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23 学園に戻れば

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編入手続きをして僕とヴィンはもう1度学園へ入る事になった。簡単な試験もあったけど、もちろん問題はなかった。

僕がまた通う事になった時は担任に泣いて喜ばれた。…別にアンタの為に戻ってきたんじゃないんだけど。


僕の寮の部屋は以前のままだった。ヴィンの部屋も同じ平民部屋。でもヴィンを平民部屋で過ごさせるつもりは無い。僕の部屋に住まわせる。

だって無駄に広い部屋で僕1人なんて勿体無いし、ヴィンと少しでも一緒にいたいからそうさせた。

学園側から何か言われても無視するつもりだ。

「ライリーさん、それはちょっと良くないのでは?」

ヴィンは真面目だからそれはダメだろうと。

「僕と離れてもいいの?ヴィンは寂しくないの?」

「…そんな言い方ずるいです。」

ごめんね。だって僕が離れたくないから仕方ないよね。


でもヴィンはこうやってはっきり自分の意見を言うようになった。それが本当に嬉しいと思う。どんな学園生活になるかな。楽しみだ。

あ。でもヴィンの魅力に気づいて変なやつが群がってきそうでそれは嫌だ。


うん。僕がちゃんと側にいて目を光らせておこう。



王都での一件から1ヶ月。ヴィンの目は元に戻った。視力だけじゃなくて魔力が視えるのも。色も綺麗な金色にちゃんと戻ってくれた。

「もうあんな無茶な事しないでよ。…あんな事もそうそうないとは思うけど。」

「はい。心配かけさせたくないので無理はしません。」



「今日からまた学園生活が始まるけど、ご飯は絶対一緒に取るから。あと何かあったら絶対僕に言って。」

心配でそう言うとヴィンがくすくすと笑い出した。
なんか面白い事言った覚えはないんだけど??

「なんだか初めの頃を思い出して。同じ事を言われたなぁと。」

あ。確かに。言ったね僕。

「『友達としてのお願い』でしたね。」

「…今は『恋人としてのお願い』。」

「はい。わかりました。」


寮を出てそれぞれの棟へ向かう。ヴィンは笑顔で手を振ってくれた。

お昼の時にでもどうだったかちゃんと聞こう。


教室へ入ると一斉にクラスメイトが群がってきた。

「ライリー様!お帰りなさいませ!」

「お会いしたかったです!」

「是非今日のランチご一緒させてください!」

「おい!俺がライリー様と一緒にランチするんだ!お前は退いてろ!」

「はぁ!?お前こそ引っ込んでろよ!」


うるさい。なんなのお前たち。本当にウザい。


全員無視して自分の席に座る。それでもしつこくしてくるから流石にキレた。

「ねぇ!…静かにしてくれる?僕はもう予約済みなの。ランチはその人と取るから君達とは一緒に取る事はないよ。諦めて。」

そう言うと「えええ!? なんでですかっ!」とまたうるさくなった。…戻ってくるの失敗だったかな。
でもヴィンを1人で学園に戻すなんて出来ないし我慢我慢。

はぁ…。ヴィンに会って癒されたい。


午前の授業が終わって僕はすぐに食堂へ向かった。クラスメイトに巻き込まれるなんて嫌だし早くヴィンに会いたいし。


食堂でしばらく待っていたらヴィンの姿が見えた。

「ヴィン!」

「ライリーさん。お待たせしてしまいましたね。すみません。」

ああ癒される。ヴィンが可愛くて抱きしめた。
すると「きゃぁぁぁ!」だの「うわぁぁぁ!」だの一気にうるさくなった。

何、何かあったの??

と周りを見れば皆僕達を見ていた。何、ヴィンに抱きついたのがそんなに騒ぐ事なの?

