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21 ヴィンセント本気出す
しおりを挟む王宮に出かけた翌日。アーネストが宿を訪ねて来た。
「昨日騎士団から怪しい男が現れたと連絡が来ました。」
アーネストは体調の悪い兄ちゃんの為にしばらく騎士団を休んでいる。今回の情報が僕達からだったから、アーネストにも話が回って来たらしい。
「アーネストはアシェルについてやってほしい。何が起きるか分からないからな。こっちの事は俺たちに任せてくれ。」
「…わかりました義母上。ですが、力になれる事があれば言ってください。」
今は兄ちゃんも満足に動けない。悔しいけどアーネストに任せるしかない。
「…兄ちゃんの事、お願い。」
「ライリー…。任された。安心しろ。」
ふん。仕方なくだからな。
アーネストが帰った後、僕達は宿から動かずにいた。もし何かあったら連絡が来るはずだから。
「…通話の魔道具借りておくんだったな。」
「いつ連絡が来るかなんて分かりませんからね。」
ここでじっとしてなきゃいけないのがもどかしい。
「…僕ギルドに行って借りれるか聞いてくる。ギルドに確か2つ通話の魔道具が置いてあったはずだし。」
「…そうだな。その方がいいかも知れない。ライリー頼む。それから出来れば王宮の騎士団と連絡が取れるように伝えて欲しい。」
「了解。じゃあ行ってくる。」
「あ、私も行きます!魔力が視えるのは私だけです。もしかしたらまた何か発見できるかも知れません。」
ヴィンを連れてギルドへ向かった。
「ギルドマスターいる?」
ここに来るのも久しぶりだ。学園にいた時はたまに来てたけど辞めてからは1度も来ていない。
「お。ライリーじゃねぇか。久しぶりだな。どうした?」
良かった、居てくれた。ギルドマスターに事情を話そうとしたらヴィンが腕を引っ張った。
「? ヴィン?」
「すみません、ギルドマスター。ギルドマスター室に入れてくれませんか?……ここでは言えないんです。お願いします。」
「…わかった。こっちだ。」
急遽ギルドマスター室に入り、ヴィンが部屋の奥へと僕達を押し込む。
「ヴィン?」
「しっ。小声で話してください。…例の男がギルド内に居ました。聞かれる可能性があります。」
「っ!? …どんな格好してた?」
「おいおいおい、待ってくれ。俺には何の話かわからないんだが?」
そう言われてまだ事情を話していなかったことを思い出した。改めて説明すると魔道具を1つ借りる許可を貰えて、騎士団に連絡を入れる事を約束してくれた。
「ありがとう。助かる。」
「いや気にすんな。…それよりその怪しい男の特徴は?」
「今回はローブ姿ではありませんでした。黒髪で茶色の瞳の男です。背はライリーさんくらいでしょうか。」
「…あいつか。ここ最近ギルドに出入りし始めた冒険者だ。出身はクリステンになっていたが、偽造の可能性があるな。こっちも信用できる冒険者に話しておく。お前達も気をつけろよ。」
それから魔道具を1つ借りて僕達は宿へと戻ってきた。父さん達と合流して、ギルドにあの男が居たことを伝える。
「…冒険者になりすましていたのか。かなり入念に調べてる可能性が高いな。…お、魔道具が鳴った。はい、エレンです。」
『騎士団長のエイデンだ。ギルドマスターから話は聞いた。…今日こちらで捜索に当たったところ、ローブ姿の男は見当たらなかった。だがそのまましばらくは毎日捜索を続ける。』
「お願いします。こちらも何かわかれば連絡します。」
『それと誰かこちらへ来る事は出来るか?通話の魔道具をもう1つ持っていて欲しい。』
「僕が行きます。」
『ではライリー、明日来てくれ。よろしくな。』
そこで通話は切れた。
これで父さんと母さん、僕とヴィンで1つずつ魔道具を持つ事が出来る。
明日から僕達も動いて情報を集めることになった。
翌日ヴィンと共に王宮へと向かう。騎士団長から魔道具を預かりそのまま街へ出掛けることにした。
「くれぐれも気を付けてくれよ。相手の目的も何処の誰かも分かっていない。」
「そちらも。気を付けて。」
ローブの男達の目的が何なのか、まずそれが分かれば良いんだけどな。
とりあえずはぶらぶらと歩いていく。油断するつもりはないけどせっかくだから手を繋いでデートをする。
大通りだけじゃなくて、入り組んだ奥へと進んでいく。ここは平民街だ。貴族街と違って活気がある。
「…ん?」
そんな時急にヴィンが足を止めて、建物と建物の間の人が1人入れるくらいの細い通路に入って行った。
「…これ。ライリーさんこれ、あの男の魔力が視えます!」
「なんだって!? …これなんなんだ?すぐに騎士団長に連絡しよう。」
そこにあったのは丸い謎の物体。おそらく魔道具だと思われる。だけど何の魔道具かはわからない。
通話の魔道具で連絡を入れて、しばらくすると巡回していた騎士の2人が来てくれた。
「…これは爆発の魔道具!」
は!? 爆発の魔道具!?
「しかもここ、ローブの男の後を付けていた時に立ち寄った場所です。」
あの丸印付けてた場所かっ!確かにこの平民街を抜けていけばスラム街に行く。
「これやばくないか!? もしかして爆発の魔道具を仕掛ける為に下調べしていたんじゃっ!?」
「大変です!すぐに連絡を!」
通話の魔道具で騎士団長に連絡を入れる。すると直ぐに出てくれた。
『エイデンだ。どうした?』
「団長大変です!あの丸印の付いていた場所で爆発の魔道具が見つかりました!」
『なんだと!? 直ぐに回収しろ!他の場所も騎士達に向かわせる!』
「印がついていない場所にもあるかもしれません!私が探します!」
「ヴィン?」
「ライリーさん。魔道具に残った魔力を視られるのは私だけです。これが爆発したら大変なことになります。ですから一緒に探してくれませんか?」
「当たり前だ!団長、聞こえましたね?このままヴィンと一緒に探します。騎士を数人借りても良いですか?」
『勿論だ。すまない頼んだ。それから魔道具は見つけ次第魔力を遮断しろ。いいな!』
それから騎士数人と合流して街の捜索に当たった。
丸印の付いた場所以外を探す。
だが王都は広すぎる。ヴィンの目を頼りに走って探すにも限界がある。
「…ライリーさん、やってみたい事があります。」
「何?」
その言葉に返事を返す事はなく、ただじっと街を眺め出した。
「……やっぱり。ライリーさん学園へ!学園へ行きましょう!」
「え?」
なんで学園?と思ったが時間が惜しいと言われ学園へと向かう。その間に理由を聞くと、学園は街の中でも高い場所にある。そこから魔道具の場所を見つけるというのだ。
「先程自分の目に魔力を通してみたら、遠くのところも人の魔力を視る事が出来ました。あの澱んだ魔力を見つけて地図に印を付けていくんです。それを騎士の人達に探してもらいます。」
マジか。ヴィン凄いぞ!
途中で馬車を拾い学園へ向かう。その間に父さん達と
エイデンさんに連絡を入れる。
坂道を上がって学園の門へ。そこで騎士の持っていた地図を広げてヴィンが街を視ていく。
「……あった!ここと、ここ。……そしてここにも。」
どんどんとヴィンは地図に印を付けていく。
「…街を歩いた事はありませんでしたが、昔に読んだ本がここで役に立つとは思いませんでした。」
ヴィンが侯爵家に居た間、ずっと本を読んで過ごしていた。多種多様な本を読んでいてその中には王都の地図もあったらしい。
印を付けた場所を騎士が通話の魔道具で連絡を入れていく。
僕は父さん達に伝えて宿の付近を探してもらった。
その間もヴィンは地図に印を付けていく。するといきなりぐらりと傾いて倒れ込んだ。
「…ぐっ。」
「ヴィン!!」
顔色が真っ青で汗がたらたらと流れている。
「…大丈夫です。まだ大丈夫。」
こんなに体に負担が掛かってるなんて…。代われるなら代わってやりたい。でもこれはヴィンにしか出来ない事だ。任せるしかない。
それからもヴィンは目を使い続け印を付けていった。ある1つの印を付けると倒れ込んでしまった。その体を咄嗟に支える。
「…はぁ…はぁ……これで、おそらく、全部です。…まだ、残っている可能性もありますが…もう…。」
「ヴィン!もういい!十分だ!」
「…すみません、体に、力が、入りません。はぁ…はぁ…。」
ヴィンの金の目の色が薄くなっていた。この目が魔眼だったんだ。
こんな広い王都を全部見渡して、澱んだ魔力を見つけて、印を付けて。たった1人でやりきったんだ。
「……すみません、もう……。」
そう最後に呟いてくたりと力を失った。気を失ったようだ。
その細い体を抱きしめる。
ありがとうヴィン。辛いのに力を使ってくれて。今はゆっくり休んで。
効くかどうかわからないけど、ポーションを口移しで少し飲ませて宿へ戻った。
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