25 / 34
24 ヴィンセントside
しおりを挟む私の目が役に立って。王都での事件が防げて。宰相様に部下になって欲しいと言っていただけて。
そして学園に戻ってきた。
あの婚約破棄から私の人生は大きく変わった。
ライリーさんと出会って、恋人にまでなって。
幸せすぎて死にそう。だなんてどこかの恋愛小説の一節のようだ。まさか自分の身にこんな事が起こるなんて。
でも正直言えば学園に戻ってくるのは怖かった。良い思い出なんて一つもない。またあの視線に晒されるのかと思うと足がすくむ。
でも私はもう1人じゃない。ライリーさんがいる。私の愛しい人。
だから大丈夫。
寮の部屋からライリーさんと別れて自分の教室へ。
ここに来るのも久しぶりだ。
教室へ入ると、クラスメイトは一斉に私を見る。
何故ここに?辞めたはずじゃ?そんな事を思っているのだろう。
ここに来ると、ライリーさんと会う前の記憶が鮮明に蘇る。
私の目の色が気味が悪い、不幸を呼ぶ、無表情で何を考えているかわからない。
ああ、少し体が震えている。私は怖いのだ。
でも。
ヴィンセントの目は綺麗だね。とても良い目をしている。神秘的だ。
あの方達は皆褒めてくださった。そう、大丈夫。
もう怖くない。
そう思ったら体の震えは止まった。うん、大丈夫。
それから午前の授業を終えて食堂へ向かう。ライリーさんに会える。そう思うだけで私の口角は上がる。
「ヴィン!」
食堂へ着けば、ライリーさんが満面の笑顔で出迎えてくれた。と思ったらいきなり抱きしめられる。
あのライリーさんが、嫌われ者の私を抱きしめた事で一気に周りが騒がしくなる。皆さんはどういう事かと思っているだろう。私だってライリーさんと恋人だなんて未だに夢かと思う。
何を思ったのか、
「ヴィン。愛してるよ。」
そう言ったかと思った瞬間、皆が見ている前でキスをされた。
な、な、なっ!?
すると「きゃぁぁぁ!」とか「うわぁぁぁぁ!」などと叫び声が上がった。
その気持ち、同意します。声が出なかっただけで同じ気持ちです。
ライリーさんは見られる事をなんとも思わないらしく人前で抱きしめたりキスをしたりする。
そうされるのは嬉しい反面、やはり恥ずかしさが勝りどうしようもなくなる。
出来れば人前では遠慮したい。私の心臓が持たない。
周りがどんなに騒がしくともライリーさんは知らん顔。手を繋がれてランチを取る為に席に腰掛ける。
すると久しぶりにアーロン様がお見えになった。
「おい!ライリー!お前やりすぎだろ!」
ですよね。そう思います。代弁していただきありがとうございます。
「あのなぁ。確かにお前の苦労も分かるし、恋人が可愛くて仕方ないってのも分かった。分かったけどこんな公衆の面前でキスとか!恥ずかしくないのか!?」
「なんで?可愛いヴィンを愛でてるだけだし。ね、ヴィン。」
「……いえ、あの。なるべくならやめて頂けると…。」
正直に言ったらライリーさんが青ざめた。
「そりゃそうだろう。ヴィンセントが可哀想だ。ヴィンセント、コイツの事で嫌な事があったら俺に言って。叱っとくから。」
「はぁ!? ヴィンは僕のだ!」
「誰も取ろうとなんかしてねぇよ!俺には大事な婚約者がいるから安心しろ!……本当にお前、変わりすぎだろ。」
またライリーさんに抱きしめられる。
「だーかーらー!ヴィンセントが恥ずかしがって可哀想だからやめろっ!」
「なんでお前がヴィンの事知ってるみたいに言うんだよ!ヴィンは僕の!」
「ぷはっ!あははははは!」
「「あ。」」
可笑しい。何て良いコンビなんだろうか。ライリーさんはたった1人の親友と仰っていたけれどその関係がよく分かる親密さだ。
2人のやりとりが面白くて笑いが止まらない。
私が学園でこんな風に声を上げて笑えるなんて。
「くすくす。ライリーさん、大丈夫です。私もライリーさんだけですから。何処にも行きません。」
そう言うと破顔してまたキスをされてしまった。
と思ったらアーロン様に頭を叩かれていた。
「だからっ!やめろって言ってんだろ!いい加減にしろっ!」
あーダメだ。可笑しすぎる。
楽しい。なんて楽しいんだろう。数ヶ月前は感情なんて分からなかったのに、ライリーさんの側は楽しい事で溢れている。
なんて幸せなんだろう。
食事を取っていると、午前の授業はどうだったか聞かれた。
「そうですね。今までと変わりありませんでした。遠巻きにされてる感じです。ですので静かに過ごすことが出来ました。」
ライリーさんはクラスメイトに言い寄られてうんざりだと仰っていた。それはそれで大変だろう。
その分私は変わらず静かに過ごせた。でもそれが悲しいという事はなかった。初めは怖かったけど、ライリーさんやライアスさん達、皆の事を思い出したらなんて事なかった。