……ふぅん。なら。


「ヴィン。愛してるよ。」

そう言ってヴィンにキスをした。

ヴィンは僕のだってちゃんと伝えなきゃね。皆僕達を見てるんなら丁度いい。

すると「きゃぁぁぁ!」とか「うわぁぁぁぁ!」とかまた凄い騒ぎになった。

その騒ぎを無視してヴィンと手を繋いでランチを取る。

ヴィンてば真っ赤になって可愛いなぁ。


「おい!ライリー!お前やりすぎだろ!」

「アーロン久しぶり!」

あの騒ぎで僕達を見つけたアーロンが近寄ってきた。

「あのなぁ。確かにお前の苦労も分かるし、恋人が可愛くて仕方ないってのも分かった。分かったけどこんな公衆の面前でキスとか!恥ずかしくないのか!?」

「なんで?可愛いヴィンを愛でてるだけだし。ね、ヴィン。」

「……いえ、あの。なるべくならやめて頂けると…。」

がーん!! ヴィンに拒否された…。

「そりゃそうだろう。ヴィンセントが可哀想だ。ヴィンセント、コイツの事で嫌な事があったら俺に言って。叱っとくから。」

「はぁ!? ヴィンは僕のだ!」

「誰も取ろうとなんかしてねぇよ!俺には大事な婚約者がいるから安心しろ!……本当にお前、変わりすぎだろ。」

本当かな?コイツもヴィンの魅力にやられてないだろうな?不安になってヴィンをぎゅっと抱きしめる。絶対誰にもやらないからな!!

「だーかーらー!ヴィンセントが恥ずかしがって可哀想だからやめろっ!」

「なんでお前がヴィンの事知ってるみたいに言うんだよ!ヴィンは僕の!」

「ぷはっ!あははははは!」

「「あ。」」

ヴィンにめちゃくちゃ笑われた。あーもう!そんな可愛い顔他に見せちゃダメだってば!

隠すようにしてヴィンを腕の中に囲った。それでもヴィンはくすくすと笑いが止まらないようで笑い続けてた。

「くすくす。ライリーさん、大丈夫です。私もライリーさんだけですから。何処にも行きません。」

うぐっ!可愛すぎてツラいっ!

堪らなくなってまたヴィンにキスをしてしまった。そしたらアーロンに頭を叩かれた。

「だからっ!やめろって言ってんだろ!いい加減にしろっ!」

そしてまたヴィンがくすくす笑って。


楽しいねヴィン。今度は楽しい学園生活が送れるよ。卒業まで一緒に楽しもうね。



食事をしながら午前の授業がどうだったかを聞いた。

「そうですね。今までと変わりありませんでした。遠巻きにされてる感じです。ですので静かに過ごすことが出来ました。」

なんて事ないように言うヴィン。ま、そんな簡単には周りの目は変わらないか。…変わってほしいと思うけど、それと同時にヴィンの魅力に気づいてほしくないから変わってほしくないとも思ってしまう。

僕って心の狭い人間だよなぁ。


「でも午後からは変わるだろうな。…ここでこんな事やったんだから。」

「…かもしれません。その時はその時です。」

「心配だな…。僕もついて行こうかな。」

「やめとけ。ヴィンセントはしっかりしてるから大丈夫だろ。」

「なんでお前がヴィンの事知ってるみたいに言うんだよ!」

「……またこれかよ。もうヤダ…。」


アーロンの奴、要注意だな。


それから午後の授業を受ける為に教室へ戻った。

「ライリー様!あの文官科の人との関係はなんなんですか!?」

またかよ…。

「ヴィンの事?ヴィンは僕の恋人。いずれ結婚する予定。だからもう僕には構わないでよ。わかった?」

結婚したいなんてまだ言ってないけどこう言っとかないと。もうめんどくさいのは嫌だし。

するとまた「うわぁぁぁぁ!!」と叫び出した。


うるさい!コイツら叫ばないと生きていけない生き物なのか!?



……あぁ、早くヴィンに会って癒されたい。
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