20 / 34
19 ヴィンセントの決意
しおりを挟むアーロンと別れてから。王都の街をのんびりと歩いていく。するとヴィンがある広告に目をつけた。
「ん?劇場?行きたいの?」
「あ、いえ。この劇が昔本で読んだ物語だったので。それなりに面白いお話だったんです。」
「ふぅん。…観に行く?」
「え?いいんですか?」
だって顔に『観に行きたい』って書いてある。
「もちろん。ヴィンがやりたい事したい事何でもしよう。」
それから劇場に足を運んで明日のチケットを買うことにした。ここはかなりの人が集まっていてそれなりに人気がある様だ。
丁度今日の公演が終わったのだろう。沢山の人が会場から出て来ていた。
「…ヴィンセントっ!なぜお前がここに!」
劇場の中に入ってしばらくすると、ヴィンを呼ぶ声が聞こえた。声のした方へ顔を向けると、2人の男が睨む様にこちらを見ていた。
「……お母様。」
え?あれがヴィンの母親?
母親を見たヴィンが少し震えていた。昔のことを思い出してるのかも知れない。手をギュッて握るとハッとして僕の顔を見た。
うん、大丈夫。もう1人じゃないよ。
「もう2度と私たちの前に姿を見せるなと言ったはずだ!それなのになぜここにっ………。一緒にいるこの人は誰だ?」
「こんにちは。僕はライリー・フィンバーです。」
こんな奴に挨拶なんてしたくもないし話したくもないけど、ヴィンを守るために一歩前に出る。
「ライリー・フィンバー…?まさか『ドラゴン討伐の英雄』の?……ヴィンセント、どういう事だ?なぜお前がこんな方と一緒にいる?」
「ヴィンとは恋人ですよ。それが何か?」
肩を抱いて親密さをアピールする。
「恋人だと…?本当なのか?」
「……はい。」
「…よくやった!ウェインライト家との縁談が無くなったが、代わりに『ドラゴン討伐の英雄』と恋人になったのなら話は変わる。これで我がトルバート家も更に力を付けられる。今すぐお前の勘当を解き家に戻して…」
「ふざけるな。」
なんだコイツは。僕と恋人になったから家に戻す?ヴィンを散々な目に遭わせておいて勘当したくせに。
「僕はトルバート家と縁を結ぶつもりはない。ヴィンをまともに見てこなかったお前らなんかと仲良くしたいなんて思わない。ヴィンはお前達になんか渡さない。2度と僕達の前に現れるな。」
「なっ!?」
ヴィンの手を握り劇場の外へ向かう。こんな奴と1秒だって一緒になんて居たくない。
「待ちなさいヴィンセント!お前を育ててやった恩を忘れたのかっ!」
その言葉を聞いてヴィンの足が止まる。
「ヴィン?」
「大丈夫です、ライリーさん。」
そう言うとくるりと体の向きを変えた。
「お母様、今まで生かしていただきありがとうございました。ですが育ててもらった覚えはございません。殆ど関わりなど無かったのですから。
それに目の色が違う私は『不幸を呼ぶ』のですよね?そんな私ですからトルバート家に戻るつもりはありません。もう2度とお目にかかる事はないでしょう。さようなら。トルバート侯爵夫人。」
そう告げると「行きましょう。」と僕の手を引いて歩き出した。
ヴィン…。凄くカッコよかったよ。もう言いなりなんかじゃない。自分の意思を持って自分の言いたい事を言えるようになったんだ。
堪らなくなってぎゅってヴィンを抱きしめた。それだけじゃ足りなくて、そのままキスまでしてしまった。
周りには沢山人がいるし、僕達を何事かと見ていたからキスシーンを目撃されて真っ赤になってる。
可愛い。
そのまま自慢する様に肩を抱いて、劇場を出た。
「あ。チケット買うの忘れてた。」
「ふふっ。いつでも観られますから。また今度改めて来ましょう。」
ヴィンの顔はスッキリとしてとてもいい笑顔だった。その顔最高に可愛いよ。
また少し散策して洋服店に。ヴィンの服を買っていく。
「ソルズの街である程度買いましたからこんなにも沢山は…。」
「だめ。買うの。僕が買いたいから買う。」
やっぱり王都はいいデザインの物が多い。ヴィンに似合いそうな物を10着ほど選んでいった。あんまり多くても持ち帰るの大変だし今回はこのくらいかな。
「あ、待ってください。」
帰ろうかとした所にヴィンが慌てて会計に。
「すみませんお待たせしました。…これをライリーさんに。」
そう言って手渡されたのはとても小さなチャーム。
「私の目は金と青ですが、その2色が並んだこれを見つけてしまって…。ライリーさんの持っている剣に付けていただけないかと…。あの、ダメ、でしょうか。」
何これ。段々と顔を赤くさせて声も小さくなって。可愛すぎてしんどいっ!
「嬉しい。大切にする。うん、すごく嬉しい!あ、でもヴィンにも何か…。」
「いいえ、服をたくさん買っていただきました。それに紫色のチャームもあったんです。これは私が持っています。」
そう言って掲げた手には紫のチャーム。形は僕にくれた物とお揃いだ。
あああ!可愛すぎてしんどい!誰か助けてっ!
抱きしめたいけど僕の手には沢山の荷物。くっそ!後で目一杯いちゃついてやる!
それから宿に戻って父さん達と合流。
「デートは楽しかったか?」
「あ、えっと…はい。服まで買っていただきました。申し訳ないです。」
「いいのいいの。貰っとけ貰っとけ。なんかうちの特徴はとにかく買い与える血筋みたいだから。」
確かに。お爺ちゃま達なんか凄いもんな。これはフィンバー家の血筋だったのか。
「明日は騎士団の方に顔を出すからな。勝手に出かけるなよ。」
「分かってるよ。」
「あの…私も一緒に行って大丈夫なのでしょうか。」
「大丈夫。ちゃんと許可貰ってるから。」
明日の出発時間を確認して夕食を皆で食べてからまた部屋でゆっくりと過ごす。
お風呂はまたヴィンと一緒に。
「…やっぱり慣れません。」
恥ずかしがるヴィンが可愛い。なんで皆ヴィンを嫌っていたのかまっっったく理解出来ない。そのおかげでヴィンと一緒にいられるんだけど。
広い湯船の中でピッタリとヴィンを抱え込む。そろっと指を動かして、可愛い乳首をくりくりと弄る。
「あ…まっ、待ってください!んんっ。昨日も…しました、よ?」
「昨日は昨日。今日は今日。せっかくヴィンと一緒にお風呂入ってるのに我慢なんて出来るわけないでしょ?」
「…仕方ないですね。」と言いながらも嬉しそうなヴィン。
もう限界だからいただきます。
そして翌日。
皆で王宮へ向かう。王宮へはドラゴン討伐の褒賞の時以来だ。
王宮から馬車が迎えに来て乗り込もうとした時、ヴィンがある人間をずっと見つめていた。
「ヴィン?どうしたの?」
「…ライリーさん。あの…あの人、なんですけど。」
ヴィンの視線の先にはローブを被った旅人らしき人。
「…あの人、前に私を襲ったガンドヴァの人と似た魔力をしているんです。」
「っ!? 目線をこっちに。ずっと見てると怪しまれる。…それで?」
「…凄く澱んでいて、あそこまで澱んだ魔力の方は初めて見ました。もしかしたら、かなり人を殺めて来ている人かも知れません。」
これかなり不味くないか?
「直ぐ父さん達に言おう。」
先に馬車に乗り込んだ父さん達に事情を説明する。
「なんだと?…後を付けた方がいいだろう。何かを企んでいる可能性が高い。」
「よし、それなら行こう。」
追いかけようと馬車を降りたら迎えに来た騎士団の人に止められてしまった。
「お待ちください!ど、どこへ行かれるのですか?」
「あのローブの人の後をつけるんだ。…もしかしたらガンドヴァが絡んでるかも知れない。」
「なっ!? それでしたら私が行きます。皆さんは王宮へ。宰相様もお待ちですから皆さんは王宮へ向かってください。」
「…わかりました。気を付けてください。無理はしない様に。」
「はい、エレン様。大丈夫です。…では、行ってまいります。」
ローブの人は騎士団の人に任せて僕達は王宮へと向かった。
159
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
贖罪公爵長男とのんきな俺
侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。
貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。
一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。
そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。
・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め
・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。
・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。
・CP固定・ご都合主義・ハピエン
・他サイト掲載予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる