19 / 96
本編
17話 スラム地区に住む少年と幽霊たち
精霊が魔物に変装していることを知ったおかげで、私の心もかなり楽になる。
あれからトーイも精霊の気配の出所を探ろうと真剣になって、周囲を捜索しているのだけど、今の所そういった場所はない。そして、何故かあれから魔物に化けた精霊も現れないのだけど、私たちを見つめる視線が増えてしまう。ただ、さっきまでとは違い、視線に嫌な感覚を受けない。
「トーイ、この視線って幽霊なのかな?」
「多分ね。もしかしたら、生者も混じっているのかもしれない」
幽霊さんなら、さっきの魔物に化けた精霊さんのように、こっちに来てほしい。ずっといるせいか、私自身もこの環境に慣れちゃったよ。それに精霊がいるのだから、悪い幽霊はいないんじゃないかな?
「生者か……それなら人が住んでいそうな建物を尋ねてみようよ。人がいたら、私たちの事情を話せばいいよ。もしかしたら、受け入れてくれるかも知れないよ」
「誰も出てくる様子もないし、そうしますか」
このまま外を彷徨いていても、埒が明かないもの。
人が住めそうな建物を探索していると、一つの家のドアが不意に開く。
「あ!! 見つけたぞ、盗人め!!」
12歳くらいの茶髪の男子が、特に驚いた様子もなく、申し訳ない表情でこっちに近づいてくる。もしかして、幽霊さんたちから、私たちの存在を教えられたのかな?
「う~ん、拍子抜けだよ。なんで、逃げないのさ?」
トーイはかなり怒っていたけど、相手が既に反省しているせいか、完全に虚を突かれたせいで、調子が狂っている。
「幽霊たちから、散々搾られたんだよ。お前たちは、孤児でこの街へ来たばかりなんだろ?」
「そうだよ。君はそんな私たちを見て、財布を盗んだ最低野郎だね」
言い方がきつい。
でも、ここで主導権を握られたら、お金を返してもらえない。
男の子はトーイを見て、少し驚いている。
「お前、容姿と言葉が合ってないぞ。貴族じゃなく、孤児なのは事実なんだな」
もしかして、トーイを貴族のお嬢様と思って、財布を盗んだの? 彼女の見た目は、貴族のお嬢様っぽく見えるから、あなたの気持ちはわかるけど、それでも盗みは良くない。
「あのね~、もう少し常識的に考えなよ。貴族のお嬢様が幼女をおんぶして、この賑やかな通りを歩くわけないでしょう? 僕もユミルも、孤児だよ。それよりも、僕から盗んだお金を返せ」
「悪い、一部使っちまった」
男の子も観念したのか、すぐに自白する。
「使い道は?」
「食べ物だよ。今は、俺のアルバイトの給料と災害援助金だけで生活しているけど、少し足りないからお前らの金を盗んだ。それを、歳下の孤児たちに昼食用として一部を使っちまった」
凄く真っ当な理由だよ。
盗みは良くないけど、食費のためにやった行為なんだ。
孤児院と違って、ここにいる孤児たちの生活は相当厳しいんだね。
「何故、孤児院に入れないのかな? 宿の主人から定員オーバーと聞いてはいるけど、君くらいの年齢になると、働き先も見つかりやすくなり巣立てるはずだ」
この世界では、12歳くらいで孤児院を巣立つんだ。
日本じゃ考えられない。
男の子は、何故か悲しそうな顔を浮かべる。
「今、孤児院にいるのは10歳未満の子供ばかりで、空きはない。このスラム地区にいる子だって、全員が5~8歳くらいなんだ。その年齢で、働き口を見つけるのは厳しい。だから、俺が食費の面倒を見ている。この1年、災害援助金のおかげで成り立ってきたけど、皆の食欲も増してきたせいもあって、食費の負担が増加して、お金が足りなくなっているんだ。今月、俺のアルバイト料を足しても足りないから、貴族や裕福な連中からお金を盗もうと思ったのさ。手始めに、盗んだのがお前たちだよ」
ということは、彼は初犯か。
私たちが許せば、彼が裁かれることもないんだね。
みんな、今を暮らしていくため、色々と苦労しているんだね。
私も人のこと言えないから、頑張らないといけない。
あれ?
なんか、別の焦げた建物の中から70歳くらいの男性が出てきた。そのまま男の子のもとへ向かっているけど、なんだか怒ってない?
「カイト、この馬鹿野郎が!!」
「痛!?」
うわあ、頭にゲンコツを食らって痛そう~~。もう逃げないと思ったのか、トーイも彼を解放したよ。
「トマス爺、いて~~よ」
「仲間から話を聞いたぞ!! 生活に困っていようとも、人様のものだけは盗むなと言っておいただろ!!」
「裕福な連中ならいいかと…」
「言い訳するな!! 2人とも、うちのカイトが迷惑を掛けてすまない」
おじいさんがカイトを捕まえて、深くお辞儀してきた。
「ごめん」
カイトも反省しているのかな。
「トーイ、許してあげようよ」
「ユミルがそう言うのなら許すよ。僕たちと同じ孤児のためにやったことだしね」
これで和解成立だ。
改めておじいさんに自己紹介しようと顔を向けると、彼の身体は半分透けていた。
え……もしかして幽霊さんなの?
あれからトーイも精霊の気配の出所を探ろうと真剣になって、周囲を捜索しているのだけど、今の所そういった場所はない。そして、何故かあれから魔物に化けた精霊も現れないのだけど、私たちを見つめる視線が増えてしまう。ただ、さっきまでとは違い、視線に嫌な感覚を受けない。
「トーイ、この視線って幽霊なのかな?」
「多分ね。もしかしたら、生者も混じっているのかもしれない」
幽霊さんなら、さっきの魔物に化けた精霊さんのように、こっちに来てほしい。ずっといるせいか、私自身もこの環境に慣れちゃったよ。それに精霊がいるのだから、悪い幽霊はいないんじゃないかな?
「生者か……それなら人が住んでいそうな建物を尋ねてみようよ。人がいたら、私たちの事情を話せばいいよ。もしかしたら、受け入れてくれるかも知れないよ」
「誰も出てくる様子もないし、そうしますか」
このまま外を彷徨いていても、埒が明かないもの。
人が住めそうな建物を探索していると、一つの家のドアが不意に開く。
「あ!! 見つけたぞ、盗人め!!」
12歳くらいの茶髪の男子が、特に驚いた様子もなく、申し訳ない表情でこっちに近づいてくる。もしかして、幽霊さんたちから、私たちの存在を教えられたのかな?
「う~ん、拍子抜けだよ。なんで、逃げないのさ?」
トーイはかなり怒っていたけど、相手が既に反省しているせいか、完全に虚を突かれたせいで、調子が狂っている。
「幽霊たちから、散々搾られたんだよ。お前たちは、孤児でこの街へ来たばかりなんだろ?」
「そうだよ。君はそんな私たちを見て、財布を盗んだ最低野郎だね」
言い方がきつい。
でも、ここで主導権を握られたら、お金を返してもらえない。
男の子はトーイを見て、少し驚いている。
「お前、容姿と言葉が合ってないぞ。貴族じゃなく、孤児なのは事実なんだな」
もしかして、トーイを貴族のお嬢様と思って、財布を盗んだの? 彼女の見た目は、貴族のお嬢様っぽく見えるから、あなたの気持ちはわかるけど、それでも盗みは良くない。
「あのね~、もう少し常識的に考えなよ。貴族のお嬢様が幼女をおんぶして、この賑やかな通りを歩くわけないでしょう? 僕もユミルも、孤児だよ。それよりも、僕から盗んだお金を返せ」
「悪い、一部使っちまった」
男の子も観念したのか、すぐに自白する。
「使い道は?」
「食べ物だよ。今は、俺のアルバイトの給料と災害援助金だけで生活しているけど、少し足りないからお前らの金を盗んだ。それを、歳下の孤児たちに昼食用として一部を使っちまった」
凄く真っ当な理由だよ。
盗みは良くないけど、食費のためにやった行為なんだ。
孤児院と違って、ここにいる孤児たちの生活は相当厳しいんだね。
「何故、孤児院に入れないのかな? 宿の主人から定員オーバーと聞いてはいるけど、君くらいの年齢になると、働き先も見つかりやすくなり巣立てるはずだ」
この世界では、12歳くらいで孤児院を巣立つんだ。
日本じゃ考えられない。
男の子は、何故か悲しそうな顔を浮かべる。
「今、孤児院にいるのは10歳未満の子供ばかりで、空きはない。このスラム地区にいる子だって、全員が5~8歳くらいなんだ。その年齢で、働き口を見つけるのは厳しい。だから、俺が食費の面倒を見ている。この1年、災害援助金のおかげで成り立ってきたけど、皆の食欲も増してきたせいもあって、食費の負担が増加して、お金が足りなくなっているんだ。今月、俺のアルバイト料を足しても足りないから、貴族や裕福な連中からお金を盗もうと思ったのさ。手始めに、盗んだのがお前たちだよ」
ということは、彼は初犯か。
私たちが許せば、彼が裁かれることもないんだね。
みんな、今を暮らしていくため、色々と苦労しているんだね。
私も人のこと言えないから、頑張らないといけない。
あれ?
なんか、別の焦げた建物の中から70歳くらいの男性が出てきた。そのまま男の子のもとへ向かっているけど、なんだか怒ってない?
「カイト、この馬鹿野郎が!!」
「痛!?」
うわあ、頭にゲンコツを食らって痛そう~~。もう逃げないと思ったのか、トーイも彼を解放したよ。
「トマス爺、いて~~よ」
「仲間から話を聞いたぞ!! 生活に困っていようとも、人様のものだけは盗むなと言っておいただろ!!」
「裕福な連中ならいいかと…」
「言い訳するな!! 2人とも、うちのカイトが迷惑を掛けてすまない」
おじいさんがカイトを捕まえて、深くお辞儀してきた。
「ごめん」
カイトも反省しているのかな。
「トーイ、許してあげようよ」
「ユミルがそう言うのなら許すよ。僕たちと同じ孤児のためにやったことだしね」
これで和解成立だ。
改めておじいさんに自己紹介しようと顔を向けると、彼の身体は半分透けていた。
え……もしかして幽霊さんなの?
あなたにおすすめの小説
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています