転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

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本編

58話 シンの探しているもの

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王都で催されているフリーマーケットは、規模が大きい。出品者側には色んな種族の人々がいて、様々な品物がテーブルや地面の上に敷かれているシートの上に置かれている。全てが中古品にも関わらず、皆がきちんと磨いているせいか、外側だけは新品のように見える。だからこそ、消費者側には、それらが優良品か粗悪品なのかを見極める力が必要だ。

「同じ店舗に、衣服類・食器類・魔道具とかもある。ここでは1つの店に、色んなものを出品できるんだね。てっきり、品物ごとに区別して販売しているものだと思ってた」

「昔はそのような配慮もあったと聞いているけど、手続き上、かなり面倒だったらしい。各方面から様々な苦情も上がったことで、出品者側が自分たちで仮店舗を作り、そこで自分の卸す品々を販売していく今の形態に落ち着いたと聞いているよ」

シンさんが、フリーマーケットの事情を少し明かしてくれた。出品形態が日本と同じだから、私もすぐに見慣れたけど、かなり規模の大きなフリマだから、私の求める伝統工芸品を見つけるのに、かなりの時間を要しそうだよ。シンさんだって、お目当ての魔道具を探し求めているのだから、私と同じ気持ちを抱えていそう。

「シンさんは、どんな魔道具を探しているの?」

「特に拘りはないが、安価で人々の生活に役立てるものと言えばいいか。こういった場所では、偶に掘り出し物があると聞く。それを見つけて、製作者が誰かを知り、量産出来ればと考えている」

なんか、考え方が大人だ。
もしかして、貴族なのかな?
シンさんは、商売に役立てる魔道具のお宝を見つけたいってことか。

「お宝を自らの手で探し出す、最高に面白いよね!」
「その気持ちは、僕にもわかります」

私たちは、互いにほくそ笑む。自分の目的に見合うものを、ここで発見できるかどうか、ある種の宝探しゲームだ。

早速、動くとしましょう!

7つの店舗を物色してわかったけど、出品者は各家庭で不必要になったものを、ここで提示しているおかげもあって、面白い伝統工芸品を2つ見つけた。1点目が『木彫りのゴブリン』、ここから東に遠く離れた山間の場所に村があって、そこの人々は魔性の外れた知能の高いゴブリンと共存して生活しており、温泉も湧いていることから、今では癒しの観光地となっている。『木彫りのゴブリン』は、古くから作られている村の伝統工芸品のようだ。

2点目が『神獣麒麟の厄除け御守り』、ここから遠く離れた南方の村では、神獣麒麟様が崇められていて、魔物除けの効果を持つと言われている。古くから販売されている由緒あるお守りなので、1個だけ購入した。ただの小さなヌイグルミ付きキーホルダーに見えるけど、村の伝統工芸品なのだから馬鹿にできないよね。

他にも興味のそそるものはあったけど、店員さんに許可を貰い、スケッチだけさせてもらった。デジタルカメラやスマホがない以上、覚えておくには絵に残すしか手はないため、きっちりと描いておいた。絵の腕は自慢じゃないけど、上手い部類に入るからね。

トーイは100年間閉じ込められたことで、国の文化がどの程度発展したのかを把握するため、私のように様々な物に目を通しているけど、物品自体に興味が湧いてこないこともあって、質問など一切していないし購入もしていない。

シンさんは、置かれている魔道具をしっかりと目を通しているけど、店員さんから効果を聞く度に気落ちしている。こんな感じで7軒程まわったところで、私たちは一時休憩することにし、飲食スペースの場所へと移動して、テーブル席に座ってドリンクを飲んで、喉の渇きを癒していく。

「ぷは~~スッキリ~~~」
「うん、美味いね。シン、お目当ての物は見つかったのかい?」

トーイが質問すると、シンさんは浮かない表情をしている。

「い~や、ないね。商売に役立てそうな珍しい魔道具、そんな都合の良いものが早々に見つかるなんて思っていないさ。僕の理想としては、商品の輸送中、雨を防いでくれるような魔道具を見つけたいかな」

そういえば、魔道蒸気列車はあるけど、車がない。列車の場合、遠距離輸送は可能だけど、駅から数日もかかる場所だと、結局馬車を使う羽目になる。これは原始的な輸送手段で、雨がネックだ。

「シンさん、自分たちが雨を防げても、肝心の足場が泥まみれだと意味ないよ?」
「う…」
「あはは、ユミルの言う通りだね」

私が真っ当な意見を言ったせいで、シンさんも複雑な笑みを浮かべている。

「ユミルは賢いね。僕はどんな物でも構わないから、商売繁盛に繋がる何かを見つけたいんだ」

シンさんの両親が、商売を営んでいるのかな? 

「シンさん、必死だね」
「知り合いが、困っていてね。僕は、少しでもあの方の負担を軽くしたいのさ」

なんか、ただの知り合いじゃないような言い方だ。
人様の事だし、迂闊に立ち入らない方がいい。

ドリンクを飲み終え、お昼まで時間もあるので、私たちは別の区画へ行くことにした。どこも人混みでいっぱいだから、移動も大変だ。私の場合、背が低いこともあって、迷子にならないよう、トーイと必ず手を繋いでいる。

あれ?
あそこの区画だけ、人が集まっている。
何か、良さそうな物がある予感!

「ねえねえ、あそこに行ってみようよ!」
「何かあるね。シン、どうする?」
「人が多いから、どんな品が置かれているのかだけでも確認してみよう」

これまで立ち寄ったお店には、主婦や子供たちがメインだったけど、あそこだけ何か違う。何かありそうな予感がする。

……あれ?

近づいてわかったけど、周囲の人々は1つのお店を見て、ヒソヒソと話し合っているだけで、これだとお客様というよりもむしろ野次馬のような?

「トーイ、何かおかしいよね?」
「そうだね。冷た! 怪しい雲行きだと思ったけど、やっぱり雨が降り出してきたか」

雨がポツポツと降り出すと、野次馬たちは少しずつ散っていき、皆の見ていた場所が開けていき、背の低い私にも見えるようになる。私はその光景を見て、言葉を失う。周囲の店と違い、そこだけが何者かによって荒らされていて、ハンガーに設置されている衣服類に、泥とかの汚れがいっぱいついていて、おまけに……ズタズタに切られている。店には10歳くらいの女の子が1人だけで佇み、その子の服もかなり汚れている。

「シャロン!? 何故、君がここにいる! それに、その姿は…」

シンさんのお友達だったようで、彼は慌てて駆け寄っていく。女の子はチラッと彼を見たまま、何も語ろうとしない。

「ユミル、雨が強くなってきそうだし、僕たちもここを離れよう」
「え、でも……」
「シンのお友達のようだし、ここは彼に任せよう。同情は禁物、自ら災難に突っ込む必要はないからね」
「う…はい」

全くの赤の他人だから、私からは声を掛けられない。トーイの言う通りの為、私はシンさんに一言だけ言って、その場を離れる。2人の姿は見えなくなったけど、私の脳裏には、ボロボロになった女の子の姿が明確にこびりつき、頭から離れることはなかった。
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