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4 勘当されました
しおりを挟むあれからヴィンセントとは食事を一緒に取っている。
他の人と違って、僕を変に煽てたりしないから気が楽だ。というか僕が話しかけないと話さないってだけなんだけど。
ヴィンセントも話したい事や思った事を自由に言えたらいいのに。
友達になってから5日後の朝、珍しくヴィンセントから僕の部屋へ訪ねてきた。
「ライリー様。ご報告したい事がありましてお伺いいたしました。」
「ん?報告?なんかあったの?」
「実は…。」
先日あった婚約破棄騒動で、ヴィンセントの親から手紙が送られてきた。内容は『お前を勘当する。』というもの。
トルバート家に恥をかかせ泥を塗ったお前は今すぐ学園を立ち去り何処かへと行け。もうトルバート家の人間では無い。
「ですので私は今日この学園を去らなければならなくなりました。ライリー様、この数日間お世話になりました。どうかお元気で。」
そう言うだけ言って去ろうとするヴィンセントを慌てて引き止めた。
「ちょっ、待って!この先どうするんだよ!? 行く当てはあるの!?」
「…ありません。ありませんが、ここには居られませんので出ていかなければ。」
「と、とにかく荷物まとめたら僕の部屋に来て!待ってるから!」
これって結構大変な事だよな!? なのに何であんなに平気な顔してんだよ。…平気な顔してるんじゃなくて、表情が変わらないだけかもしれないけど。
それからしばらくして部屋に来たヴィンセント。持ってきた荷物は鞄一つだけだった。
「荷物ってこれだけ?」
「はい。着替えが少しと後は本だけです。」
少なすぎだろ…。
「ではライリー様、私はこれで失礼致します。」
「だから待って!」
なんですぐに出て行こうとするんだよ!行く当ても頼れる人もいないのに、この先どうするんだよ!?
「…わかりません。」
はぁ~…ダメだこれは。こんなんでこの先生きていけないだろう…。どうするかな。
「…ライリー様、何故私を気にされるのかお聞きしてもよろしいですか?」
「…友達だから。友達が困ってたりしたら気になるのは当然だろう?」
「当然、なのですか…。」
そうだった。こいつはそういうの分からないんだった。
んー、どうするかな。このままこいつを放っておく事は出来ない。きっと簡単に野垂れ死ぬ。そんなの僕が嫌だ。
………うん。決めた。家に連れて行こう。
「よし。王都を出て出掛けよう。でも転移門は今すぐ使えないから数日待って。それまでこの部屋にいる事。いい?」
「それがご命令ならば。」
だから命令じゃないんだってば。って言ってもわかんないよな。まぁここに残ってくれるんならとりあえずそれでいいや。
僕はそのままヴィンセントを部屋に残して、担任の元へと向かった。このまま授業受けるとか無理だし、数日休む事を伝えに行く。
そしてそのまま外へ出て転移門の予約をした。運がいい事に明日の午後から予約が取れたからよかった。
「ヴィンセント、明日僕と一緒に僕の家へ行くから。」
「え…。ライリー様の家ですか?ですが私は…。」
「はい却下。不幸になるとか傷が付くとか、その話はもういいって言ったでしょ?…そもそもさ、目の色が違うから不幸になるって何なのそれ?」
「わかりません。私もそう言われて色々な本を読んで調べましたが、その様な記述は見当たりませんでした。」
ないんじゃん。ってことはそれはただの『思い込み』と『こじつけ』でしょ?
なのにそう言われたからそうなんだって、絶対おかしいから。
「ですが婚約破棄になり家に泥を塗ってしまいました。お前のせいで後継が授からないとも言われました。
感情のない私は『人形』のようで気持ち悪いと。左右の目の色が違う事で更に人形じみていると言われました。私の存在自体誰かの気分を害する事は確かです。
…ですから私の存在そのものが『不幸』を撒き散らしているのだと思います。」
なんだよそれ。お前の存在自体が不幸を撒き散らす。そんなはずないだろっ!
