異世界で絵本作家になったのだが、ファン層がちょっと変なんですけど(泣)

トモモト ヨシユキ

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20 過去のトラウマを思い出してしまった件

   「離せ!」
    俺は、黒龍の腕の中で暴れに暴れた。だが、奴は、俺を離さなかった。
   パーティーを抜け出すと黒龍は、俺を抱いて自分の与えられている客室へと俺を連れていった。
   そして、俺をベッドへ下ろした。
   「いろいろと誤解があるようだが、俺と永良の気持ちは、永遠に変わらない。我々は、お前を愛している」
   「なんで?」
    俺は、黒龍にきいた。
   「神族が俺を抱くのは、瘴気を祓うためなんだよな?なぜ、お前たちは、俺に淫紋を刻まない?」
   「刻むさ。時が来ればな」
    黒龍が俺をベッドに押し倒して言った。俺は、奴に除き込まれて、その青い瞳を見つめていた。
    なんだか。
   懐かしい瞳。
   「オロ神は」
    俺は、小声できいた。
    「お前らの子供なのか?」
    「ああ?」
    黒龍がおかしな表情をした。
   「あの人は、そんなものじゃない。あれは、俺たちがまだ、シグリードと呼ばれていた頃の、俺たちの母親だった人だからな」
    はい?
   俺は、ちょっとした衝撃を受けていた。
   いや、だって、あの、なんというか、あの人、どう見ても、乙女にしか見えないじゃん!
    詐欺だ!
   俺は、ようやく言葉を絞り出した。
  「そう、なんだ・・」
   マジか。
   てっきり、俺は、オロ神が、こいつらの子供なんだとばかり思っていた。
   俺の誤解に気づいた黒龍がニヤリと笑った。
   「なんだ。そんな勘違いでご機嫌ななめになっていたのか?アマヤ」
   何?
   こいつ、ニヤニヤしやがって、ムカつくな。
   俺は、にやつく黒龍を押しやって、言った。
   「俺は、いったい、お前らのなんなんだよ?なんで、お前らは、俺に執着するんだ?」
   「それは」
    黒龍が黙り込んで、俺から離れたかと思うと背を向けて、ベッドの端に腰かけた。俺は、起き上がると奴を問い詰めた。
   「そろそろ、隠してること、全部、話してくれてもいいんじゃね?」
   「・・そうかも、知れないな」
   黒龍が呟くように言った。
  「そろそろ、お前にも、話してもいいころかもしれないな」
       それは、昔々の物語だった。
   かつて、世界がまだ、神々のものであった頃の物語。
   まだ、この地上に、人が今日ほどには、栄えてはいなかった頃のこと。
   地上を治めていたのは、6人の神族の兄弟たちだった。
   そして、彼らのために1万年に一人の神妃が異界から召喚されることになっていた。
   その区切りの年に、一人の神妃が召喚された。
   その名をカナタ、といった。
   彼の人は、美しく、聡明な神妃だった。
   だが、カナタは、ただ1つだけ、そして、最大の過ちを犯してしまった。
    それは、6人の兄弟たちの内のただ1人の神だけを彼が愛してしまったことだった。
   その神の名は、シグリード。
   神々の末弟である戦と正義の神だった。
   シグリードは、懊悩していた。
   彼は、自分にとっての初めての神妃であるカナタを愛する気持ちと、同時に、彼の人を愛しすぎている自分、ひいては、自分だけを愛し、他の神々を見向きもしない神妃の深い愛を恐れるようになっていた。
     相反する2つの感情に苛まれシグリードは、いつしか、己の中に2つの異なる神格を有するようになっていた。
   1つは、神妃を盲目的に愛し、愛されたいと思う自分。
   もう1つは、そんな自分を厭い、蔑む自分。
   いつしか、シグリードは、この2つの神格に別れて存在するようになっていた。
       しかし、同じ神は、2人は、いらない。
   2人は、1つの神の座をめぐり争いを繰り広げた。
   そして。
   勝ったのは、『名を持たぬ者』と呼ばれる神だった。
    彼の神は、戦いに破れたもう1人の神を、2度と自分に抗うことがないように半分に切り裂いた。
    切り裂かれた神は、そのまま、消え行く筈だった。
   その消え行く裂かれた魂を救い上げた神がいた。
    それは、時の狭間に1人、存在する神。
   彼は、2つに裂かれた彼の神を異界へと転生させた。
   その魂の痛みがおさまるまで。
   ところが、その異界で生まれた2つの魂は、そこで、出会ってしまったのだ。
    自分達の未来の神妃に。
   彼と共に生きたい。
   そう、その2つの魂は、願った。
   それだけが叶えられるなら、もう、神としての己など、存在する必要がないと思うほどに。
   だが、それを彼らを異界へと送った神は、良しとしなかった。
   神として生まれた者は、その業を背負い、未来永劫、神として生き続けねばならない。
   2つの魂は、愛する者と引き離された。
   異界を去り、もとの世界へと戻るとき、2つの魂は、未来の神妃にただ1つの約束をした。
   「必ず、迎えに来るから、待っていて」
     待っていて。
   俺の記憶の中に埋もれていたその感情が戻ってきた。
   二人のクリソツの双子。
   日本人とは思えない、その深いブルーの瞳。
   俺が。
   憧れた青。
   「正志くんと、貴史くん?」
    俺は、黒龍に尋ねた。
   嘘だと、言ってくれ。
    そう、願いながら。
   だが。
  俺の願いに反して、黒龍は、こくり、と頷いた。
  「マジかよ・・」
