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番外編

フィリップ&ノーマン

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フィリップとノーマンの恋のお話。フィリップsideです。

* * * * * * *


「今日からは僕も一緒に冒険者させてもらうね~!よろしく~!」

今日は久しぶりに皆で冒険者として活動する。しばらくは、パーキンス家の事でバタついていてやりたくても出来なかったからな。

アシェル、アーネスト、ハミッシュと俺の4人で始まった冒険者活動に今日からノーマンも参加する事になった。

「ノーマンよろしく。これで前衛2人、後衛3人のパーティーか。これならかなりの大物でも行けそうだな。」

「それにSランクが2人もいるんだぜ。豪華だよな。」

「それで僕から提案があるんですけど…。」

ノーマンが増えた事でアシェルから2パーティーに別れようと提案が。
ハミッシュとアーネスト組、ノーマンと俺とアシェル組に。

「僕は冒険者として初めて活動するノーマン様のサポート役です。あまり手を出すつもりはありません。ですのでフィリップ様がリードして下さい。」

アーネストはもうかなり冒険者として慣れているから、ハミッシュと2人でも問題ないと。

それで2パーティーに別れて活動する事になった。
…アーネストが少し寂しそうだったのには笑いそうになった。


「へぇ~フィリップ様すごいです~!」

「これもアシェルが教えてくれた事なんだ。俺が凄いわけじゃないよ。」

「それでもちゃんと覚えて実践できて、僕に教えられるって凄い事ですよ~!」

純粋に褒めてくれるその言葉がくすぐったい。
俺はずっと『家の恥』として『無能』と言われていた。


頭脳派といわれるスティード家に産まれながらも、俺は体を動かすことが得意で剣術が楽しくて仕方がなかった。
だが母上も兄上も、そんな俺を認める事はなく剣術の先生を辞めさせようとした。


「フィリップ、安心しなさい。お前はお前のやりたい事をすれば良い。」

父上がそう言ってくれたお陰で、俺は剣を諦めなくてもよく、騎士科に行く事もできた。


俺は物凄く頭が悪い、という訳ではない。だが、母上の理想は高くそれに届かなければ無能とされた。だから兄上だけを可愛がり、俺は恥だと言われ続けた。

父上は宰相補佐として忙しく、家に帰って来ない事もある。だからどうしても母上と兄上と一緒にいる事が多くて、肩身の狭い思いで過ごしてきた。


学園で騎士科に進みたいと言った時も、家の恥だとして許して貰えなかった。でも父上が許可してくれたお陰で今がある。父上には感謝しかない。


学園に行った時も「え?スティード家?なのに騎士科に来たの?」とよく言われた。挙句に、「宰相補佐様にお願いしてAクラスにねじ込んで貰ったんじゃないのか」とも言われた。

