【完結】平民として慎ましやかに生きようとするあいつと僕の関係。〜平民シリーズ③ライリー編〜

華抹茶

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20 怪しい男

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「あの騎士の方大丈夫でしょうか。」

王宮へ向かう馬車の中、ヴィンがそうぽつりと呟く。

「大丈夫だよ。騎士団でちゃんと訓練もしてる強い人だから。」

それでも心配なのかヴィンは下を向いたままだ。

「あの騎士に何かあるのか?」

「いえ、あの方の魔力は綺麗でした。…ですがあのローブの人がかなり危険な感じでしたので。」

かなり不安なようで、安心させるために手を握った。すると少し安心できたのかふっと笑ってくれた。

王宮に着くと騎士団長達が出迎えてくれた。

「お久しぶりです。ようやくこちらでお迎えできて嬉しいです。」

騎士団長は渋いおじさんだ。ガッチガチの筋肉で盛り上がった体なのに、俊敏な動きをするかなりの猛者だ。人柄も良くて騎士団の人から慕われている。

僕もこの人は付き合いやすくて好きだ。

「ライリー、可愛い恋人連れとはやるな。恋人が出来たと聞いて、しばらく騎士団は葬式のようだったぞ。」

げぇ…。なんだよそれ。嬉しくない。

「ふふ。ライリーさんはどこに行っても人気者ですね。」

ヴィンは嫉妬しないのか、そんな話を聞いても笑っていた。

「初めまして。騎士団長のエイデンだ。よろしく。」

「ヴィンセントと申します。私もこちらに伺わせていただけて光栄です。よろしくお願いいたします。」

「ほう。可愛らしいだけじゃなく、とてもしっかりした方のようだ。ライリー、さすがだな。それに目の色が変わっているがとても良い目をしている。」

そうでしょうそうでしょう。僕のヴィンは可愛いだけじゃなくて賢いんだ。


騎士団長に連れられて王宮内にある宰相様の執務室へ。

「あぁ、お久しぶりです皆さん。ようこそ王宮へ。…さ、お茶をご用意いたしますのでこちらに。」

この宰相様はお茶好きのようで、前もこうやってお茶を振舞ってくれた。


「こちらの可愛い方がライリー殿の恋人ですかな。これまた珍しい目の色をしているな。」

「ヴィンセントと申します。初めまして、宰相様。」


しばらくは騎士団の魔力剣習得者の報告を聞いたり、訓練内容の確認をしたりした。ある程度話終わったところで例のローブの人の話をする。

「宰相様。お伝えしたいことがあるのですが、出来れば人払いをお願い出来ませんか?」

「エレン殿…?…相分かった。では騎士団長と宰相補佐以外は、ここを出てもらいましょう。」

そうして僕達だけが残された。

「して何かあったのでしょうが。人払いまでするとはかなり重要な案件なのでしょうな。」

「はい。その話に併せてヴィンセントの事もお伝えしなければいけないのです。」


ここに向かう馬車の中でローブの男のことを伝える前に、ヴィンの目の事を教える事に決めた。秘密にしていた事だし、あんまり広めていい事じゃないから人払いをお願いして。


「実は私の目のことなのですが…。」

人の魔力が視える事。人によって色や輝きが違う事。それによってある程度人の善悪がわかる事。ガンドヴァの人間に襲われた事。そのガンドヴァの人間と似た魔力を持つ人を見かけた事等を教えた。

そして今、騎士団の1人が後をつけている事も。


「なんと…。そんな事が可能なのか。そんな話聞いたことがない。」

「信じられないかも知れませんが、アシェルの妊娠も見抜きました。初期の初期でまだ体に不調が現れていない時にです。」

「…悪しき者の手に渡ればかなり危険なことですな。使おうと思えばいくらでも使える。」

「それでその騎士の人が戻るまではまだわからないのですが、もしかしたら王都で何かをしようとしている可能性もあります。」

「…わかりました。貴重な情報をありがとうございます。何事も無いのが1番ですが、つい先日のソルズでの行動もありますからね。とりあえず報告を待ちましょう。」


それでこの話は終わって騎士団の訓練場へ行くことになった。

訓練場に着くと、騎士達が勢揃いしていて一斉に敬礼をした。ザッ!と一糸乱れぬ動きは見ていて壮観だ。


僕達は元々平民だし、騎士団の人達にこんな風にされるなんて本来はあり得ない。だけど『ドラゴン討伐の英雄』になった僕達に憧れる人も多いらしくいつも僕達を見る目が怖い。ギラギラしていて怖い。

「…なんだか学園の人達よりも凄いですね。」

ヴィンもそれを感じ取ったのか、ぽつりとそんなことを溢した。


今日は特別に父さんと騎士団長の模擬戦を見せる事になっている。

正直これは僕も楽しみにしていた。

僕は未だに父さんに勝てない。父さん強すぎるんだよな。そんな父さんの模擬戦は僕だって滅多に見られる物じゃ無いからわくわくする。


模擬戦が始まった。騎士団長も凄く強い人だから最初っから飛ばして激しく打ち合いを始めている。

父さんはそれを軽くいなしていて、2人ともまだ本気を出していない事がわかる。

「…わ、わ、わ!えっ!危ないっ!…あ、わっ!」

隣でハラハラと見ているヴィンが可愛くて辛い。
こんなの見るの初めてだろうし、素人から見たら危なく見えるんだろう。


2人はそのままスピードを徐々に上げていって激しく打ち合うようになった。

ガンっ!と強く鍔迫り合いをしてさっと同時に後退する。そこで剣を下ろして終了だ。


うわぁぁぁぁぁ!!と大歓声が起こる。ヴィンも一生懸命拍手を送っていた。

父さんの剣、やっぱり凄いな。僕もあれくらいなら出来るけど、本気で戦ったらどれだけもつだろうか。


それから、集団での魔力剣の講習。月に一度ソルズへやってくるけど、全員というわけにはいかない。だからまだ僕達が会ったことのない人を中心に教えていく。

その間母さんとヴィンは騎士団長とお茶してた。母さんとヴィンが並んでるだけで凄く画になる。

…こいつら見惚れてやがる。

ちょっとイラッとしたから訓練で叩きのめしておいた。


そしたらローブの男をつけていた騎士が戻って来たと連絡が来た。

そこで訓練は終了して、また宰相様の執務室へ向かう。


執務室に入ると既に人払いは終わっていて、ついでにお茶の準備も出来ていた。…本当にお茶好きなんだな。


「では結果を聞かせて貰えるか?」

宰相様の合図で騎士からの報告を聞く。

「はい。ローブの男ですが、あのままスラム街へと入っていきました。
その途中で何箇所か立ち止まり、何かを確認していたのかきょろきょろと見回していました。それも建物と建物の間とか、植木鉢の所とか。
何箇所か見た後は、スラム街のとある建物へ入っていったのでその場でしばらく待機していました。すると同じようなローブを着た人間が数人、同じ場所へと入っていくのを確認できました。」

「なるほど。その場所を地図に印を付けることは可能か?」

そしてその騎士は机に広げられた王都の地図に丸をいくつか書き込んでいった。最後は男達が入った建物も。

「…何をしているのかはわからないが、怪しいことは間違いないな。これは明日騎士団で街を捜索にあたらせます。バレないようあくまでも巡回という体で。」

「そうだな。騎士団長、頼んだよ。」

「はっ。」

「私たちも後数日は王都に滞在します。何かあれば力になります。」

「ああ、心強い。宜しく頼みます。」


それで王宮での滞在を終えて宿へと戻った。
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