転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

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本編

71話 食欲煽る伝統料理

ルティーナ様から許可を貰い、私とシャロン様は現在厨房にいます。

料理長の少し太っちょの40歳くらいのラゴスさんに事情を説明し、厨房に入る許可を貰い、服に付いた埃などをある程度落とし、白いエプロンを装備し、手を消毒してから入りました。

厨房の大型冷蔵庫には、色んな食材があって、地球で見知ったものもあれば、全く未知なるものもある。ざっと拝見した限り、日本伝統と健康に繋がるような食材は見当たらない。

「ユミル。ルティーナ様に限らず、貴族はかなりの美食家よ。食べたことのない料理に関しては興味こそ湧くけど、あの方に認められる程のレベルなんて、すぐには作れないわよ」

「シャロン様に同意ですね。その発想は私もありましたが、納得のいくものなど早々できませんよ」

これって、批判されているの? 
でも、2人が何を言いたいのかはわかる。

「ルティーナ様の罹っている病気は『自律神経失調症』、発症原因は色々とありますが、あの方の場合は外的要因で発生したストレスです。それを無くさない限り、どんな治療を施しても、すぐに再発します」

「なんですって!?」「なんですと!」

日本でも、この病気のせいで体調を崩す人々は大勢いる。

「ストレスに関してはどうにもなりませんが、美味しい食事を摂ることで、体内の乱れを抑えれば、症状を和らげることができます。ただ、美食家である以上、美味しい料理を提供しても食べ慣れている以上、効果も薄い」

多分、これが原因で、私が転生者だとバレるかもしれない。
それなら、それで構わない。
公爵家が悪人なのか善人なのか、それで見極めてやる!

「見たことのない料理で食欲を刺激させ、美味なるものであれば、それをもっと食したいという欲求が生まれ、体調も整ってくると思うんです」

この病気に関しては、私も素人レベルの知識しかない。食事と伝統魔法で、その場凌ぎの回復でもいいから、元気になってほしい。

「わかりました。何故、そんな知識を所有しているのかは問いません。私も協力しましょう」

やった、説得成功!! 
何も問わないでくれているラゴスさんの気遣いに感謝です。

「ラゴスさん、他に食材はありませんか?」

そう言うと、彼は思い当たるものがあるのか、嫌な表情を浮かべる。

「私の助手が興味本位で購入したものが、2…体」

体? 

「私は、あらゆるものをとびきり美味しい料理に化けさせたいと、常日頃から周囲に言っています。昨日、助手が珍しい物を購入してくれたのですが…」

ラゴスさんは、手提げ鞄を持ってきて、そこから何かを取り出して、料理代の上に大きくて細長い青色の何かをドンと1つ置く。

「こいつは《ウシトライボルト》という海に生息する魔物の子供です」

これで子供? 

体長60センチくらいの蛇のような魔物で、胴回りも30センチくらいありそう。

正直、気持ち悪い。

「こいつは雷系の魔法を得意として、漁師を常に困らせています。世界中の海に生息しており、繁殖力も強い。その上……皮がヌメヌメしていて、身もクソまずい。素材として使い物にならないため、駆除した後は毎回廃棄処理しています」

触ってみると、ヌメヌメしていて滑ってしまう。
これって蛇というより鰻やドジョウに近い?
あ、この食材なら伝統魔法として利用できるかも!

転生者のおかげで、こっちの世界にもお米が世界各地に存在するし、卵だって大量生産されている。調味料も開発してくれたおかげで、名称も日本のものと同じだ。これの調理に困っているということは、まだアレがないのかもしれない。

「私、コレの調理方法を知っているかもしれません」
「本当か?」
「私の知るものは、もっと小さいですけど、基本変わらないと思います」

「物は試しです。貴方が捌き方や調理方法を指示して下さい。私が調理を担当しましょう」

あ、そっちの方がありがたいかも。

「はい、よろしくお願いします!」

私は目的の料理を調理してもらうため、まずは必要な調味料を言い、専用のタレを作ってもらう。

分量に関してはわからないので、色々吟味しつつ、『コレだ!』という分量を見つけたところで少し煮詰めてから皆に味見してもらうと、ラゴスさんや他の料理人さんたちもその味に納得してくれた。