「ヴィンセント。確かに婚約破棄になって家に泥を塗っ事は間違いないと思う。だけどそれはヴィンセントだけのせいなのか?ヴィンセントの事を知ろうともせず歩み寄ることもせず、ただ目の色が違うとかそんな理由の婚約破棄だぞ。」
下を向いてただじっと俺の話を聞いている。こんなふざけた婚約破棄なんて、お前は怒っていいんだ。怒る権利があるんだ。なんでも受け入れていいわけじゃない。
「それに後継がなかなか授からないとか。それこそヴィンセントの目の色が違うからなんて理由、僕には全く意味が分からない。」
「………。」
「目の色が違うなんて、僕にしたらただの『個性の1つ』だよ。人と違うからダメだなんて誰が決めたんだよ。そんなの全員ダメになるじゃないか。
同じ顔の奴なんているか?同じ声の奴なんているか?似ていたとしても、全員全く同じじゃないだろ。なのに、目の色が違うってだけでヴィンセントを認めないのはおかしいと思わないか?」
「…そんな事初めて言われました。」
だろうな。今までこいつの周りのやつは碌でもない奴ばっかりだ。何が『不幸になる』だ。勝手な思い込みでこいつを攻撃していいわけない。
父さんと母さんだったら絶対そんな事しない。ヴィンセントのことも普通の人と同じ様に扱う。差別なんてしない。
人って本当に見た目だけで判断するんだな。上部だけを見て、自分の理想を押し付ける。
僕だって、見た目がカッコいいだの英雄だからと寄ってくる奴ばっかりだ。『僕自身』を見てくれる奴なんてほとんど居なかった。そう思ったらこの学園てなんてつまらないんだろう。
兄ちゃんにはすごくいい友人が何人も出来たけど、僕には本当の友達なんて1人しかいない。
そいつも今、家の事情で学園を休んでるけどな。…あいつ元気かな。
「じゃそういう事で。ご飯食べたら早めに寝よう。」
ヴィンセントはもうここにはいない人間なのに食事は取れないとか言い出したから、無理やり引っ張って連れてきた。無理やりご飯食べさせてさっさと部屋に戻る。
コイツの意識改革やんないとダメだな。このまま放置したらすぐ死ぬぞ。
「では私はここのソファーで寝ます。」
「上に掛けるものないからベッド来て。…何もしないから安心して。このベッド広すぎるくらいだから大丈夫でしょ。…ほら早く。」
無理やりベッドに押し込んで端と端で横になった。
コイツ僕がいなかったらどうなってたんだろ。トルバート家でどんな感じだったのか今度ちゃんと聞こう。そんで意識改革して、自分の意思を持ってもらう様にしないと。危なすぎて怖い。
「…ライリー様。ありがとうございます。」
「? 急にどした?」
「……今まで私はこんな風に誰かと過ごした事がありませんでした。ライリー様といると心の中に『何か』を感じるんです。それが何かは分かりませんが。」
もしかしてコイツ感情がないんじゃなくて、その感情が何かわからないだけなんじゃないのか?
「その心の中の『何か』ってあったかい感じ、する?」
「…そうですね、嫌な感じは全くなくてむしろ気持ちの良い感じがします。」
「それ、『嬉しい』とか『楽しい』って気持ちじゃないの?」
目を大きく開いて呆然としてる。なんだ、こんな顔もできるんじゃん。
「…今の顔は『驚き』かな。……感情ちゃんとあるじゃん。それが何か分からないだけで。『人形』なんかじゃない。ちゃんと『人間』だよ。」
「…これが『嬉しい』と『楽しい』。そして『驚き』。………私にも感情が、あったのですね。」
あ。笑った。
本当に本当ーに少しだけど。笑った。
「…そうだよ。ちゃんと感情がある。良かったな。」
「…はい。ありがとうございます。」
良かった。これならきっと大丈夫だろう。ヴィンセントにとっていい環境になれば、もっと感情が出てくる。表情も変わる。
さっきの少しだけ笑った顔が、綺麗だと思った。きっとヴィンセントにとって心からの感情だったんだ。
もっとそんな顔を見せてくれる様になってくれたら。そう思って、僕は眠った。
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