学園でも俺は認めて貰えないのか、と悔しい思いをしていたが、

「君の剣は凄いな。うかうかしてたらあっという間に負けそうだ。俺も頑張らねば。よかったら一緒に打ち合いでもしないか?」

そう言ってくれた人がいた。それがアーネストだ。

初めてだった。家のことなんか関係なく、俺の剣の実力だけを見てくれた人は。

スタンディング辺境伯といえば、国境の防衛を担う武闘派だ。アーネストもさすが首席合格者といわんばかりの腕前だ。そんな人に、『君の剣は凄い』と言って貰えたんだ。

俺がやってきた事は間違いじゃ無かった。アーネストにそう言われて俺は自信がついたし、更に剣術が楽しくなった。

それからハミッシュやアシェルとも友人になれ、俺の学園生活はとても楽しいものになった。

この2人も俺の家の事なんて関係なく『俺自身』を見てくれている。

そしてノーマンも。ノーマンとは他の友人達より関わりが少ないけど、一度も俺の事を曲がった目で見ることも無いし、今も尊敬の目で見てくれている。

本当に皆と知り合えて、友人になれて良かった。



「フィリップ様~!大丈夫ですか~?」

「ああ大丈夫だ、問題ない。」

魔物との戦闘で少し擦り傷が出来てしまった。油断したつもりは無いが、簡単なミスをしてしまった。

「擦り傷でも油断しちゃダメですよ~。僕薬持ってきたんでこれ塗りますね~。」

そう言ってノーマンは小さなケースから塗り薬を取り出し塗ってくれた。

「これは?」

「僕の家、薬草の育成と研究をしているんです~。それでこれは僕の作った塗り薬です~。簡単な擦り傷くらいなら魔法薬使わなくてもこれで十分ですよ~。」

「凄いな。君の家はそんな事をしていたのか。」

「とても小さいので有名どころには負けますけど~。それでも魔法薬をなかなか買えない平民の人達には重宝されてるんですよ~。ふふ。」

そう言った時のノーマンは、誇らしげに柔らかく笑っていた。

例え小さくて大手には勝てなくても、必要としている人の為に試行錯誤して効果的な薬を提供している。それを誇りに思っているノーマンを俺は素敵な人だなと思った。


それからノーマンとも過ごす時間が増えて、話す事も多くなって少しずつノーマンに惹かれていった。
ノーマンの持つ柔らかい雰囲気にとても癒されていたんだ。

剣での模擬戦を行った後は、多少なりとも気分が高まっているがノーマンが側にいるとふと簡単に力が抜けて心が暖かくなる。

たまに休みの日に2人で街へ出掛けたりもした。俺たちは下級貴族だし、街に出る事もそれなりにある。特にノーマンは平民と関わる事が多くよく出歩いていたそうだ。


「おや、ノーマン様じゃないか。久しぶりだねぇ。」

「あ、お久しぶりです~!お元気でしたか~?」

ノーマンがよく行っていたという辺りを歩いていた時だ。とある平民の1人に声を掛けられていた。

「おお、ノーマン様!こんにちは。」

それからどんどん人が増えていった。声を掛けてきたのは皆平民のようだ。普通なら平民とこんな風に話すことは無いが、ノーマンは皆から慕われていて話に花が咲いている。
ノーマン自身もとても楽しそうで、その姿を見ているだけで俺も楽しくなった。

「ところでノーマン様。そこのお方は誰だい?」

「フィリップ様だよ~。僕の学園での大切なお友達なんだ~!」

「へぇ。大切な、ねぇ。ノーマン様も良い男捕まえたじゃないか。おめでとう!」

「え!? ち、違うよ~!フィリップ様とはそんなんじゃ~っ!…フィリップ様に迷惑かかっちゃうから~…。」

「照れちゃって可愛いねぇ。…フィリップ様、ノーマン様のことどう思ってるんだい?」

微笑ましく思っていたら、急に話を振られてしまった。
ノーマンを見ると顔を赤くさせて俺のことをじっと見て。こんな顔初めて見た。

「……可愛い。」

「えっ!?」

「あらあらあら。これはこれは。……さあさあ皆さん、後は若い者に任せて我々は解散解散!」

パンパンと誰かが手を打って、集まっていた人たちは一斉に何処かへと行ってしまった。

そこに残されたのは、顔を更に赤くさせててモジモジしているノーマンと俺。

「…あ、あの。」

「ノーマン、俺の事好き?恋愛的に、好き?」

「え、あの、その…。ぼ、僕…。」

「俺は好きだよ。ノーマンの事、恋愛的な意味で好き。」

これ以上赤くなる事があるのかというくらい真っ赤になって、目を大きく見開いて。そんな顔も可愛い。

ノーマンの頬に手を当てて擦るっと撫でる。

「嘘じゃないんだ。本当に好きなんだ。…ノーマンは?俺の事好き?」

「……はい。僕も、フィリップ様の事が、好き、です…。」

頬に当てた俺の手に、ノーマンは手を重ねてすりっと頬を擦り付けて、笑った。

可愛いっ!!! なんだこの生き物は!!

衝動的にノーマンを抱きしめて、頬をぐりぐりと押しつけた。

「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い…!」

「へっ!? フィ、フィリップ様~!?」

もう可愛いしかない!俺の事好きだって!どうしようどうしよう!もうもうもう!ノーマンが可愛すぎて!

「ノーマン好き。好き。大好き。だからもう婚約しよう。今すぐ。」

「へっ!? あ、あのっ…。」

それから俺はノーマンを連れてノーマンの家へ行った。ノーマンの父上にあって、婚約したいことを伝えて認めてもらった。


「フィリップ様って結構強引な方なんですね~。僕びっくりしちゃいました~。」

「ごめん。居ても立っても居られなくて。」

「ふふっ。フィリップ様~これからも末永くお願いしますね~!」


ちょっと…いや、かなり強引だったことは認める。けどノーマンの父上にも認めてもらえて婚約できるんだ。




それから俺たちは学園を卒業後、ノーマンと結婚して一緒に暮らし始めた。


今日は同僚達と食事に行っていて帰りが遅くなってしまった。もうノーマンは寝ているだろう。

そっと寝室へ入る。ベッドには気持ちよさそうに眠っているノーマン。

そっと隣へ滑り込んで寝顔を見つめる。

「…ただいま。愛してるよノーマン。」

そっと囁いて、額にキスを送る。

俺も寝ようと横になると、もぞもぞと俺に抱きついてきた。

「…お帰りなさい~。…僕も愛してます~…。」


可愛すぎるだろう!…抱きたいけど、眠いだろうから明日、たっぷり可愛がろう。


俺もそのままノーマンを腕に閉じ込めて、暖かさを感じながら目を瞑った。





* * * * * * * *

これでアシェル編の番外編は一旦終了となります。また何か思いついたら、エレン編のようにゲリラ更新するかも知れません。
その時はまた読んでくださると嬉しいです。

次はライリー編で皆様にまたお会いできますよう。


ここまで本当にありがとうございました!


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