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7 領地開拓ですか?

7ー1 領地問題?

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 7ー1 領地問題?

 俺は、神殿から戻ると残りの休暇を実家でのんびりとすごした。
 神殿は、グーズリー神官長とライナス親子が失脚して混沌状態だ。
 今までグーズリー神官長が異国の奴隷商とつるんで神殿で産まれた『神の子』を国外に売って私腹を肥やしてきたことがわかり王国から捜査の手が入ったため、俺の聖者問題は、なし崩し的にたち消えになっていた。
 ロタいわく、もう、聖者として神殿に入ることを強制されることはないだろうとのことだった。
 これまで神殿が聖者候補者を子作りの道具として利用してきたことが公になり女王陛下がたいそうお怒りなのだとか。
 これからは、聖者候補が現れても神殿ではなく王国の管理のもとに置かれることになったらしい。
 俺も王国の管理下に置かれることになったが、別にどうといって拘束されることもないようだ。
 しかも、今度のことではからずも俺は、前回の生での復讐を果たしたことになる。
 まあ、俺は、復讐なんて望んではいなかったのだがな。
 俺は、グーズリー神官長とライナスが断罪されたことでなんだか、心が軽くなるのを感じていた。
 今まで、時々、悪夢にうなされることがあったのだが、それが少しましになった。
 もう、2度とあんなことは起こらないのだと。
 王城の地下牢で入れ替わり立ち代わり女たちに凌辱された過去は、もう、消え去ったのだと俺は、やっと魂レベルで理解できるようになってきた。
 だが。
 まだ、油断はできない。
 なぜなら、宰相であるラーナ・クルシーアは、まだ生きている。
 俺を無実の罪で陥れ、家族を奪った宰相がまだ、何か企んでないともいいきれない。
 気を引き締めなくては。
 俺は、まだ、半分以上残っている休暇中、エルガーナ辺境伯家の騎士団の訓練に加わって鍛練を続けた。
 そして、その合間には、母上と領地をめぐって領民たちの暮らしを見て回った。
 エルガーナ辺境伯領は、ルシナード王国と隣国バサーラ王国との国境地帯に拡がっている大きな領地だ。
 だが、その領地の大半が山地と森で人が暮らしている町は、そんなに広くはない。
 時々、隣国との小競り合いもあり、国に納める税金は、他領地に比べれば軽いといえる。
 だが、現状としてエルガーナ辺境伯領は、そんなにも裕福とはいえない。
 まあ、民が飢えてはいないことだけが救いだが、いざという時にのための蓄えは十分とはいえなかった。
 
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