《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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「ぐっ」
「兄上?!」
「「「「蓮香 (ちゃん)?!」」」」
「痛そうじゃのう」

 ファルと親父以外は思い思いに慌てる。
ザガドは兄に駆け寄って、俺とトビと副団長は前国王の頭のど真ん中に雪火を力いっぱい叩きつけた蓮香を引き剥がす。

「峰打ちだけど?」
「そういう問題じゃありません!
突然何をしているんですか!」
「もちろんぶん殴った」

 蓮香の平然と、というかむしろ憮然とした態度に副団長が思わず咎めるが、むしろそれに胸を張って答える。
弾みでふるりと胸が震えたが前国王は多分伴侶から聞いてただろう。
ザガドはまだ知らないよな?
それとなくザガドの視線から遮る。

 少し向こうではレンの幼馴染みと護衛がひそひそ話している。

「ねえ、あれレン?
あの白い人属は?」
「ん~、どうだろう?
後で副会長に聞こっかあ。
しばらくはごたつきそうだし、ほらほら、あっちに座って一緒に観察しよ」
「う、うん····」
「えへへ、カミュラ可愛い」

 いちゃついてんじゃねえよ!!
俺はまだレンにコアラもされてもねえ!!

「だ、大丈夫だ、ザガド。
思ったよりは痛かっただけで」
「いや、しかし····。
レンカ、だな?
なぜこんな事を?」
「ムカついたから。
それ以外に理由なんかない。
後でヨハンも殴る」
「いや、ヨハンは人属だ。
さすがにその威力では死んでしまうからやめて欲しい」

 前国王よ、意外に冷静だな?!

「大丈夫。
さすがに素手でやる」

 蓮香も蓮香で冷静だな?!
それは大丈夫になるのか?!
確かに素手での力は最弱だろうけど。

「ふぉっふぉっ。
蓮香ちゃんは意外と脳筋じゃのう。
しかし何故そんなに腹を立てたのじゃ?
理由があるのじゃろう?」

 親父が愉快そうに笑う。
反対にもはや不機嫌さは全く隠さない蓮香はため息を吐いてしまう。

「番至上主義だから仕方ない、で大体の事を終わらそうとしてる獣人に言っても無駄じゃない?
特にそこのやらかし竜人には。
番が絡めば自分の見たい現実だけ見て他を見ないし、想像力も無さそうだ。
価値観が違い過ぎる。」
「兄上は····」
「お前もそうだろ」

 ザガドの言葉を遮る。

「番だから、伴侶だから兄の行動は仕方ないか?
自分達はこういうさがだからこっちが合わせて然るべき、とでも?
好きにやらかしといて仕方がないだろうと開き直るか?
うちの世界の言葉で言えば、そういうのを居直り強盗っつうんだよ。
やられた方はたまったもんじゃない」
「しかしヨハンは自ら望んで····」
「私が質問した内容覚えてるか?」

 そうだ。
確か蓮香は伴侶の両親について聞いていた。

「当事者はいいだろうな。
別に私も後悔せずに生きればいいとは思う。
ヨハンからすればせっかく助かった命だろう。
だけどそれと私がお前達2人に腹を立てるのとは別物だ。
私も後悔しないように怒る。
どのみち相互理解なんてできないなら、はなっから話し合いをするだけ無駄。
そもそもそういうのをやってる時間もない」

 言うだけ言って蓮香は踵を反して雪火を持ったまま部屋から出て行こうとする。

「ちょ、蓮香ちゃんどこ行くん?!」
「必要な物を取りに行くだけ」

 慌てて空いた方の手を掴んで引き止めたトビに、苛つきを隠しもせずに見上げる。

「時間もないからさっさと放せ」

 蓮香は放す気配のないトビにますます苛々した様子を募らせる。

「やったら一緒に行く。
それまで話しよや、な?
でなかったらこの手は絶対放さへん」
「····はあ。
だったら抱えて。
立ちっぱなしだし、久々に自分の体になったら足に違和感しかない」

 トビのどこか必死な様子に大きくため息を吐いて交換条件を出す。
それなら俺が抱えたい。

「それなら俺が····」
「却下」

 短く一瞬で棄却された。
レンにも拒否られ、蓮香にも拒否られ····泣きたい。
しかしレンの時ほど執着心は刺激されない。

「足?」
「レンが言わなかったか?
足に障害が残ったって。
この特注の靴で足首固定してあるからまともに歩いてるように見せかけて歩くのはできるけど、こっち来てからは障害を負う前の体で過ごしてたからな。
感覚が戻りきらない」

 俺の事は完全に無視して2人で会話するなよ。
拗ねるぞ。
団長も副団長も慰めるような目をしないで欲しい。
そこのクソ親父みたいに失笑しないだけマシだが、クソ親父は後で殴る。

 蓮香はトビの手をどかすと左足の裾をめくり、左のふくらはぎの肉が抉れたような傷痕を見せた。
ちらりと見える右側より細く、痙攣まではいかないが軽く震えている。

「足首から下の感覚はほとんどないし、筋肉を欠損させたから足首を固定してないとうまく歩行もできない。
長く立ってると痺れて力も入らなくなるし、つりやすくなる。
魔法で転移しようかと思ったけど、今は残った呪力と魔力が干渉し合ってうまく発動できなかった」
「はよ言うてや」

 さっとトビが縦だきに抱えて腕に乗せ、片方の手でふくらぎを握って何度か繰り返し圧迫してやる。

「ん、もう平気」
「どこに行くん?」
「地下牢」
「····えっと、何しに?」

 チラッとザガドを振り返れば、国王であるザガドも慌てて寄ってくる。

「呪華を取りに」
「圧倒的説明不足やねんけど。
それ何なん?」
「····はあ。
とりあえず行って。
説明とか面倒。
する必要ない。
行けばわかる。
雪火持ってて。
····眠い。
聞きたい事があるならさっさと済ませなよ」

 相変わらずむすっとした顔でため息と悪態をつくと神刀をトビに手渡し、こてりと首元に頭を預ける。
その格好は妬けるが、今は我慢だ、俺。

 地下牢って事はあの王弟達に用があるんだろうが、本当に、色々説明不足すぎる。

 それに何より自由だな、蓮香は。
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