫なのか?

 ていうか、蓮香····可愛い顔してまあまあ口悪いな。

 その可愛い顔でその口調。
レンとほぼ同じ顔でそれはそれで····良い。
後で俺ともそんな風に話してくれないだろうか。

「不遜じゃ」
「そうだな。
だから?
じゃ、そういう事で」

 背を向けて去ろうとする様子に神の方が慌てる。

「待つのじゃ!
関心のない相手への態度が酷すぎるぞ!
ほら、これをやるから戻ってくるのじゃ!」

 神が慌てて何かを投げ、蓮香がそれをクシャ、という音と共に片手で受け取る。
箱か?
随分柔らかそうだ。

「····煙草····」

 訝しげに手のそれをしげしげと見つめ、中から細い筒状の何かを取り出し、中身も確認する。
この世界の煙草とは形が違っていて細くて白い紙でくるんだ形状だ。

「何でラスト12本?」
「ふふふ、予想できよう」

 したり顔だが、神とは随分と表情豊かなんだな。

「····天馬と詩で?
いつの間に····詩のオカン属性の勝利?
詩香も無事20歳過ぎたって事か」
「すぐに正解に辿り着いてはつまらぬ」
「3本吸う間だけは話くらい聞くけど?」

 中身を1本取り出し、慣れた手つきで口に咥え、カチッと長細い道具のどこかを押すと火がついた。
あの道具、魔石具か?

「んぐっ、げほっ、ごほっ」
「「「「「「蓮香 (ちゃん)?!」」」」」」

 どうした?!

 吸い込んだ途端に激しくむせる蓮香にファルと前国王以外が慌てる。
トビも同じようで、2人で壁に手をつくがびくともしない。

「なんじゃ、毒でも入っておったか?
そういえばあの2人もむせておったのう」

 その様子を悦に入って眺める神に蓮香は全く取り合わず、むしろきらきらした目で煙の出る煙草に見いる。

 もしかして、あの2人というのがテンマとウタだろうか。

「んだ、これ。
20年ものの煙草すげぇ。
成分何だっけ?
タール、ニコチン、そうか、添加物。
フレーバー抜けるとこうなんだ。
くくっ、辛っ」
「聞くのじゃ!
あの2人も!
同じ!
反応を!
しておったぞ!」

 子供が玩具を見つけたように嬉々として吸っては恐らく本来の口調でぶつぶつ呟きながら、時々むせている。

 完全に自分を無視されてもなお蓮香に食ってかかる神は、やはり無視されている。

 大丈夫だろうかと思いながらも、森でよく見た無邪気なレンと同じような顔に何も言えなくなる。

 蓮香もああいう無邪気な顔をするんだな。

「何か発明に没頭してる時のレンちゃんと似てんねんけど····」
「····そうだな」

 トビにファルが相づちを打つ。
心なしか2人共ひそめた声に緊張感を帯びてるのは何故だ?

「ああいう顔をした時のレンちゃんの小屋は大抵大破したからのう」

 ····待てレン、どんな実験してるんだ?!

 他の奴らもギョッとした顔をして蓮香を見たぞ。

「つまらぬ!!
話をすると言うたではないかぁ!!!!」

 とうとう神が大絶叫した。
そこでやっと蓮香が神に目を向ける。

「ん?
あの2人が天馬と詩で、これ吸ってむせたんだろう。
どうせ2人共面白がってたと思うけど?
それで?」
「むう。
つまらぬ」
「じゃあ帰れば?」

 むくれた神とは対象的に機嫌が良さげな蓮香はすげなく答えると足元に転がしたままの神刀、雪火を手に取って短くなった煙の先を切る。
足元に落ちたそれは一瞬ボッと白く燃えて消えたが朔月の時とは火力は全く違ったし、切り口からは何の炎も上がってこなかった。
雪火を地面に突き刺して吸い殻を箱と一緒に持ち直し、2本目を取り出して火をつける。

「我の与えた神刀をそんな事に使うのはそなたくらいじゃぞ」
「煙草のポイ捨てはダメだろう」
「まあ、それは····」

 神の呆れた目を向けられれば蓮香はしれっとそう返し、同意しながらも今度は腑に落ちない顔になる。

「それで?
本題は?
まさか井戸端会議したくてこんなとこに来たわけじゃないだろ」
「お見通しじゃな」

 むすっとした顔は継続させた神はこの世界の創造神と違って随分喜怒哀楽がありそうだ。

「私達はこれでも千年はおたくの暇潰しに付き合ってる」
「死して新たな神として我の側にと望んだのじゃ。
朔月のように何の干渉もなく自然に寿ぎを宿して産まれるなど、そうそうない。
それにあれはどこまでも純真無垢であった。
再び寿ぎを宿して今度こそ我の側で神に昇華させたいと望むのは当然じゃ」
「だから朔月の自我だけは記憶となって消えないように干渉したんだろ?
マジ迷惑行為だわ」

 ほんの少しだが不快そうに蓮香に見つめられれば、神は悔しげな顔になる。

「くっ。
まさか千年後の最後の転生体がそなたのような腹黒く豪胆な性格をしておるなどと思いもせなんだのじゃ!」
「知ってるけど、そんなに褒めても何もでないぞ?」
「褒めておらぬわ!」
「知ってる。
でもどういう訳かおたくは私を気に入った。
だから結局はゼノに保護させて、次の自我が生まれないように転生ではなくて若返らせて転移させた。
だから未だにこの体には寿ぎを宿したまんまだ」

 くすくすと笑う蓮香とは対称的に神は不機嫌そうだ。

「····本当につまらぬな。
どこまで先見の明を持っておるのやら。
そなたと話しておると神すら手の平で踊らされておるようじゃ」
「おたくらが作った世界だからじゃない?
良くも悪くも因果応報ってやつ。
少なくとも私の生きてる間は、つうか死んでからもそこそこの善行積んでたろ?
しかも集大成はあの薬だけじゃない」
「わかっておる。
そなたは娘の為にだけ動いたにすぎぬがな」
「へー、やっぱあの伝染病が流行ったんだ?
詩香に何も無かったみたいで何よりだ」
「ふん。
生き残る為に、娘を死から遠ざける為に伸ばした能力は朔月よりも強くなったようじゃな」
「みたいだね。
それで?」

 娘の話題が出るも、蓮香は流すようにさらりと促す。

「我の世界に戻って来ぬか。
もちろん神になれなどとは言わぬ。
転生という形でじゃ。
さすればいつかは輪廻の輪も巡り、そなたの産んだ娘と逢い間見える事もできよう。
そなたが朔月の子供達に出会ったように」
「····なるほど?」

 ちょっと待て。
待ってくれ!
それはつまり、レンがこの世界からいなくなるって事じゃ····。

 視界の端に映るトビ達の顔色が悪い。
俺もそんな顔をしていると嫌でも自覚しているが、どうにもならない。

 考えた素振りをする蓮香を前に、未来永劫俺の前から消えるかもしれないという突然の現実に、背中に冷たく流れる汗を感じながら固唾を飲んで見守るしかなかった。
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