転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

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本編

70話 公爵夫人の体調不良 *改稿20251128

シャロン様は『ルティーナ様』と叫んでいたので、多分彼女はファルナーク様の母親だ。ルティーナ様は中2階付近まで転げ落ちたので、シャロン様が慌てて、そこへ駆け上がっていく。

私、咄嗟に反射を使ったけど大丈夫かな?
あの時、変な感覚がした。

まるで、私の指定した箇所付近に、別の何かが重なったような?

トーイや長から話を聞いた限り、血縁者と契りを交わした者にも、同じ罰を与えているから、あの人もスキルを封印されているはずだ。

『トーイ、反射を使った?』

姿を消しているけど、私のすぐ近くにいるはずだ。

『僕は使ってない。あの女が、魔道具を経由して使ったのさ。万が一の事態に備えて、奴らはダンジョンからでしか獲得できないスキル付属型のアイテム【光玉】を用意していたようだね』

そのアイテム名に関してはカーバンクルたちに習ったので、私もわかる。

ダンジョンで得られるアイテムの中に、スキル付属型のアクセサリーがあって、それを装備すれば、封印などの状態異常中でも、スキルが使用可能となる。

ただし、スキルがランダムに付与されているため、反射用を入手出来る確率はかなり低い。

『100年という歳月をかけて、反射の付いたアイテムを集めていたってこと?』

『その通り。仲間から聞いてはいたけど、抜け目のない連中だよ』

100年、それだけの歳月があれば入手可能だ。
相手側も、もしものことを考えていたわけか。
とりあえず、私も転んだ女性のもとへ行ってみる。

「大丈夫よ、シャロン。私たちには、反射がありますから」
「…そうですね」
「心配してくれてありがとう」

怪我とかなくて良かったけど、夫人の顔色が悪く、全然大丈夫そうに見えない。カーバンクルを奴隷として扱い、100年間も契約し続けてきた一族、もっとガラの悪い連中かと思ったけど、この女性はおっとりしていて優しげだ。

「あら? もしかして…そちらの子供がユミルちゃん?」

すっごく儚げに見える。
それこそ、今すぐにでも死ぬんじゃないかと思うくらい。

「ユミルです、お邪魔しています」

私はカルバイン子爵家で習ったカーテシーをすると、ルティーナ様は少し驚く。

「4歳と聞いていたけど、綺麗なカーテシーだわ。ルティーナ・ディオグランデよ、宜しくね」

「は、はい」

やっぱり、公爵夫人だ。
ニコッと笑い、ドキッとさせられる。

「ルティーナ様、体調を崩しているとお聞きしました。お部屋へ戻りましょう」

2階からバタバタと、足音が聞こえてくる。部屋の主人がいないから、メイドのお姉さんたちが駆けつけてきたんだ。

「でも…息子の初恋を応援してあげたいのよ」

「それならば、尚更来てはいけません。アイリスが気を使ってしまい、帰ってしまいますよ」

「奥様、失礼致します」
「仕方ないわね、どうぞ」

ルティーナ様は、執事さんによってお姫様抱っこされる。

「わかったわ、お邪魔虫は退散しましょう。ただ、2人だけで話し合いをさせたいから、シャロンとユミルちゃんは、私の話し相手になってくれないかしら?」

私たちはルティーナ様からの提案に、顔を見合わせる。
使用人たちは、夫人の言葉に何も言わない。

「それは構いませんが…」
「私も」
「よかったわ。広い部屋の中、1人で寝ているのも寂しいのよ」

結局、私たちはルティーナ様の寝室へと案内される。

使用人たちは突然の来客に慌てることなく、黙々と私たち用の飲み物やおやつをテーブルの上にセッティンングし、そのまま部屋を出ていく。

ルティーナ様はベッドに寝かされたけど、使用人がいなくなると、上半身を起こして壁にもたれる。スキルと魔法があっても、人の内面で発生する病気全てに対応できるわけじゃない。

彼女の病名は、何なのかな?

