異世界から嫁に来ました~あんなこと(エロ)もこんなこと(子作り)もなく冷遇されてますが、何か?~

トモモト ヨシユキ

文字の大きさ
74 / 131
7 俺の過去と愛と欲情

7ー3 子山羊

しおりを挟む
 7ー3 子山羊

 俺は、ラーが恋しかった。
 あの優しい、温もりが俺には、必要だった。
 俺は、ノオザの木に魔力を与えるときに幹に額を押し付けて目を閉じた。
 『サミシイ?カナシイ?』
 ノオザの木が俺に訊ねたので、俺は、頷いた。
 俺は、陛下に抱かれるまで知らなかった。
 愛されること。
 その温もりを。
 知らなければ、よかった。
 俺は、涙が溢れてくるのを止められなかった。
 知らなければ。
 失う悲しみも苦しみもなかったのに。
 ごうっと音がしてノオザの木が枝を揺らせた。
 俺が上を見上げると、すぐ上になった実がぷくっと膨らんでいた。
 何かが蠢いているのがわかって俺は、ぎょっとしていた。
 な、なんだ?
 考える間もなく実は弾けて、ふわりとそれは、俺の前へと漂ってくる。
 それは、濡れていて弱々しい声を上げていた。
 俺は、それを受け止めるとすぐに部屋へ戻った。
 最近、俺の部屋付きのメイドになったクルルという少女に頼んで大きめの桶を用意してもらいそこに魔法でお湯をはると俺は、その何かを洗い清めた。
 「めぇ・・」
 弱々しく声を上げるそれを俺は、柔らかい布で拭いてやる。
 毛が乾くとふわふわの白い毛並みに赤い瞳をしたそれは、よろよろと立ち上がり俺の方へと首を伸ばして俺の手をそっと舐めた。
 うん。
 これって、山羊?
 でも、額に小さな角が1本はえてるし。
 どうしたものかと俺が考えていると、部屋のドアが勢いよく開いてアーネストが顔を出した。
 「そ、それ、は?」
 「ああ」
 俺は、ふかふかの子山羊の背を撫でながらアーネストに答えた。
 「ちょっと、拾ったんだ。ここで飼いたいと思うんだけど」
 「飼う?」
 アーネストがぎょっとした様子で俺と子山羊を交互に見てから、震える声で告げた。
 「それを?飼うんですか?」
 あれ?
 俺は、ベッドに腰かけた俺の膝の上に頭をのせて甘えている子山羊の頭を撫でながら目を瞬かせる。
 これって、不味いのかな?
 勝手に離宮で生き物を飼っちゃいけないとか?
 「ダメかな?」
 俺が聞くとアーネストがブンブン頭を振った。
 「聖獣を飼うとか!あり得ませんから!」
 はい?
 聖獣?
 俺は、膝の上に頭を置いて俺に懐いている子山羊を見た。
 「聖獣?この子が?」
 「そうです!」
 アーネストがもう、限界ぽかった。
 アーネストは、震えながら俺たちに近づいてくるとそっと子山羊に手を伸ばして触れようとした。
 が、くるりと振り向いた子山羊がくわっと歯を剥いて噛みつこうとしたのでビクッと手をひいた。
 子山羊は、何事もなかったかのように俺に可愛らしく甘えてきた。
 いや!
 二面性がありすぎだろうが!
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。

竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。 自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。 番外編はおまけです。 特に番外編2はある意味蛇足です。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

亡国の王弟は女好きの騎士に溺愛される

コムギ
BL
アラバンド国の王弟ルカーシュは、騎士のシモンによって地下牢から救い出された。 その時、肌に触れたシモンに、やけどのような怪我を負わせてしまう。 ルカーシュは北の魔女の末裔であり、魔力を持っていた。 魔力を持たない者に触れると、怪我をさせてしまうという。 騎士団長からの命令で、シモンはルカーシュの護衛につくことになった。 ※他サイトにも掲載しています。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

幸せな復讐

志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。 明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。 だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。 でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。 君に捨てられた僕の恋の行方は…… それぞれの新生活を意識して書きました。 よろしくお願いします。 fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

処理中です...