「濃厚で美味い、クセになる味だ。こんな組み合わせと調理法があるとは…」

ここからは、食材の捌きと調理に入る。

「ラゴスさん。調理中、換気機能をオフにしてくれませんか?」

私の提案に、ラゴスさんだけでなく、他の料理人さんたちもギョッとして、私を見る。

「そんな非常識な事をやる意義を聞いても?」
「勿論!」

今から作る料理には漂わせる匂いだけで、お客様たちの食欲を湧き上がらせる効果があり、皆が匂いに我慢できず、ここへ引き寄せられることを伝える。

「ユミル、それって魔法なの?」

「シャロンさん、魔法ではありませんよ。調理方法次第で、魔法のような効果をもたらせることが可能なんです」

みんな、私の言ったことに疑問を抱いている。
こればかりは、実際に経験しないとわからないよね。

「いいでしょう。全ての責任は、私が持ちます。さあ、調理に入りますよ」

ラゴスさんから許可を貰い、皆が調理作業に入っている間、私は伝統魔法を作り出す。効果や期間を日本伝統に習わないといけないから、上手く調整しよう。

伝統魔法《土用の丑の日》
季節の変わり目となる立春、立夏、立秋、立冬の直前の18日間、その期間中に古来から伝わる《ウシ》と付く食材で料理を調理し、それを食した者が真に美味しいと感じた場合に限り、体内に抱える心の病を癒し、健康バランスを正常に戻すことが可能となる。
*現在、立夏14日前のため、この魔法の効果範囲内である。

こんなものかな? 

《丑の日》とは、十二支(子・丑・寅など)で日付を数える際に、丑にあたる日を指す。流石に、この世界の暦は十二支を採用していないけど、魔法名称だけでも、この《丑》を付けたい。

うなぎ以外にも、夏の土用の丑の日には「う」のつく食べ物(うどん、瓜、梅干しなど)を食べると夏負けしないという言い伝えがあるし、土用餅や卵、シジミなどを食べる地域だってあるらしいから、魔法名称の事もあるし、《ウシ》のつく食材ならなんでもOKにしよう。

かなり強引だけど、大丈夫かな?

『新規伝統魔法《土用の丑の日》を作成しました』

やった、成功だ!
あとは、料理の名称だけど…。

・鰻の蒲焼→ウシトラの蒲焼
・鰻丼→ウシトラ丼
・鰻巻き→ウ巻き

こんな大雑把でいいのだろうか?
安直過ぎるような?
正式名称は、プロに任せよう。


○○○


周囲にいる人たちにも手伝ってもらい、料理を完成させた。試食として、それぞれを皆に食べてもらうと……全員が恍惚な表情となる。

「はあ~私…こんな美味しいもの初めて…」

貴族のシャロンさんの評価も、上々だ。

「脱帽ですな。この芳しい香りといい、米、タレ、蒲焼、卵、それらの組み合わせ全てが調和しています。あの漁師の迷惑でしかなかったウシトライボルトが、これ程の美味なるものに変化するとは…」

はあ~~この味、久しぶり! 
ウシトライボルトって、まんま鰻の味じゃん!

魔物自体に伝統魔法をかけておいたから、食べた人全員の体内バランスが整っているはずだけど、元気な人たちに与えても、効果がわかりにくい。

「蒲焼とウシ巻きの2品は、貴族の方々にも喜ばれるでしょう」

鰻丼を食べている貴族の姿は、ちょっと想像しにくいけど、周囲の料理人たちからの評価も上々だ。

「ラゴス、君たちは何を作っているんだ?」

声のした方向を見ると、そこにはファルナーク様、アイリス様、ルティーナ様、そして大勢の使用人たちがいた。

「皆様方…勢揃いですな。『この料理から醸し出される匂いは、客を呼び寄せる』、ユミル嬢の読み通りとなりましたね」

皆がごくりと唾を飲み込んで、私たちの食べている料理を凝視している。さあ、皆さんにも実食してもらいましょう。
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