現役魔王が冒険者 ~最強の力で運命と戦う~

天々

文字の大きさ
10 / 16
世界冒険編/第一章

第九話 S級魔獣

しおりを挟む

「それじゃ…行ってくるね…!」

「あぁ、せめて勝ってこいよ」

と言いルルを送り出したディル。

あいてはA級7位のノルモフ・バロホウ。一見ただの太ったおじさんに見えるが、A級7位ともなるとさすがに魔力量が多いな。あれはルルの2倍か3倍はあるぞ。…で、あいつも至高術式オーソリティクションもちか…。少し厄介だな。

「はじめっっっ…!!!」

その声とともに、ルルが捉えていたノルモフの姿は、いつしか残像となり、その0.1秒も立たぬうちに、ルルの視界はノルモフの拳でいっぱいであった。

「…っ!」

一般の人から見るとまさに神業と言っていいだろう。目で追えぬその攻撃をなんとルルは交したのである。そして避けると同時にルルは反撃を開始する。

「豪華水天…っ!『氷雲』…!」

右手をノルモフの顔に被せると、ルルは魔法を唱えた。その魔法は、ノルモフの顔周辺の空気を冷気に変えたあと、氷に変えた。

「…っ!!」

これは想像以上だ!ルル・ヘイドシッタ面白い…!わしの打撃をかわし反撃までしてくるとは…っ!

─だが。

決闘場のアリーナ全域に及ぶほどの、大きな炎が現れた。

「豪華炎天…『爆刹』…」

爆風によりルルも容易く吹き飛んだ。

選手控え席で、ルルとノルモフの決闘を見るディル。

豪華天か…。一般人からすれば強い魔法だな。習得していたとはいえ、意外と精度いいなルル。これなら豪華天の上位種も習得できるかもな。しかし対戦相手のノルモフも習得者か…。

豪華天。一般の魔法とは違い、豪華天という魔法の中に、数多の魔法が込められており、自身の実力で扱える魔法が自在に使えるというものである。しかし、強さや精度、回数は個人の魔力にも反映したりと、一筋縄にはいかない魔法である。

「同じシリーズだとはいえ、明らかなる差。どう足掻いても足らぬ力だっ…!」

ルルに近づき腹部にアッパーを決め、今度は上に吹き飛んだ。

「弱い弱い」

一気に上昇し、トドメを刺そうとするノルモフ。

「豪華炎天『炎撃』!」

拳に炎が待とう。

おわりだな。ルル・ヘイドシッタ─っ…!?

「騎士道…!ヘイドシッタ流至高式!必激デウス!」

ルルはノルモフの首を狙った。咄嗟に防御魔法を唱えるもそれは不発。

「っ!爆砕剣!」

アリーナ上空で大爆発が起こり煙からは一人の人間が落ちてくる。

ノルモフだ。

地面にぶつかりノルモフは動かない。

「ノルモフ戦闘不能。よってルル・ヘイドシッタの勝利…!」

「うぉぉぉぉおおお!!」

よ、よかった…これでA級7位!

「よくやったなルル。ほぼ一流だよ」

「ほぼって…!そこは一流でいいじゃん!」



そして冒険者協会本部。

「決闘勝敗により、貴官をA級7位に任命する!」

「あ、ありがとうございます!」

任命式が終わったその時。

「アンベル課長!た、大変です…っ!」

切羽詰まったように扉を開け室内に入ってくる協会の人。

「なんだ!任命式中だぞ!すまぬなルル殿」

「い、いえ…」

「それで?なんでそんなに急いで」

「…っS級魔獣がベータンスレイ王国とフレイ王国の両国国境沿いに出現しましたっっ!!」

その言葉を聞いた瞬間場にいた全ての者の顔が凍った。

S級魔獣。それは数百万いると言われる魔獣の中で16体しか確認されていない最強の魔獣である。魔獣の強さを図るMマグリティードは8.0~8.9でありA級魔獣の32倍の力を持つ。

「Mはなんだ!」

「Mは8.8です…」

「なんということだ…。これは一大事だ…A級冒険者ルルよ。今すぐそこに向かってはくれんか…。あぁあと、君とよくいる冒険者。君と絡んでるからには同じA級と見た。歯が立たないかもだが、質より量だ。その冒険者にも伝えといてくれ。じゃあ頼んだぞ、、」

アンベルはG級ともあるディルのことを知らないようだ。

「は、はい」



「え?なんだよそれ。面倒くさそ」

通信魔法で会話するルルとディル。

「お願いだってー、協会のお偉いさんが言ってるんだよー?」

「んなもん知らんよ。報酬出んの??」

「でるでる、多分だけど、、」

「まぁ出なかったら辞めるだけ。いいよ、後で行ってあげる」

ディルはなにか企みがあるようだ。

「ほんと!?じゃあ私は先行ってるね!」

「あぁ」



フレイ王国側国境沿い。

「絶対に王都方面に行かせるなー!」

全長数百メートルのS級魔獣、因果蘇化イオ・カリテストルはベータンスレイ王国からフレイ王国王都方面へと進行していた。

フレイ王国軍の兵士達が、魔法を放ち近づかせないようにしている。

「バロー隊長!全く歯が立ちません!!」

「くそっ!冒険者の到着はまだか!」

とその時、

「ただいま到着!S級9位ランド・ハウゲン参上!」

「おぉ、やっと来たか!君は第二のほうか?」

「はい!第二冒険者機構S級9位におまかせあれ!」

世界には複数の冒険者組織があり、ディル達が所属している広域冒険者協会、ランドが所属している第二冒険者機構、そして大冒険者連盟がある。

そして1番強い冒険者組織は協会と言われている。

「行ってこい!」

バローは、相当ランドに期待しているようだ。

「はぁぁぁぁあああ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

処理中です...