「でも午後からは変わるだろうな。…ここでこんな事やったんだから。」
「…かもしれません。その時はその時です。」
「心配だな…。僕もついて行こうかな。」
「やめとけ。ヴィンはしっかりしてるから大丈夫だろ。」
「なんでお前がヴィンの事知ってるみたいに言うんだよ!」
「……またこれかよ。もうヤダ…。」
くすくすくす。本当に仲が良くて嫉妬してしまいそうなくらい。とてもいいご友人だ。
昼食後は別れて教室へと戻る。
「あのトルバート様…。」
初めてクラスメイトから声をかけられた。
「私はもうトルバート家の人間ではありません。ただのヴィンセントです。そうお呼びください。」
「では、ヴィンセント、さん。ライリー・フィンバー様とは、その、どういったご関係、で?」
食堂での事が気になったのだろう。私に近寄ろうともしなかった人が好奇心には勝てなかったようだ。
「私はライリー様の恋人となりました。」
「はぁ!? 恋人!?」
一気に教室内が騒がしくなる。まさか『嫌われ者』の私が、あの『人気者』のライリー様の恋人。信じられないだろう。
「嘘をつくなっ!お前のような気持ち悪い奴が!ライリー様と恋人だなんて!」
別の方が大きな声でそう仰った。
「そうだ!きっと何か惚れ薬のような物でも使ったんだろう!そうじゃなかったらおかしい!」
また別の方もそう仰る。
「嘘はついておりません。食堂での事ご覧になりましたか?あれが全てです。」
私からは何もしていない。ライリーさんからされた事だ。
「お前っ!どんな手を使ったんだ!?」
「何も。私は何もしておりません。」
「そんなわけっ…!お前が何かしたんだ!そうだろう!?」
「貴方は私の何をご存知なのですか?目の色だけで決めつけて。私の目は『個性の一つ』です。これが私です。
…貴方はきっと今までそうやって他人の見た目だけでその人を決めつけていたんでしょうね。『その人そのもの』を見た事はありますか?私に好意を持つ事はしなくても結構です。ですがもう、そういう見方はやめられた方がよろしいかと思います。」
「っ!? 生意気だろっ!?」
激情したその方は私を殴ろうと手を上げられた。殴られるっ!と思ったけれどその手が降ろされる事はなかった。
「やめろっ!…ヴィンセントが言ったことは間違ってない。俺達が間違っていたんだ。もう、やめよう。」
止められたこの方は魔力の綺麗な方だ。今まで私に何かを言ったこともないけれど、助けてくれるような事もなかった方だ。
「くそっ!」
激情した方はそのまま自分の席に戻られた。
「…ヴィンセント、今まですまなかった。俺も皆と同じだ。君を助ける事もせずただ見ていただけ。本当にすまなかった。」
謝られた。ライリーさん達以外で、初めて謝られた。
「…いいえ。助けていただいてありがとうございました。助かりました。」
「俺はオーブリー・ネザーソール。できれば友人になりたいと思っている。…さっきもカッコ良かった。以前と違ってハッキリと人の目を見て意見を言って。ライリー様のお陰で変わったんだな。凄いよ。」
友人に、なりたい? カッコいい? すごい?
まさか学園でこう言われるなんて…。
あと1年で卒業する。でもこの1年は今までと違った学園生活が送れるかもしれない。
私は少し『ワクワク』した。
163
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
贖罪公爵長男とのんきな俺
侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。
貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。
一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。
そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。
・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め
・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。
・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。
・CP固定・ご都合主義・ハピエン
・他サイト掲載予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる