転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

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本編

81話 ようやく光明が見えてきたよ ※改稿20260117

マイロさんは、今の公爵家の現状について、どこまで把握しているのだろう? さっきの言動から察するに、分家の侯爵家が自分たちを抹殺するため、騎士たちを差し向けてきたことを理解している。

「マイロさん、質問いいですか?」
「なにかな…ユミル」
「カーバンクルの調査で、ディオグランデ公爵家の人たちは善人判定されました。でも、あの人たちはロカ様の呪縛を放置したまま過ごしていました。理由をご存知ですか?」

彼は少し険しい表情をとるも、何か考え込む仕草を取る。

「ふむ、ルティーナは我々の状況を、まだ家族に話せていないようだ」

ここで、ルティーナ様の名前が出て来るとは思わなかったよ。1人で何かを抱えているとは思ったけど…。

「何故、ルティーナ様のことを?」
「解放されて以降、私はディオグランデの動向を知るため、全く関わりのない女性の幽霊に事情を説明し、本家の状況を調査してもらった。その調査中に、ルティーナと知り合い意気投合したことで、彼女はカーバンクルの件を聞き出そうとしたのだが…」

幽霊だから、巻き込まれても問題ないのだろうか? その辺が気になるけど、マイロさんの様子が何か変だ。その幽霊さんに、何を言われたのかな?

「正直、耳を疑う程の内容だった。今の当主は、カーバンクルとの契約の闇について、何も聞かされていないのだ」

え……何も知らない? 公爵家の人間が?

「うっそだ~~。そういった特殊な事情の場合、普通子供全員に全て語り継ぐものでしょ?」

マイロさんは、真面目な顔で私を見ている。

「え…本当に何も知らないの?」
「ああ。その後の調査の結果で判明したことだが、奴ら公爵家は代々長男に爵位を継承させている。おそらく、真実を知っているのは長男のみ、今回に限り、前公爵が突然の災害に遭遇し亡くなったことで、何の事情も知らない王家が介入し、最も公爵家として相応しい実績を挙げている三男のアシュトンに爵位を継承させたのだ」

驚きですよ…公爵様がまさかの何も知らないとは。100年という長い歳月の中で、長男だけが闇を知っている流れになるなんてね。そりゃあ、善人なわけだよ、何の事情も知らないのだから。

そもそも、精霊契約しているのに、肝心のカーバンクルが一度も姿を見せないことに、疑念を抱いたことはないのだろうか? もしかして、ルティーナ様の体調不良って……。

「まさか、ルティーナ様に全部説明したんじゃ?」

「私の目的は、公爵家の悪行を公の場で、全てを明るみにすること。だから、私はこの事実を最大限に利用した。女性の幽霊に頼み、ルティーナをここへ連れてきてもらい、全てを話したのだ」

ルティーナ様の場合、全く無関係の人間になる。そんな普通の公爵夫人に、公爵家の闇を全て明かしたら……。

「彼女は顔を真っ青にしつつ、護衛と共に帰っていった。現公爵家当主は近衛騎士団団長、彼に話せば、罪の意識に囚われ、すぐに王族に明かすと踏んだのだが………まだ、何も話していないとはな」

そりゃあ、誰にも話せず苦しむわけだ。嫁いだ公爵家に、そんな裏があるのだなんて思いもしなかっただろう。近衛騎士団団長だから、頻繁に王族と接しているはず。そんな公爵様に全てを話したら、彼の目論見通り、王家に話すかもしれない。

「でもさ、もうカーバンクル自身が王城に行って、王様に全て話したよ。法的な裁きを受けるのも時間の問題、目的達成なのでは?」

精霊を怒らせたら、国が滅亡する恐れもある。きちんと、裁いてくれると思うけど?

