上 下
61 / 85
第4章 社交界の陰謀

4ー10 告白

しおりを挟む
 4ー10 告白

 俺は、眠っているチヒロを抱いて部屋まで運ぶとベッドに寝かせて上着を脱がせた。
 俺たちは、ウルマグライン魔法学園の課外学習で来ているのでみな制服を着ている。
 俺は、チヒロの制服を脱がせてチヒロを肌着一枚にしてそっと布団をかけてやった。
 「ん・・」
 チヒロがむにゃむやと寝言を言っている。
 「らめっ、こんなとこじゃ」
 「何を言ってるんだ?こいつは」
 俺は、チヒロの寝顔を覗き込んで頬にかかった髪をはらう。
 チヒロは、今年で13歳になる。
 まだまだ子供だが、その美しさは、抜きん出ていた。
 初めてであった頃は、醜い薄汚い子供だと思っていたんだが、チヒロは、どんどんきれいになってきた。
 俺は、チヒロの頬に軽くキスをした。
 「愛してるよ、チヒロ」
 それは、ほんの悪戯心のつもりだった。
 でも、そう言ってしまうと俺の心は、激しく高ぶった。
 俺は、チヒロが好きだ。
 生意気でこしゃくなところもあるが、本当はさみしがりやで優しい。
 そして、俺の主でもある。
 アルアロイに命じられてチヒロの騎士になった俺だったが今では、心の底からチヒロを主として守りたいと思っていた。
 チヒロ。
 俺は、眠っているチヒロの唇にそっと指先で触れた。
 「愛しています。あなたのことを愛している」
 俺は、そっとチヒロの唇に唇を重ねた。
 チヒロがびくっと動いて俺は、すぐに体を離した。
 だけど。
 唇だけがいつまでもじんじんと熱かった。
 俺は、一人、部屋を抜け出した。
 廊下にでるとリータがドアの横にもたれてたっていた。
 「リータ?」
 「あんたがチヒロを襲おうとしたらすぐにあんたを殺すつもりだったんだよ」
 リータがぽつりと呟いた。
 「それなのにあんたときたら、寝ているチヒロに告白するぐらいしかできないときた」
 「ほっといてくれ」
 俺は、リータの前を通って食堂へと戻ろうとした。
 リータは、はぁっとため息をついた。
 「あの方がチヒロをこの世界の王にするおつもりでなければ。あんたがアルアロイが選んだ後継者でなければ、私だって見て見ぬふりもしてやれるんだけどね」
 「いらん心配だ」
 というか、アルアロイの後継者って?
 俺は、リータの方をじろっと睨んだ。
 「俺がアルアロイの後継者?」
 「おっと、私としたことが」
 リータが口許を押さえた。
 俺は、リータに向き合うと訊ねた。
 「どういうことだ?リータ」
 「あんたが知るのはあのお方がこの世界から消えてなくなってからの筈だったんだけどね」
 はぁ?
 俺は、リータを凝視した。
 アルアロイが死ぬ?
 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,752pt お気に入り:2,480

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,218pt お気に入り:3,765

婚約破棄されましたが、幼馴染の彼は諦めませんでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,855pt お気に入り:281

ある公爵令嬢の生涯

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:6,737pt お気に入り:16,127

処理中です...