【完結】平民として慎ましやかに生きようとするあいつと僕の関係。〜平民シリーズ③ライリー編〜

華抹茶

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24 ヴィンセントside

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私の目が役に立って。王都での事件が防げて。宰相様に部下になって欲しいと言っていただけて。

そして学園に戻ってきた。


あの婚約破棄から私の人生は大きく変わった。


ライリーさんと出会って、恋人にまでなって。
幸せすぎて死にそう。だなんてどこかの恋愛小説の一節のようだ。まさか自分の身にこんな事が起こるなんて。


でも正直言えば学園に戻ってくるのは怖かった。良い思い出なんて一つもない。またあの視線に晒されるのかと思うと足がすくむ。

でも私はもう1人じゃない。ライリーさんがいる。私の愛しい人。

だから大丈夫。


寮の部屋からライリーさんと別れて自分の教室へ。
ここに来るのも久しぶりだ。

教室へ入ると、クラスメイトは一斉に私を見る。


何故ここに?辞めたはずじゃ?そんな事を思っているのだろう。


ここに来ると、ライリーさんと会う前の記憶が鮮明に蘇る。

私の目の色が気味が悪い、不幸を呼ぶ、無表情で何を考えているかわからない。


ああ、少し体が震えている。私は怖いのだ。


でも。


ヴィンセントの目は綺麗だね。とても良い目をしている。神秘的だ。

あの方達は皆褒めてくださった。そう、大丈夫。

もう怖くない。


そう思ったら体の震えは止まった。うん、大丈夫。


それから午前の授業を終えて食堂へ向かう。ライリーさんに会える。そう思うだけで私の口角は上がる。

「ヴィン!」

食堂へ着けば、ライリーさんが満面の笑顔で出迎えてくれた。と思ったらいきなり抱きしめられる。

あのライリーさんが、嫌われ者の私を抱きしめた事で一気に周りが騒がしくなる。皆さんはどういう事かと思っているだろう。私だってライリーさんと恋人だなんて未だに夢かと思う。

何を思ったのか、

「ヴィン。愛してるよ。」

そう言ったかと思った瞬間、皆が見ている前でキスをされた。

な、な、なっ!?

すると「きゃぁぁぁ!」とか「うわぁぁぁぁ!」などと叫び声が上がった。

その気持ち、同意します。声が出なかっただけで同じ気持ちです。

ライリーさんは見られる事をなんとも思わないらしく人前で抱きしめたりキスをしたりする。

そうされるのは嬉しい反面、やはり恥ずかしさが勝りどうしようもなくなる。
出来れば人前では遠慮したい。私の心臓が持たない。

周りがどんなに騒がしくともライリーさんは知らん顔。手を繋がれてランチを取る為に席に腰掛ける。

すると久しぶりにアーロン様がお見えになった。

「おい!ライリー!お前やりすぎだろ!」

ですよね。そう思います。代弁していただきありがとうございます。

「あのなぁ。確かにお前の苦労も分かるし、恋人が可愛くて仕方ないってのも分かった。分かったけどこんな公衆の面前でキスとか!恥ずかしくないのか!?」

「なんで?可愛いヴィンを愛でてるだけだし。ね、ヴィン。」

「……いえ、あの。なるべくならやめて頂けると…。」

正直に言ったらライリーさんが青ざめた。

「そりゃそうだろう。ヴィンセントが可哀想だ。ヴィンセント、コイツの事で嫌な事があったら俺に言って。叱っとくから。」

「はぁ!? ヴィンは僕のだ!」

「誰も取ろうとなんかしてねぇよ!俺には大事な婚約者がいるから安心しろ!……本当にお前、変わりすぎだろ。」

またライリーさんに抱きしめられる。

「だーかーらー!ヴィンセントが恥ずかしがって可哀想だからやめろっ!」

「なんでお前がヴィンの事知ってるみたいに言うんだよ!ヴィンは僕の!」

「ぷはっ!あははははは!」

「「あ。」」

可笑しい。何て良いコンビなんだろうか。ライリーさんはたった1人の親友と仰っていたけれどその関係がよく分かる親密さだ。

2人のやりとりが面白くて笑いが止まらない。

私が学園でこんな風に声を上げて笑えるなんて。

「くすくす。ライリーさん、大丈夫です。私もライリーさんだけですから。何処にも行きません。」

そう言うと破顔してまたキスをされてしまった。
と思ったらアーロン様に頭を叩かれていた。

「だからっ!やめろって言ってんだろ!いい加減にしろっ!」

あーダメだ。可笑しすぎる。

楽しい。なんて楽しいんだろう。数ヶ月前は感情なんて分からなかったのに、ライリーさんの側は楽しい事で溢れている。

なんて幸せなんだろう。



食事を取っていると、午前の授業はどうだったか聞かれた。

「そうですね。今までと変わりありませんでした。遠巻きにされてる感じです。ですので静かに過ごすことが出来ました。」

ライリーさんはクラスメイトに言い寄られてうんざりだと仰っていた。それはそれで大変だろう。

その分私は変わらず静かに過ごせた。でもそれが悲しいという事はなかった。初めは怖かったけど、ライリーさんやライアスさん達、皆の事を思い出したらなんて事なかった。


「でも午後からは変わるだろうな。…ここでこんな事やったんだから。」

「…かもしれません。その時はその時です。」

「心配だな…。僕もついて行こうかな。」

「やめとけ。ヴィンはしっかりしてるから大丈夫だろ。」

「なんでお前がヴィンの事知ってるみたいに言うんだよ!」

「……またこれかよ。もうヤダ…。」


くすくすくす。本当に仲が良くて嫉妬してしまいそうなくらい。とてもいいご友人だ。



昼食後は別れて教室へと戻る。

「あのトルバート様…。」

初めてクラスメイトから声をかけられた。

「私はもうトルバート家の人間ではありません。ただのヴィンセントです。そうお呼びください。」

「では、ヴィンセント、さん。ライリー・フィンバー様とは、その、どういったご関係、で?」

食堂での事が気になったのだろう。私に近寄ろうともしなかった人が好奇心には勝てなかったようだ。

「私はライリー様の恋人となりました。」

「はぁ!? 恋人!?」

一気に教室内が騒がしくなる。まさか『嫌われ者』の私が、あの『人気者』のライリー様の恋人。信じられないだろう。

「嘘をつくなっ!お前のような気持ち悪い奴が!ライリー様と恋人だなんて!」

別の方が大きな声でそう仰った。

「そうだ!きっと何か惚れ薬のような物でも使ったんだろう!そうじゃなかったらおかしい!」

また別の方もそう仰る。

「嘘はついておりません。食堂での事ご覧になりましたか?あれが全てです。」

私からは何もしていない。ライリーさんからされた事だ。

「お前っ!どんな手を使ったんだ!?」

「何も。私は何もしておりません。」

「そんなわけっ…!お前が何かしたんだ!そうだろう!?」

「貴方は私の何をご存知なのですか?目の色だけで決めつけて。私の目は『個性の一つ』です。これが私です。
…貴方はきっと今までそうやって他人の見た目だけでその人を決めつけていたんでしょうね。『その人そのもの』を見た事はありますか?私に好意を持つ事はしなくても結構です。ですがもう、そういう見方はやめられた方がよろしいかと思います。」

「っ!? 生意気だろっ!?」

激情したその方は私を殴ろうと手を上げられた。殴られるっ!と思ったけれどその手が降ろされる事はなかった。

「やめろっ!…ヴィンセントが言ったことは間違ってない。俺達が間違っていたんだ。もう、やめよう。」

止められたこの方は魔力の綺麗な方だ。今まで私に何かを言ったこともないけれど、助けてくれるような事もなかった方だ。

「くそっ!」

激情した方はそのまま自分の席に戻られた。

「…ヴィンセント、今まですまなかった。俺も皆と同じだ。君を助ける事もせずただ見ていただけ。本当にすまなかった。」

謝られた。ライリーさん達以外で、初めて謝られた。

「…いいえ。助けていただいてありがとうございました。助かりました。」

「俺はオーブリー・ネザーソール。できれば友人になりたいと思っている。…さっきもカッコ良かった。以前と違ってハッキリと人の目を見て意見を言って。ライリー様のお陰で変わったんだな。凄いよ。」

友人に、なりたい? カッコいい? すごい?

まさか学園でこう言われるなんて…。


あと1年で卒業する。でもこの1年は今までと違った学園生活が送れるかもしれない。

私は少し『ワクワク』した。
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