「それは、目的の一つに過ぎない。今頃、カーバンクルを納得させ、他の精霊を怒らせず、世間に知られないよう穏便に終息させる折衷案を模索している最中だろう。王族とは、そういう生き物だ」

うーん、王族は国を第一に考えるから、そう動くのは当たり前な気がするけど、マイロさんはそれだと納得してくれないのか。かといって、目的を達成させたとしても、彼の無念は晴れないと思う。

「なんだ? 言いたいことがあるのなら、言いなさい」

彼は私の反応が気に食わないのか、睨んでくる。

「貴方の場合、ディオグランデ公爵家に対して、どんな処分が下されても納得しないのでは?」

「そ…そんな事は…」

図星なのか、彼は明らかに動揺する。今生きている人々に天誅を下しても、自分の人生を滅茶苦茶にした家族はもう死んでこの世にいないから、何を行なっても、無念は絶対に晴れないだろう。

そうなると、残す手段は………。

「あのさ、マイロさんは先代長ロカ様と話し合うべきだと思うな」
「な!?」
「お互い解放されたのだから、会えるでしょ?」
「馬鹿な!! そんな事、出来るわけないだろう!!  カーバンクル側にとって、私は諸悪の根源。今更謝罪したところで…許してくれるはずがない!! むしろ、ロカは私を…殺したいと…思っているのかもしれない」


マイロさん、激昂しているけど、身体を震わせ動揺し、何かに怯えているようだ。もしかして、ロカ様がここへやって来て、いずれ自分を殺すと思っているのかな? 彼もロカ様に会いたいと、謝罪したいと思っているけど、そんな自分勝手なことは許されないと葛藤しているのだろうか?

「トーイは、どうなの? この人を殺したいと思う?」

トーイはカーバンクルなのだから、直接聞けばいい。マイロさんも私に集中していたせいで、トーイの存在を忘れかけていたようで、ばっと彼女を見る。

「そうだね。何の事情も知らない時点で、君に出会っていたら、躊躇なく捕縛して、聖域に連れていき、隷属契約と同じ期間の呪縛を与えていただろう。でも、こうして公爵家側の事情を知ったことで、君は公爵家側だけど、加害者でもあり、被害者でもある存在だとわかった。そうなってくると、もう当事者同士で話し合い、互いに納得できる手段を見つけるしかないね」

マイロさんはトーイの意見を聞いて目を見開き、ワナワナと身体を震わせる。

「何故、そんな達観した意見を言える!! 私のせいで、君たちは約100年間聖域に閉じ込められたのだぞ!!」

実を言うと、私も同じことを思っています。あれだけ憎んでいたディオグランデ家に対して、偵察に来たカーバンクルたちは暴走することなく、忠実に長から言われた命令をこなしている。王家に託すと言われた時も、反対意見こそあったけど、暴走するには至らなかったのだから。

「ユミルと出会えたからだよ。僕たちは彼女と出会い、心の底から愛せる者を見つけられたからこそ、王族の判断に委ねると聞かされた時も、不思議と納得できたのさ。勿論、憎悪や蟠りが消失したわけじゃないけど、もし憎悪を宿したまま短絡的な行動を起こした場合、ユミルは僕たちのことを嫌ってしまう。《復讐》と《愛する者への守護》、どちらをとるか、この天秤はすぐに愛へと傾いた。要するに、《復讐》よりも、《ユミルの守護》を優先したってことさ」

そんなはっきり言われると、ものすっごく恥ずかしいのですが!?

「愛する者…まさか、ユミルは加護を?」
「その通り。その気になれば、ロカ様をここに召喚できる。さあ、どうする? もう、覚悟を決めなよ。正直、ロカ様が君をどう思っているのか、それは僕にもわからない。でも、勇気を出して話し合わないと、君は前へ進めないよ」

私が加護持ちとわかり、マイロさんは考え込む。

「わかった……逃げているだけでは解決しないようだ。ロカと…話し合おう」

ここから聖域までは、かなりの距離がある。列車があるとはいえ、遠距離だからこそ、行っていいものか躊躇いを生じさせてしまうけど、私なら今すぐにでも、ロカ様を召喚できる。そのせいなのか、彼はそんな時間をかけることなく覚悟を決めて、ロカ様との対談を承諾してくれた。


○○○


本作品をここまで読んで頂き、誠にありがとうございます。諸事情により、2ヶ月ほど更新を止めさせて頂きます。2026年2月中に、連載を再開させる予定です。来年も宜しくお願い致します。
犬社護




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