【完結】平民として慎ましやかに生きようとするあいつと僕の関係。〜平民シリーズ③ライリー編〜

華抹茶

文字の大きさ
23 / 34

22 怪しい男の目的は

しおりを挟む



宿へ戻ってしばらくすると父さん達も戻ってきた。

「ライリー、ヴィンセントの具合は?」

「…熱が出ててまだ意識が戻らない。とりあえず、ポーションは飲ませておいた。効くかはわからないけど。」

「そうか…。ありがとうヴィンセント。お疲れ様。」

母さんが寝ているヴィンの頭を優しく撫でる。

「今回はヴィンセントが居なかったらと思うと怖いですね。」

「そうだな。ヴィンセントの力が無かったら、王都のあちこちで爆発が起きていたかも知れない。」

そんな事になったらと考えるだけでゾッとする。こんな事を平気で出来る事を考えると、ガンドヴァが企んだ可能性が高い。


その後騎士団長から連絡が来て、ヴィンが見つけた場所全ての魔道具を回収したと教えられた。そしてそのままスラム街のローブの男達が入った建物を捜索したらしい。するとそこに屯っていた男達を捕縛。
今は尋問しているそうだ。

ギルドマスターも例の男を捕まえていたようで、騎士団へ預けたと教えてもらった。



そしてヴィンは3日、目を覚さなかった。その間僕はすごく怖かった。
熱は2日続いて、その間はポーションを口移しで飲ませていた。僕が出来るのは、汗を拭いてあげることと側にいることだけ。

3日目にやっとヴィンが目を覚ました時は嬉しくて泣いてしまった。

「ライリーさん、ご心配をお掛けして申し訳ありません。」

「ホントだよ…。どれだけ心配したと思ってる。」

「ヴィンセント、具合はどうだ?」

「ライアスさん達もすみませんでした。目以外は少しだるいだけで大丈夫です。右の目が痛むのと、それで今はよく見えないくらいです。」

色が薄くなった金の瞳。しばらくは目を使わないように眼帯を付けることになった。

それから2日程、ヴィンをゆっくり休ませてから王宮の宰相様の元へと向かった。


「…無理、してないか?」

「大丈夫です。体はもう回復しました。」

ヴィンの目は相変わらずあまり見えていないらしく、付けた眼帯が痛々しい。なのに笑顔で大丈夫だと言う。

「もし辛くなったりしたら遠慮せず言ってくれよ。」

「はい、エレンさん。ありがとうございます。」


王宮へ着くと騎士団長のエイデンさんが出迎えてくれて、そのまま宰相様の執務室へ向かう。

中はまた人払いがされていて、今回は魔法師団長の姿もあった。


「皆さんご足労いただきありがとうございます。ヴィンセント殿のおかげで、最悪の事態を防ぐ事が出来ました。貴方の献身に感謝します。」

宰相様、宰相補佐様、騎士団長に魔法師団長までもがヴィンに頭を下げた。

「あ、あのっ!頭を上げてください!私は出来る事をしただけです!そんな事をされると困ります!…えっと、あのっ…!」

あたふたするヴィンが可愛くて、その場は和やかな空気になった。


全員で席に着いて、あの後の報告を聞く。

「魔道具ですが爆発の魔道具で間違いありませんでした。私たちが見つけたあの日の翌日に、爆発するよう仕掛けられていたようです。」

魔法師団長は回収した魔道具を調べた結果を教えてくれた。見つかった魔道具は全部で38個。

「この数字はガンドヴァの守り神ドゥクサスに由来していると思われます。ドゥクサスは38人の子供がいるとされ、その子供達がガンドヴァの国全体を守っているという神話があります。
おそらく、38個の魔道具を爆発させドゥクサスの怒りを買ったと思わせるつもりだったのではないかと。」

「捕まえた男達はガンドヴァの人間だった。だが尋問にかけても口を割らずはっきりした事はまだ分かっていない。」

やっぱりガンドヴァだったのか。

「国境付近には兵士が集まっていたという報告はない。おそらくだが、今回の爆発で戦争を仕掛けるというよりは警告だったんじゃないかと予想している。」

「お前達の国はもうすぐガンドヴァの手に落ちるぞ、というね。」

「ドラゴンを倒すほどの人物がいると分かって、向こうもなりふり構っていられないのでしょうな。内部からじわじわと破壊活動をしようという魂胆でしょう。…国境警備が強化される前に入り込んでいたと考えるのが妥当でしょうか。」

なるほどな。なんでそんなに簡単にガンドヴァの人間が入り込んでいたのか不思議だったけど、そういう事か。

「ですが偽造した身分証で入り込む事は可能です。その辺りも対策を練り直す必要がありますね。」

今後の大きな課題として取り組んでいく、とこの件に関しての報告は終わった。

「しかし今回の件についても、通話の魔道具のおかげで迅速な対応が取れました。改めて御礼を申し上げます。」

通話の魔道具が無かったら、全ての爆発を防ぐ事は難しかったかもしれない。これを作った兄ちゃんが改めて凄いと思った。


「ところで…。」と宰相様がヴィンに視線をよこした。

「ヴィンセント殿、ぜひ私の部下として働いていただけませんか?」

「え?」

なんと宰相様からスカウトされてしまった。

「実は貴方のことを少し調べさせてもらった。トルバート家の長男で貴族学園文官科の満点合格者。授業の成績も大変よく頭脳明晰だと。…ただその目の色でトルバート家から勘当され平民となった。」

「……。」

「責めている訳ではないよ。貴方のその目の力と素晴らしい頭脳。私に貸していただけないかと思って。今回の件も貴方の機転により迅速に動く事が出来た。そんな優秀な方を是非部下として招きたいのだがどうだろうか。」

「…私の目はまた魔力が視えるかはわかりません。お力になれるかもわかりません。」

視力すら今は低下してしまってる状態だ。元に戻る保証はない。なんせヴィンのような目の事についてどこにも記述が無いのだから。わからない事だらけだ。

「もし目の力が戻らなくてもいいのだ。貴方のその頭脳だけでも大変価値のあるもの。ぜひ力を貸して頂きたい。」

「ライリーさん…。」

どうしていいかわからないんだよな。宰相様直々に誘われてるんだし。

「…ヴィンはどうしたい?ここで働きたい?」

「……私で力になれるのなら働きたいと思います。ですが…。」

不安な顔で僕の手をきゅって握ってきた。

「言いたい事は言っていいよ。どうしたの?」

「……あの…ライリーさんと…離れたく、なくて…。」

ぐふっ!

可愛い!!なにこの生き物!!可愛い!!

堪らなくなって抱きしめてしまった。

「はっはっは!これはこれはなんと可愛らしい。ライリー殿と恋人でしたな。ではライリー殿もこちらで働けばよろしい。騎士団所属として、ヴィンセント殿の専属護衛で。」

え?専属護衛?

「正直言うと、ヴィンセント殿の力は他国も喉から手が出るほど欲しいもの。万が一バレた時は非常に危険だ。今はまだ隠せているが人の口に戸はたたない。いつか秘密が漏れるだろう。
だがライリー殿が側にいれば簡単には手は出せない。王宮にいる事はヴィンセント殿を守る事にもなる。…絶対安全とは言えないが、他の場所にいるよりかは安全性は高くなる。」

…そうか。今回の事で騎士にもヴィンの目の事はバレている。どこで秘密が漏れるかなんてわからない。

「だから専属護衛としてライリー殿を付けることは可能だ。それにライリー殿の方がヴィンセント殿も安心だろう。」

「それなら僕はヴィンの側にいます。いさせて下さい。」

僕だってヴィンの側から離れたくない。いずれは結婚だってしたいと思ってる。

ヴィンのしたい事もさせてあげられるし、ヴィンを守る事も出来る。ならこの話を断る理由はない。


「ただ1つお願いがある。貴族学園へもう一度入り卒業してほしい。」

「どういう事でしょうか。」


僕は既に『ドラゴン討伐の英雄』となっているから、このまま騎士団に入る事は問題ない。実績があるから。

でもヴィンの場合は、今回の事を大々的に公表する事は出来ない。目の秘密を明かさなければならなくなるからだ。だから貴族学園を卒業して、正規で宰相様の所に就職する必要がある。

流石になんの学歴もない人間を雇う事は出来ない。


「もうすぐ新学期が始まる。そのタイミングで3学年生として編入し卒業してほしい。…いいかい?」

「…わかりました。」

「じゃあ、後ろ盾は俺たちがなろう。俺たちでも問題ないですよね?宰相様。」

平民となったヴィンが学園に入るには貴族の後ろ盾が必要だ。僕達も一代限りの騎士爵とは言え、一応は貴族だ。

「問題ありませんよ。それで手続きしましょう。」

「あの、それなら僕ももう1度学園に入ります。」

「ライリーさん?」

「じゃなかったらヴィンと離れ離れになるから。僕もそんなのは嫌だ。」

「はっはっは!若いというのは羨ましい。ではその方向で手続き致しましょう。」


もう学園に行く事はないと思っていたのに、こんな形で戻るなんて思わなかった。

でもヴィンはもうあの時のヴィンじゃない。今度はきっと楽しい学園生活が送れるはずだ。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

贖罪公爵長男とのんきな俺

侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。 貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。 一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。 そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。   ・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め ・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。 ・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。 ・CP固定・ご都合主義・ハピエン ・他サイト掲載予定あり

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)

ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。 僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。 隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。 僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。 でも、実はこれには訳がある。 知らないのは、アイルだけ………。 さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

処理中です...