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しおりを挟む気が付けば放課後だった。
数人で駄弁る生徒を残し閑散とした教室で、俺は重たい瞼を擦る。のっそりと身体を持ち上げ、ぎこちない手つきでスマートフォンの画面を開いた。
ああ、もうすっかり見慣れてしまった理事長からのメッセージが届いている。
『話をしよう。』
毎日届くこのメッセ。
毎日無視して削除している。
俺のような生徒を直接呼び出すのは彼の体裁的に許されないらしく、放送等で呼び出されることは無い。
つまり、適当に無視しておけばいい訳だ。
どうせ家族に話そうだとか、手術をしようだとかそういう事だから。
「……ばかばかし」
教室の外に授業が終わったのであろう監視の風紀が見えたので、俺も教室を出る。さっき来たばかりの癖に、俺と目が会った瞬間苛苛とした様子で遅いと睨まれた。
「さっさと部屋に戻れ」
「……購買寄りたいんだけど」
「知らん。時間の無駄だ」
……今日の夕ご飯は抜きのようだ。
まぁ、別に食べても吐くだけだが、一応お腹はすくんだよなぁ。吐けば疲労で寝るか気絶するかだから別に良いのだけれど、通常の空腹は結構しんどい。
重い足取りを急かされつつも寮への道を歩いていると、横に立っていた風紀が立ち止まる。俺への態度を一変させて行儀正しくお辞儀をする彼を見て、俺も目線をあげる。
……あぁ、最悪だ。
「お疲れ様です。委員長」
「あァ、お疲れ。……よォ風音」
「……」
これから起こる不幸の事を想像して、つい風紀委員長の声を無視してしまう。気付いた時には時既に遅し。彼の顔は悪辣な悪魔のような笑顔になっていて。
今日は帰れないな。
「俺を無視するたァいい度胸じゃねェか。風紀室にこい。山下、お前は帰っていいぞ」
「……ありがとうございます!失礼致します」
今や去っていく監視すら名残惜しい。
冷たく嗤う目の前の悪魔に、手が震える。これも全て自業自得なんだけど。俺のせいで同じ目にあった生徒がいるんだけど。それでも嫌なものは嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
でも逃げる資格はない。
ギシ、ギシとソファが軋む。
内臓を押し上げられる不愉快な感覚に吐き気がする。
快感なんて微塵もない。
不快感と痛みと恐怖だけが俺を包み込む。
そういえば最近、嫌な事があると意識が朦朧として自分が自分で無くなって遠い所にたっている様な気分になる良い癖がついた。
悪意のままに人を嬲るのが大好きな拷問趣味の生粋のサディストにとって、俺は都合のいい捌け口らしい。激痛に悲鳴を上げればさらに暴力は激しくなり、羞恥に息を詰めれば腹を殴って無理矢理声を出すよう強要される。
でも腹を殴られると決まって吐血をしてしまうから、バレないように舌を噛んだふりをして猛烈な痛みと吐き気とバレる恐怖を押し流す。しかし奴は血を吐く俺が好みなのか、頻繁に殴打してくるのだからたまったものでは無い。
最早生理的な涙なのか心の涙なのかわからないものが、頬を伝っていく。すると直ぐに泣く資格なんてあるのかと囁く声。
乱暴にうつ伏せにされ、頭をベッドに押し付けられ、再び揺さぶられる。
バレる訳には行かない。
バレたら手術させられるかもしれない。
生かされてしまうかもしれない。
『ねぇ、なんであんたが無実なんだ』
『……』
『死んでくれ。……死んでくれよ、なんで生きてんだよ!!!なぁ、頼む。頼むから死んでくれないか。
出来るだけ苦しんで苦しんで苦しんで死んでくれ』
『……分かった』
『ーーーーーーぁあああぁ"あああ"ああ!!!!』
中等部の卒業式での光景が走馬燈のように流れる。
被害者の一人の少年との約束。
大丈夫。
ほら、苦しんでいるでしょう。
同じ目に遭ってる。
高等部に入って既に何回もここに呼び出された。その度に強姦されて、輪姦されて、拷問されて。ーー彼等と違って、俺には助けなんて来ない。
……どうかな、君より苦しめているかな。
余命あと3年くらいだと思うけど、それまで生きていられるのだろうか。安静にできていないから、もうすぐ死んじゃうかも。
風紀室から追い出される。
腰が立たないので動くことも出来ない。
今日はもう此処で寝てしまおうか。
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