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世界冒険編/第一章
第十話 破滅的強者
しおりを挟む「はぁぁぁあああ!」
ランドが、因果蘇化(以下イオ)に攻撃を開始した。
ランド・ハウゲンの攻撃手法は主に打撃である。打撃に魔法を乗せ自身の力を数倍強くするものである。
ランドの攻撃をくらいイオの動きは少し遅くなった。
「おらおら!さっきの勢いはどうした!!」
ランドの攻撃はイオを圧倒する。
─しかし。
「ぐぉっ…!?」
イオの体から現れた触手がランドの腹部を貫いた。
「っ!超絶再生!!」
貫通している部分の触手を取り込み傷口が塞がっていく。
「そんなの聞かないぜぇ!」
足の部分を攻撃していたが一気に上昇し顔を狙うランド。
「くらいやがれぇ…っ!!」
拳に全ての魔力を込め、攻撃をしようとする時、イオの口が開く。
口の奥底からは光が溢れ出し、ランドに向かって放たれ、ランド姿は見えなくなった。
「なっ、何が起きた!?」
バロー隊長は動揺を隠せない。
数秒後、地面に何かが落ちてきた。
ランドである。
構えていた右腕は欠損し、全身は焼け焦げていた。
「第二隊構えー!」
少し遠くから25名の冒険者が遠距離魔法を放とうと準備していた。全員第二冒険者機構所属である。
S級魔獣討伐第二隊、指揮官はS級17位クリンレッジ・バロウ。フレイ王国の貴族でもある。そして隊員は全員A級と強力な部隊である。
「放て…!!」
計25人の魔法は圧巻である。S級とA級の練度は良く、他の冒険者とは比にならない。
イオに当たった瞬間数十キロ離れた場所からも見える大爆発が起きた。
「…やったか…??」
しかし、再びイオは口から光を放った。
その光は、第二隊に直撃した。
「がっ…、っ…全員大丈夫か…、生きているものは…返事をっ─」
クリンレッジの目に映ったのは、A級冒険者が倒れ怪我をしている姿であった。
意識を有するものは誰一人としていなかった。
「…なんて…無力なんだ…」
クリンレッジは自らの限界を感じた。
「実…に無念…、無に還らんとする……うっ…!」
短刀を心臓に突き刺し、自決するクリンレッジ。
「怯むなぁ…!!!第三隊!放てぇ!!」
今度は第三隊。隊員は全員B級。指揮官のS級19位シルバート・テインは、ゴリ押し作戦を決行している。実に危険だ。
全員魔法を放ったが、さっきの爆発の威力よりは弱い。それもそうA級とB級の差は、凄まじい。
そしてまた、無駄死にの時間が始まろうとした。魔獣から放たれる光は、地面を焼いた。
指揮官、シルバートの下半身は燃え尽き、隊員はまたしても全員死亡。
軍の兵士たちは、為す術なくただ立ち尽くすだけ。
「…終わりだ…、世界の…」
誰もが勝てない。そう判断した時、それは来た。
「第一隊現着!」
イオの進む方向にある丘から声がする。それは第二冒険者機構の最強が揃う、最大火力部隊「特火第一交戦部隊」、通称第一隊である。
「第一隊指揮官バンベルクの名において命じる!部外者は全員退避!第一隊!包囲陣形、全隊員最大火力放出準備!」
SS級4位バンベルク。第二冒険者機構のNo.4である男で、最強と言っても過言ではない。
そして第一隊の隊員は全員S級である。
「限界放出!!」
その合図と共に、12人のS級冒険者はイオに向かって一撃必殺と言える技を繰り出した。
「がぁぁぁあああ!!」
イオは雄叫びをあげる。
イオの体はえぐれ臓器が丸見えであった。
「よしっ、効いているな。第二波!準備っ─」
光。
全て飲み込む闇と対を成す。はずが、光は闇をも飲み込む。
「…。Sでもさすがにきついか…」
さすがばSS級と言ったところだろう。この攻撃に無傷である。しかしS級の者はほとんどが重傷者で数人が死んでしまった。
「…S級という強者であっても、このざまになるほど彼奴は最強ということか…」
「バンベルク君かね?」
そこには軍部の高官らしい人がいた。
「あぁ。そうだけど?あんたはだれだ?」
「フレイ王国軍の者だ。陛下からの通達だ。撤退。そして長官からは今後の作戦行動は広域冒険者協会に移行される。との事だ」
「そうか…、俺らはお役御免か。それをもっと早くいえば、隊員達は死なずに済んだのにな。上が無能だといやだな」
バンベルクは軍部の高官を睨みつける。
「その態度は、陛下への不敬に当たる。この後着いてきてもらう」
「ちっ、エパー!」
バンベルクが声を荒らげながら呼ぶと、エパーと呼ばれる人物が近づいてくる。
「なんでしょう」
「あの作戦を決行しろ。本部や艦船など全て使えるように整備も頼んだ」
「了解致しました」
そしてエパーは去っていった。
「はぁ…」
それはそうといえ、こいつはどう済んだよ。協会の連中で勝てる相手なのか…?
「考えたって無駄か…。第一隊。引き上げるぞ」
「待ちたまえ、貴様の行動は制限される」
「あ?俺は自由にさせてもらうぞ」
と、軍部の高官を後にし去ろうとしたその時。兵士たちがバンベルクに使って、対魔術師拘束器具と言われる縄状の物で、バンベルクを拘束した。
「くっ…!何をするんだてめぇら!」
「指揮官っ!」
怪我をしている隊員達は戦闘態勢に入る。
「言っただろ。不敬罪。それがお前の罪状。連れて行け!」
「…皇帝の駒共が…っお前ら!さっきの命令を遵守しろ!」
そう言ったら隊員達は全員どこかに消えた。
「お前と違い、あいつらは利口だな」
「…るっせぇ…」
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