転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

文字の大きさ
66 / 96
本編

64話 思わぬ伏兵

私たちは事故の一報を聞き、店をロハスさんに任せて飛び出す。

シャロンさんとシンさん、姿を消した1体のカーバンクル・イマリが先行して、事故現場へ赴く。

私は4歳、体力が違いすぎるため、人間形態になったトーイが私をお姫様抱っこして走ってくれたことで、なんとか2人を見失うことなく、事故現場へ到着したけど、現場の光景を見て、私たちは絶句する。

馬車が横向きに倒れ、出入り口の扉が開け放たれており、周囲には誰かに斬られたのか、血を流して倒れている4人の大人たちがいて、痛い痛いと叫んでいる。

そんな状態の中、7人の野次馬たちが、3つの鞄を奪い合っている。7人のうち3人は男性で冒険者なのか、剣を所持していて、残り4人は包丁やナイフで応戦している。

そして、別の野次馬連中が店の壁沿いに沿って、その状況に関わりたくないのか、遠目で様子を窺っている感じだ。

「欲望の塊共が! うざいんだよ!」
「それは貴方たちでしょうが!」

「そうだ、そうだ! 鞄を地面に置いて、とっとと失せなさいよ!」

あ、危ない!

1人の男性が剣を上げて、文句を言った1人の女性に斬りかかる!?

「あなたたち、何をやっているの! その馬車はオリエント商会のもの! 貴方の持っている鞄は、商会用の物よ! どさくさに紛れて盗もうとしているようだけど、牢獄行きになりたくなければ、それらを地面に置きなさい!」

7人がシャロンさん渾身の叫びで私たちを視認すると、周囲の状況を把握できたようで、うち4人が気を許してしまう。

その瞬間、収納鞄を持つ3人の男性冒険者がその一瞬の隙を突いて、サッと逃げようと画策するも、両足が何故か地面に貼り付き、その場でバタンと倒れる。

この力は、スキル《反射》によるものだ。多分、トーイかイマリが足の蹴り上げる力を利用して、地面から離れないよう調節しているんだ。

「これって…まさか?」

シャロンさんがトーイを見ると、彼女は何も言わず頷く。

「なんだ、これ!? 足が…」

その光景を見た4人が冒険者達から収納鞄を奪い取り、私たちの方へ持ってきてくれて、シャロンさんに渡す。

「皆さん…鞄を守って頂き、ありがとうございます」

自分が死ぬかもしれないのに、4人の男女は死ぬ気になって、オリエント商会の物品を守ってくれた。その行為が嬉しかったのか、シャロンさんは感謝で震える。

「いいってことよ。普段、お世話になっているからな」
「そうよ。子爵様達は頭を打って気絶しているだけだから安心して」
「変な噂がばら撒かれているけど、挫けないで。私たちは、そんなの信じていませんから」
「今大変な時期だけど、負けんじゃないよ」

あれ? 

色んな人たちに嘘の情報を教えられたと聞いていたけど、周囲に集まる野次馬のみんなが、商会のことを心配してくれている。

シャロンさんも、その反応に驚いている。

「皆さん……ありがとうございます」

彼女は皆の反応に涙ぐみ、感謝の言葉を告げる。こうやって周囲を見渡すと、まだオリエント商会には、大勢の味方がいるとわかる。

多くの人々がシャロンさんや馬車の中にいる彼女の両親の容態を気にしてくれているもの。

程なくして、警備隊の騎士たちが事故現場に到着すると、シャロンさんを励ましてくれた4人のうち2人は、騎士たちに、言葉をかける。

『斬られた連中に、重症者はいないから、馬車内にいる会頭と夫人、倒れている怪我人たちを診てやってくれ』

『早く馬車内から引き上げておやり! こんな時のための騎士だろ!』

この2人以外にも、地面に倒れる強奪者3人に、侮蔑の言葉を贈る人々だっている。周囲からの言葉に、3人は激怒しながら罵声を浴びせるも、両足が封じられているので、お馬鹿さんに見えてしまう。

「くそ!」
「どうなってんだよ!」
「足が離れねえ!」

悪態をつきまくる3人は、警備の騎士たちの姿を確認すると、観念したのか急に黙り込む。そして、皆が騎士さんたちに状況を説明してくれたことで、ようやく私たちも、こうなった原因を理解する。

馭者の冒険者(収納鞄を盗もうとした男の1人)が馬車をゆっくり走らせていると、突然この付近で馬の尻に何らかの試薬を注射した。

馬が突然暴れ狂い、馬車ごとバタンと倒れ伏す。

周囲の人たちが何が起きたのか呆然としていると、2人の男性冒険者が何処からか出現し、3人が結託して、扉の窓ガラスを蹴破り、収納鞄だけを取り出して去ろうとする。

野次馬の人たちが襲撃と察して、3人の進行方向を塞ぎ、言い合いに発展するも、3人の強奪者は聞く耳を持たず、4人を斬り伏せ、残った4人との戦闘が始まる。

悪いのは強奪者3人だけで、残りの人たちは彼らの行動を止めようと、必死に動いてくれていたんだね。

シャロンさんとシンさんは、斬られて治療中の人たちに無償でポーションを与えていく。幸い深い傷ではなかったようで、皆は起き上がれるまで回復してくれた。

一部の騎士たちが3人の強奪者を連行していき、現場検証が引き続き行われる中、私とトーイは少し離れた地点で、現場を観察している。

「ユミルが早い段階で、僕たちの失態を指摘してくれて助かったよ。もし、あの店に行かなかったら、多分この現場は更に酷い状態だったと思う」

「たとえば?」

「これは予想だけど、シャロンの両親や助けに入ってくれた人々は、あの3人に殺されていただろうね。収納鞄も奪われ、更なる不幸が彼女を襲っていた」

トーイに言われて気づいたけど、確かに起こりうる事態だ。
それにしても、フリマでの騒動やここで起きた襲撃、誰が仕組んだのかな? 
商売敵の連中だとしても、範囲が広くて、相手を絞れない。
何か、証拠が残っているといいけど。

「ユミル、シャロンの両親が気絶から復帰したよ」

シャロンさんの両親は頭痛で頭を押さえているものの、ポーションのおかげで怪我も回復しており、近くにいるシャロンさんに気付き、3人で抱きしめ合っている。

両親はゆっくりと立ち上がり、収納鞄を守ってくれた人々に御礼を言っていき、最後に私たちのところへ来た。

「シャロン、こちらのお2人は?」

「小さい子がユミル、銀髪の女の子がトーイ。2人が今回の立役者、彼女達と出会ってなければ、多分私やシンもここで死んでいたかもしれないわ」

子爵と夫人は互いに顔を見合わせ、不思議な表情となる。

「どういうことなの? 私たちに説明してほしいわ」

オリエント子爵と夫人は、私たちの事情を知らないから、混乱して当然だよね。

「それについては、家で話すわ。ユミル、トーイ明日の朝10時に家へ来てもらえない? フリマの件やここの現場の片付けもあるし、収納鞄の積荷チェックもしておきたいから、今日は落ち着いて話せる時間もないの。これが、家までの地図よ」

雑紙の切り抜きなのか、詳細な地図が掲載されていて、赤い丸印が目的地と示されている。

「わかりました。明日、お伺いしますね」
「シャロン、困ったことが起きたら、イマリに話すといい。見えないけど、すぐ近くにいるから」

「了解よ」

邪魔にならないよう、私とトーイは現場を離れていく。

「ユミル、オリエント子爵家と出会ったことで、今後本家と接触する可能性もあるし、誰かが名前を漏らす場合もありうるから気をつけてね」

「子爵家の誰かが漏らした場合なら、私が知っちゃっても、理由を話せば、誰も不審がらないよね?」

「それは、状況次第かな。十分に警戒して、子爵家へ訪問しよう」

復讐リストに入っている人々との接触、本家の人間に知られても不審がられないよう、違和感のないよう振る舞わないといけない。

アイリス様の研究データ盗難事件がほぼ解決しているとはいえ、また彼女に心配をかけることになりそう。
感想 49

あなたにおすすめの小説

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。 全123話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ
ファンタジー
 私は死んだ。  はずだったんだけど、 「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」  神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。  なんと幼女になっちゃいました。  まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!  エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか? *不定期更新になります *誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください! *ところどころほのぼのしてます( ^ω^ ) *小説家になろう様にも投稿させていただいています