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本編
80話 諸悪の根源 ※改稿20260117
新たに登場するキャラの名前を、《クザン》から《マイロ》に変更しました。
○○○
今、謎の声は、『私は子供を作った覚えなどない!』と怒りを込めて言った。
声の主って……。
トーイの雰囲気も、その言葉の影響で、険しく怪訝なものへと変化している。
「君に興味を持った。姿を見せなよ」
『念願のカーバンクル様と出会えた事こそが好機! 姿をお見せしよう』
邸内の入口を見ても、一向に誰かが出てくる気配がない。
一体、何処から出てくるの?
「奇怪な魔法を使う幼女よ、私は君の後ろにいる」
「え!?」
慌てて後方を振り返ると、25歳くらいの黒髪の男性がいた。波打つ黒髪、目つきが鋭く、なんかただならぬ雰囲気を感じる。半透明だから、間違いなくゴーストだ。
いつの間に、こんな近くまで?
「ユミル、彼は地面からにゅっと現れたんだよ」
「地面から!?」
てことは、この敷地の真下に、地下区画があるの?
「私の名前は、マイロ・ディオグランデ」
「僕はカーバンクルのトーイ、こっちの幼女はユミル。君の名前、先代長ロカ様から聞いたものと同じだね」
先代長の名前を聞いてか、マイロという男性は、ほんの少しだけ優しげに変化する。
「ロカ…久しぶりに聞いたな。その名を。彼には…いや…」
今度は、苦渋に満ちた表情へと変化する。
もしかして、謝罪を入れようとした?
「マイロ、君は本物の元契約者なのかい? なんせ先代長以外、誰も契約者を見ていないからね」
ここに先代長を召喚することも可能だけど、召喚の際の力が漏れて、周囲に悟られるとまずいから、今は話を聞いておこう。
「疑うのも理解できます。私の身に何が起きたのかをお話ししましょう」
私がカーバンクルたちから聞いた話だと、貴族の青年が先代長と契約を結んだ後、反射の力を悪用したい連中が契約者の男性を懐柔して、先代長を王都に召喚させた後、隷属契約を強引に結んだという内容だったはず。
事実は、どうなんだろう?
「カーバンクル、多くの人族から愛されし精霊。私は幼い頃からカーバンクルの絵本を読み、いつか必ず会ってみせるという夢を抱いた。15歳で成人となったのを機に、私はカーバンクルに会いたいが故、護衛を連れて、目撃情報の多いとされる森へと足を踏み入れ、そこでロカと出会った」
出会いの話を言い終えた途端、トーイの雰囲気が変わった。多分、彼を本物と理解したんだ。
「長のロカと出会い、契約を結べた私は歓喜に震えた。そして…王都の家へ帰り、家族に話してしまった。それが全ての発端……」
家族に話しただけで、全てが悪い方向に進んだの? ここから先が、私たちの知りたい内容だ。
「君は家族に懐柔され、先代長を召喚して、隷属契約を結ばせた。そこから、ディオグランデ家は力を独占し、栄華を誇るようになった」
「事実ですが…違う」
トーイが言ったことを肯定し否定したけど、何が違うの? 何故、怒り、悲しみが入り混じった表情をしているの?
「当初家族たちは、カーバンクルの長との契約に喜びの声をあげていたものの、次第に私を妬むようになっていき……」
そこから、目が険しくなり押し黙る。
精霊との契約って、貴族にとっても貴重なもの。他人を妬むのはわかるけど、肉親を妬むって……。それに、口調から丁寧さが消えた。余裕が無くなる程、今から話す内容が壮絶ってこと?