「ルティーナ様、大丈夫ですか?」

私が尋ねると、彼女は力なく優しく微笑む。

「大丈夫。今日は、調子がいい方よ」
「どこか悪いのですか?」
「ちょっと、ユミル」
「シャロン、いいのよ。今はストレスなく、あなたたちと話し合いたいの」

私が不躾な質問をするものだから、シャロン様から注意を受けそうになったけど、ルティーナ様が許してくれた。

「私の病名はわからないのよ。少し前に発症してね…」

今から少し前、ディオグランド家にて、ある出来事が起きた。それを機に、ルティーナ様は体調を崩すようになる。

《めまい》《不眠症》《耳鳴り》《頭痛》《軽い発熱》《関節痛》《唐突に訪れる不安とイライラ》《吐き気》《味覚障害》など、その日によって体調が乱れ、ランダムに症状を発症させていく。

どんな名医に診てもらっても病名不明とされ、ポーション類を飲んでも、回復魔法を行使して治療しても、すぐに発症してしまい、体調が使用前より悪化してしまう。

今では、歩行困難な時もある。

「私、死んじゃうのかしら?」

悲壮感を漂わせるルティーナ様に対して、シャロン様は何も言わない。ていうか、言っても全て不適切な表現と捉えられてもおかしくないから、何も言えないでいるんだ。

私は、ルティーナ様の病名について考える。

彼女の言った《ある出来事》というのは、どう考えてもカーバンクルとの契約のことだ。それが唐突に切れたのだから、大騒ぎになって当然だよ。そして、彼女から聞かされた症状から察するに、病名はどう考えてもアレだと思う。

対処方法があるにはあるけど、特定の治療薬があるわけじゃない。たとえ、リズムを整えても、根源が解消されない限り、多分治らない。この場合の根源は、当然カーバンクルとの契約である以上、すぐに治りそうにない。

それでも、この儚げな表情を見ると、どうしても何か行動に駆られてしまう。

あ、ふと思ったけど・・・。

『トーイ、ルティーナ様って血縁者に入るの? 嫁いできた場合、血は繋がってないよ』

『彼女は、血縁者じゃない。でも、復讐対象には入っているよ』

『どうして? 無関係だよね?』

『嫁いできた者や婿養子として入ってきた者たちが、どこまで事情を知っているのか、契りを交わした場合でも、弱い加護が入るから、それを悪用していないかが問題だね』

なるほど、悪用していたら悪人判定なわけか。

正直、ファルナーク様やルティーナ様を見ていると、悪人のようには見えない。近くにいるトーイも、様子を見ているだけで、特に怒っているような気配を感じない。

…よし、決めた!

私に出来るのは、私にしかない伝統魔法を使い、彼女の体調を少しでも回復させることだけど、こういった時って美味しい食事療法が効果を発揮してくると思う。

ここは彼女の手助けをして、どんな反応をしてくるのか、様子を見よう。

『トーイ、公爵家から違和感を感じるの。血縁者じゃないルティーナ様が悪人なのか判断するため、手助けするけどいいかな?』

私が勝手に手助けしたら、怒るかもしれないからね。

『いいよ。僕も仲間から、公爵家のことを聞いている。色々と疑問に思うのもわかる』
 
やっぱり、カーバンクルたちも事前調査で、公爵家の善悪に疑問を抱いているんだ。

そうと決まれば動こう!

「ルティーナ様、こういう身体が不安定な時こそ、美味しい食事を摂るべきです」

「ユミルちゃん…ごめんね。美味しい食事なのはわかっているんだけど、最近食欲も湧かないのよ」

人によって生じる症状は様々、食欲減退は不味いよ。

「それなら、今まで食べたことのない料理だったらどうです?」

「食べたことのない料理? そうね…それなら、興味も湧くと思うわ。あとは、見た目や匂い次第かしら?」

「わかりました! ルティーナ様が食べたことのない料理を調理してもらうので、厨房に行っていいですか?」

「ちょっと、ユミル!!」

私のとんでも発言に、シャロン様が待ったをかける。

「いいわ」
「え? ルティーナ様、宜しいのですか?」

私自身、かなり強引に話を進めていることを理解している。これだけでも、ルティーナ様にとってストレスになっているのもわかっている。

それでも、彼女を手助けしたい。

「ええ、この表情は真剣そのもの。きっと、この子なりの考えがあるのよ。シャロン、あなた料理長ラゴスと面識があったわね?」

「はい、世間話をする程度には」

「2人で行ってきなさい。ユミルちゃんが、どんな料理を調理してくれるのか期待しています」

やった、許可が下りた!

よし、厨房に行って、何を調理できるか確認しよう!
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