   俺には、ガキの頃に2人の友達がいた。
   近所に住んでいた同い年の双子の兄弟だった。
   いわゆる、幼馴染み。
   俺たちは、どこへ行くのも一緒だった。
   何をするのも、一緒。
   俺は、俺につきまとっていたその双子の兄弟を妙に気に入っていたんだ。
   なんだろうな。
   そのシンメトリーな様と、光の加減で青く見える瞳が俺は、好きだった。
   いつまでも、俺たちは、一緒だと思っていた。
    あの日が来るまでは。
      それは、暑い夏の日のことだった。
   その日も俺たちは、一緒に遊んでいた。
   世間は、ちょうど、夏休みで、俺たちは、退屈していたんだ。
   だから、俺は、言ったんだよ。
   秘密の遊び場に行こうって。
   そこは、大人たちが立ち入りを禁止していた工場跡地だった。
   誰も近寄らなくなった廃墟だった。
   双子は、いつだって、俺の言う通りだったくせに、その日だけは、うんとは、言わなかった。
    だから、俺だけでも、そこに行くって、俺は、言い張ったんだ。
   1人で廃工場へと向かった俺の後を追って、双子もやってきた。
    そして。
    爆発が起きた。
   巻き込まれたのは、俺じゃない。
   あの双子たちだった。
   崩れ落ちた工場の壁の下敷きになった双子たち。
   一瞬のことだったんだ。
   流れてくる血の赤。
   俺の頭は、真っ白になっていた。
   俺は、どうしたらいいのかもわからず、ただ、立ち尽くしていた。
   「正志くん?貴史くん?」
    俺は、返事をしなくなった二人にただ、呼び掛け続けていた。
   俺は、人を呼びに行こうとした。
    だけど。
   行けなかった。
   二人の手が。
   瓦礫から伸びる二人の手が、俺の手を掴んで離さなかったからだった。
   「はなして!2人とも」
    俺は、言った。
   「すぐに誰かを呼んでくるから」
   「ダメだよ、カケルくん・・」
    「僕たち・・もう、死んじゃうんだよ・・」
    恐怖に震える俺に、双子は言ったんだ。
  「「だから、側にいて」」
   大人たちが駆けつけたときには、俺は、冷たくなった双子の側に座り込んで泣いていたのだという。
   「「必ず、迎えに来るから、待っていて」」
   その双子たちの最後の言葉は、まだガキだった俺を心底、震え上がらせた。
   トラウマになって、その連中のことを忘れさせてしまうほどに。
   「もしかして、正志くん?」
   俺が恐る恐るきくと、黒龍は、頷いて、俺を抱き締めた。
   「ああ。俺、だ」
    マジですか?
   俺は、奴に抱きすくめられたまま、思っていた。
   こいつら、本当に、迎えに来やがった!
   こわっ!
   俺は、震えをおさえることができなかった。黒龍は、震えている俺を優しく抱き締めて、囁いた。
   「「すまなかったな、怖い思いをさせてしまって」」
   俺は、頭をふるふると振った。
   涙が。
   溢れてくる。
   「まさ、し、くん・・たかし、くん・・」
   俺は、黒龍にしがみついて涙を流していた。
   「俺・・ごめん・・二人のこと、助けられなかった・・」
   「「大丈夫、だ、カケル」」
    黒龍は、いや、双子は、俺を抱いて優しく言った。
   「「もう、全て、終わったんだ。お前は、あのとき、まだ子供で、でなくても、どうすることもできなかった」」
   「でも、俺・・」
    双子たちは、その唇で俺の言葉を封じた。彼らは、舌を俺の中へと差し入れ、俺の口中を味わい、舌を吸った。
   「んぅっ・・んっ・・」
    「「カケル・・アマヤ・カケル・・」」
    双子は、名残惜しげに俺から唇を離すと、そっと、俺の唇を甘噛した。
   「「思い出したか?」」
   「ああ・・」
    俺は、頷いて、涙に濡れた頬を手の甲で拭った。
   「思い出した」
      双子は、俺をベッドへと押し倒した。
  「「今こそ、お前に、我々の淫紋を与えよう」」
   双子に耳元で囁かれて、俺は、ぶるっと体を震わせた。
   「「受けてくれるだろう?アマヤ」」
   俺は、頷いた。
   いや。
   頷かされたんだ。
   他に、どうすればいいっていうんだよ?
   こんな、連中のこと、どう拒めばいい?
   俺は、双子のキスを受け入れた。
   唇から何か、電気のようなものが流れ込み、俺の背中へと甘い痺れが走った。
   「んぅっ!」
   双子は、俺の唇をペロッと舐めてから、体を離すと、俺の着ている服を剥いでいった。
   奴等は、裸に剥いた俺をうつ向かせるとその背中をまじまじと見つめた。
   「「淫紋が、浮かび上がっている」」
   双子は、俺の背に咲いた淫紋の花を指先でそっと辿った。
   くすぐったいような感触に、俺は、小さく喘いだ。
  「はっ・・んっ・・」
    「「美しい・・アマヤ・・お前は、美しい」」
  双子は、俺の背中に口付けて、そこを舐めていった。俺は、びくっと体をそらせて堪えていた。奴等は、俺のうなじに舌を這わせて、囁いた。
   「「やっと、本当に、俺たちのものにできるんだな、お前を」」
   「あっ・・」
   俺は、耳の穴を舐められ、身を捩った。
   もう。
  俺は。
   俺は、抗うことも忘れて、双子に身を任せていた。
   背中が熱くって。
  体の奥から、正体不明の何かが来るような気がした。
   俺は、固く目を閉じた。
  こいつら。
   マジで、こわっ!
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