「私にとって忘れられない日が訪れる。皆が寝静まる深夜、私は不意に目覚めてしまい、部屋を出て廊下を歩いていると、リビングから話し声が聞こえてきた」
いよいよ核心を突く話になるため、トーイも私も唾を飲み込む。
「私は気配を消し、見つからないよう話に聞き入ると、声の主は父、母、兄、妹の4人で……どうやって、カーバンクルの力を家族全員に行き渡らせるかの相談だった。私から拒絶された際の行き着いた最終結論は、私の洗脳と隷属契約だ」
「なんだって!?」「隷属…奴隷…」
私は驚きで、声を出せない。家族に隷属契約って、酷すぎだよ。
「私は逃げようとしたものの、執事に見つかり、その場で他のカーバンクルたちから力を貰えるよう家族にせがまれたが、即時に断った」
カーバンクルは、そんな醜悪なことを考える連中を嫌う。マイロさんも、それを知っているからこそ断ったんだ。
「その結果、私はスキルと魔法を封じられ、地下の牢屋に入れられ、拷問を受ける事態に陥った」
自分たちもカーバンクルの力を欲しているからって、酷いよ。貴族としての力を欲するだけなら、契約者マイロさんを前面に出せばいいだけのこと。
「父や母だけでなく、兄や妹までもが傷つく私を見て、醜悪な笑みを浮かべていた。奴らは頑なに拒絶する私を諦め、強制的に隷属契約を交わし、私の心を洗脳した」
喜んでほしいと思い行った事が、こんな展開になるのだなんて想像もつかないよ。マイロさんの悲し気な表情から察するに、私と同じ心情を抱いているのかな?
「当初、悲しみに支配されていた私の心が怒りに変化するまで、然程時間もかからなかった」
「長側からは、隷属されていることに気づかないの? ステータスに記載されるはずだし、契約しているのだから、異変に気づくはずだよ?」
「君は賢いな。気づかれないよう、奴らは事前に対策を練っていた。私の意識を心の奥底に封印し、洗脳で擬似的人格を作り上げ、高レベルの偽装を施し、ロカや友人たちを欺いたのだ」
マイロさんを地下牢に閉じ込めている間に、用意周到に対策を練ってから、隷属を実行に移したんだ。私利私欲を満たす為、家族すら犠牲にする行為、人間の屑だね。
「そこから、私自身が病に罹り、25歳の若さで死ぬその時まで、私の意識は心の牢獄に閉じ込められたままだった」
家族の操り人形と化したまま死んだってこと? なんて、悲惨な人生だ。でも、死んで魂が解き放たれたのなら、そこから復讐すれば……まさか。
「もしかして、家族は死んだ後のことも考えていたとか?」
「正解だ、幼女よ。奴らは、人間の屑だ。死んだ私を地下に閉じ込め、力が漏れ出ないよう、徹底的に対策した。その牢獄から解放されたのは、つい最近のことだ」
つい最近?
それって、私がカーバンクルの抱える呪縛を解放した時だ!
「ちょっと待って! 解放されたのなら、どうして憎しみに囚われ、ゴースト化しない?」
トーイの言う通りだ。
何故、幽霊のままなのだろう?
「私の死後、ロカは隷属された影響で、代々の公爵家当主たちと契約を結んでいるが、その間に私という魂を介している。そして、ロカこそが死の根源と思わせるよう、隷属契約を上書きし、公爵家共によって不条理に殺された者たちの憎しみの全てが、私を経由し、彼に伝わるよう仕組んだ。当然、そこには私の憎しみも含まれている」
なんて、狡猾な連中だ。だから、ロカ様は大量の憎悪に苛まされていたわけか。つくづく、何故今の公爵家が善人なのか不思議に思うよ。
「憎悪がロカに流れていたことで、我々は幽霊を保てた。私の場合、特殊な環境下であった故、解放されても、魂が憎しみに染まらないよう、終始制御できるようになっていた」
100年も同じ環境にいれば、嫌でも慣れてしまうよ。
「他の幽霊たちは憎しみに囚われてしまい、ゴースト化してしまうも、僅かな理性を保っていたこともあり、私が皆に待機命令を下した。こちらから動かなくとも、奴らの方から必ずやって来ると断言したことで、皆が思い止まってくれたのだ」
なんか、私の時と違う。
私がじろっと幽霊たちを見ると、皆が少したじろいでしまう。
「理由があるのだよ。私の予想は的中したが、何故か襲撃してくるのは、ディオグランデの分家とされる侯爵家の騎士共ばかり、当時混乱していたこともあり、全員を抹殺した。その影響で、僅かに残された理性も消失してしまい、ああなってしまったのだ」
なるほど…ってちょっと待って!?
今、侯爵家と言わなかった?
○○○
今、謎の声は、『私は子供を作った覚えなどない!』と怒りを込めて言った。
声の主って……。
トーイの雰囲気も、その言葉の影響で、険しく怪訝なものへと変化している。
「君に興味を持った。姿を見せなよ」
『念願のカーバンクル様と出会えた事こそが好機! 姿をお見せしよう』
邸内の入口を見ても、一向に誰かが出てくる気配がない。
一体、何処から出てくるの?
「奇怪な魔法を使う幼女よ、私は君の後ろにいる」
「え!?」
慌てて後方を振り返ると、25歳くらいの黒髪の男性がいた。波打つ黒髪、目つきが鋭く、なんかただならぬ雰囲気を感じる。半透明だから、間違いなくゴーストだ。
いつの間に、こんな近くまで?
「ユミル、彼は地面からにゅっと現れたんだよ」
「地面から!?」
てことは、この敷地の真下に、地下区画があるの?
「私の名前は、マイロ・ディオグランデ」
「僕はカーバンクルのトーイ、こっちの幼女はユミル。君の名前、先代長ロカ様から聞いたものと同じだね」
先代長の名前を聞いてか、マイロという男性は、ほんの少しだけ優しげに変化する。
「ロカ…久しぶりに聞いたな。その名を。彼には…いや…」
今度は、苦渋に満ちた表情へと変化する。
もしかして、謝罪を入れようとした?
「マイロ、君は本物の元契約者なのかい? なんせ先代長以外、誰も契約者を見ていないからね」
ここに先代長を召喚することも可能だけど、召喚の際の力が漏れて、周囲に悟られるとまずいから、今は話を聞いておこう。
「疑うのも理解できます。私の身に何が起きたのかをお話ししましょう」
私がカーバンクルたちから聞いた話だと、貴族の青年が先代長と契約を結んだ後、反射の力を悪用したい連中が契約者の男性を懐柔して、先代長を王都に召喚させた後、隷属契約を強引に結んだという内容だったはず。
事実は、どうなんだろう?
「カーバンクル、多くの人族から愛されし精霊。私は幼い頃からカーバンクルの絵本を読み、いつか必ず会ってみせるという夢を抱いた。15歳で成人となったのを機に、私はカーバンクルに会いたいが故、護衛を連れて、目撃情報の多いとされる森へと足を踏み入れ、そこでロカと出会った」
出会いの話を言い終えた途端、トーイの雰囲気が変わった。多分、彼を本物と理解したんだ。
「長のロカと出会い、契約を結べた私は歓喜に震えた。そして…王都の家へ帰り、家族に話してしまった。それが全ての発端……」
家族に話しただけで、全てが悪い方向に進んだの? ここから先が、私たちの知りたい内容だ。
「君は家族に懐柔され、先代長を召喚して、隷属契約を結ばせた。そこから、ディオグランデ家は力を独占し、栄華を誇るようになった」
「事実ですが…違う」
トーイが言ったことを肯定し否定したけど、何が違うの? 何故、怒り、悲しみが入り混じった表情をしているの?
「当初家族たちは、カーバンクルの長との契約に喜びの声をあげていたものの、次第に私を妬むようになっていき……」
そこから、目が険しくなり押し黙る。
精霊との契約って、貴族にとっても貴重なもの。他人を妬むのはわかるけど、肉親を妬むって……。それに、口調から丁寧さが消えた。余裕が無くなる程、今から話す内容が壮絶ってこと?
