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第14章 光の乙女
14ー8 『光の乙女』
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14ー8 『光の乙女』
そうして海運部門でクロノフさんは、徐々に頭角をあらわしていきいつしか、『海神の使い』とか『海上を走る獣』とか呼ばれるようになったという。
だが。
クロノフさんがそうして商人として成り上がる頃、ハノーバー王国では、流行病が拡がっていた。
その病のためにクロノフさんの二人の兄は、一人は亡くなり、もう一人も失明してしまったのだという。
こうしてクロノフさんは、ハノーバー王国の第1王位継承者になった。
「国に帰れば王になることを強要されるので、私は、ずっとハノーバー王国から離れて暮らしていました」
しかし、国からの帰国の要請をこれ以上断り続けることはできなかった。
「それで、この度のメルロープ王国よりの申し出に応じたわけです」
まあ、クロノフさん的には、王家からの依頼のついでに実家に顔を出すような気持ちだったのだという。
だが、そう簡単にはすみそうになかった。
クロノフさんがため息をつく。
「私の兄たちは、どちらも優秀な方でした。特に失明したとはいえ第2王子であるルチアーノ兄上は、賢者ともいえるような立派な方なのです。私は、何度もルチアーノ兄上を王にと言ってきたのですがなかなか兄上がうんと言わないのです」
今回の帰国は、そのことを兄上様と話し合うことも目的だったのだという。
「私は、商人としてこのハノーバー王国を支えていきたいのです。それが一番この国のためになるのです」
港から王城までは、小一時間ほどの距離だった。
港を見下ろせる高台にあるその王城は、そんなにきらびやかではないが何度も戦を戦ってきた古城らしい重厚なたたずまいをしていた。
城に着くとわたしたちは、玉座の間に通された。
しかし。
立派な玉座には誰の姿もない。
玉座の横に置かれた一回り小さな椅子に座った獣人にクロノフさんは、跪いた。
「兄上、お久しぶりです」
「待ちかねたぞ、クロノ」
その黒い大きな獣耳を持つ男性は、クロノフさんに向かって微笑みかけた。
狼の獣人なのだろうか。
艶やかな黒い尾が美しい。
おそらく失明さえしていなければかなりの遣い手だったのだろう。
目が見えないというのに我々を威圧する気がハンパない。
ルチアーノ様は、クロノフさんに訊ねた。
「そのお方が我々の探し求めていた『光の乙女』なのか?」
そうして海運部門でクロノフさんは、徐々に頭角をあらわしていきいつしか、『海神の使い』とか『海上を走る獣』とか呼ばれるようになったという。
だが。
クロノフさんがそうして商人として成り上がる頃、ハノーバー王国では、流行病が拡がっていた。
その病のためにクロノフさんの二人の兄は、一人は亡くなり、もう一人も失明してしまったのだという。
こうしてクロノフさんは、ハノーバー王国の第1王位継承者になった。
「国に帰れば王になることを強要されるので、私は、ずっとハノーバー王国から離れて暮らしていました」
しかし、国からの帰国の要請をこれ以上断り続けることはできなかった。
「それで、この度のメルロープ王国よりの申し出に応じたわけです」
まあ、クロノフさん的には、王家からの依頼のついでに実家に顔を出すような気持ちだったのだという。
だが、そう簡単にはすみそうになかった。
クロノフさんがため息をつく。
「私の兄たちは、どちらも優秀な方でした。特に失明したとはいえ第2王子であるルチアーノ兄上は、賢者ともいえるような立派な方なのです。私は、何度もルチアーノ兄上を王にと言ってきたのですがなかなか兄上がうんと言わないのです」
今回の帰国は、そのことを兄上様と話し合うことも目的だったのだという。
「私は、商人としてこのハノーバー王国を支えていきたいのです。それが一番この国のためになるのです」
港から王城までは、小一時間ほどの距離だった。
港を見下ろせる高台にあるその王城は、そんなにきらびやかではないが何度も戦を戦ってきた古城らしい重厚なたたずまいをしていた。
城に着くとわたしたちは、玉座の間に通された。
しかし。
立派な玉座には誰の姿もない。
玉座の横に置かれた一回り小さな椅子に座った獣人にクロノフさんは、跪いた。
「兄上、お久しぶりです」
「待ちかねたぞ、クロノ」
その黒い大きな獣耳を持つ男性は、クロノフさんに向かって微笑みかけた。
狼の獣人なのだろうか。
艶やかな黒い尾が美しい。
おそらく失明さえしていなければかなりの遣い手だったのだろう。
目が見えないというのに我々を威圧する気がハンパない。
ルチアーノ様は、クロノフさんに訊ねた。
「そのお方が我々の探し求めていた『光の乙女』なのか?」
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