「私にとって忘れられない日が訪れる。皆が寝静まる深夜、私は不意に目覚めてしまい、部屋を出て廊下を歩いていると、リビングから話し声が聞こえてきた」
いよいよ核心を突く話になるため、トーイも私も唾を飲み込む。
「私は気配を消し、見つからないよう話に聞き入ると、声の主は父、母、兄、妹の4人で……どうやって、カーバンクルの力を家族全員に行き渡らせるかの相談だった。私から拒絶された際の行き着いた最終結論は、私の洗脳と隷属契約だ」
「なんだって!?」「隷属…奴隷…」
私は驚きで、声を出せない。家族に隷属契約って、酷すぎだよ。
「私は逃げようとしたものの、執事に見つかり、その場で他のカーバンクルたちから力を貰えるよう家族にせがまれたが、即時に断った」
カーバンクルは、そんな醜悪なことを考える連中を嫌う。マイロさんも、それを知っているからこそ断ったんだ。
「その結果、私はスキルと魔法を封じられ、地下の牢屋に入れられ、拷問を受ける事態に陥った」
自分たちもカーバンクルの力を欲しているからって、酷いよ。貴族としての力を欲するだけなら、契約者マイロさんを前面に出せばいいだけのこと。
「父や母だけでなく、兄や妹までもが傷つく私を見て、醜悪な笑みを浮かべていた。奴らは頑なに拒絶する私を諦め、強制的に隷属契約を交わし、私の心を洗脳した」
喜んでほしいと思い行った事が、こんな展開になるのだなんて想像もつかないよ。マイロさんの悲し気な表情から察するに、私と同じ心情を抱いているのかな?
「当初、悲しみに支配されていた私の心が怒りに変化するまで、然程時間もかからなかった」
「長側からは、隷属されていることに気づかないの? ステータスに記載されるはずだし、契約しているのだから、異変に気づくはずだよ?」
「君は賢いな。気づかれないよう、奴らは事前に対策を練っていた。私の意識を心の奥底に封印し、洗脳で擬似的人格を作り上げ、高レベルの偽装を施し、ロカや友人たちを欺いたのだ」
マイロさんを地下牢に閉じ込めている間に、用意周到に対策を練ってから、隷属を実行に移したんだ。私利私欲を満たす為、家族すら犠牲にする行為、人間の屑だね。
「そこから、私自身が病に罹り、25歳の若さで死ぬその時まで、私の意識は心の牢獄に閉じ込められたままだった」
家族の操り人形と化したまま死んだってこと? なんて、悲惨な人生だ。でも、死んで魂が解き放たれたのなら、そこから復讐すれば……まさか。
「もしかして、家族は死んだ後のことも考えていたとか?」
「正解だ、幼女よ。奴らは、人間の屑だ。死んだ私を地下に閉じ込め、力が漏れ出ないよう、徹底的に対策した。その牢獄から解放されたのは、つい最近のことだ」
つい最近?
それって、私がカーバンクルの抱える呪縛を解放した時だ!
「ちょっと待って! 解放されたのなら、どうして憎しみに囚われ、ゴースト化しない?」
トーイの言う通りだ。
何故、幽霊のままなのだろう?
「私の死後、ロカは隷属された影響で、代々の公爵家当主たちと契約を結んでいるが、その間に私という魂を介している。そして、ロカこそが死の根源と思わせるよう、隷属契約を上書きし、公爵家共によって不条理に殺された者たちの憎しみの全てが、私を経由し、彼に伝わるよう仕組んだ。当然、そこには私の憎しみも含まれている」
なんて、狡猾な連中だ。だから、ロカ様は大量の憎悪に苛まされていたわけか。つくづく、何故今の公爵家が善人なのか不思議に思うよ。
「憎悪がロカに流れていたことで、我々は幽霊を保てた。私の場合、特殊な環境下であった故、解放されても、魂が憎しみに染まらないよう、終始制御できるようになっていた」
100年も同じ環境にいれば、嫌でも慣れてしまうよ。
「他の幽霊たちは憎しみに囚われてしまい、ゴースト化してしまうも、僅かな理性を保っていたこともあり、私が皆に待機命令を下した。こちらから動かなくとも、奴らの方から必ずやって来ると断言したことで、皆が思い止まってくれたのだ」
なんか、私の時と違う。
私がじろっと幽霊たちを見ると、皆が少したじろいでしまう。
「理由があるのだよ。私の予想は的中したが、何故か襲撃してくるのは、ディオグランデの分家とされる侯爵家の騎士共ばかり、当時混乱していたこともあり、全員を抹殺した。その影響で、僅かに残された理性も消失してしまい、ああなってしまったのだ」
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