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本編
29話 ユミルの秘策
15分の休憩後、訓練生たちの模擬戦が上位順から始まる。
この街の騎士団は完全実力主義のため、強い騎士として相応しいと認められるほど、給料も上がっていく。ランク1位の騎士ともなると、そのお給料は平民と思えないほどの破格のものらしい。
正規の騎士団は50名、訓練生は9名、それぞれがランク付されており、カイト兄は最下位だ。半年に一度、昇給試験があるらしく、下位が上位に挑戦状を叩きつける事が可能で、勝てばランクも上がり昇給となり、自分の強さを証明できる。
「どうです? できそうですか?」
小声による話し合いも終わり、アイリス様はカイト兄に確認をとっている。
「多分、でき…ます。さすがですね」
「新しく取得したスキルに合わせていますから、これなら容易に取得できるはずです」
スキルって一朝一夕で習得できるものじゃないけど、何を求めているのだろう? 15分の休憩も終わり、上位の人たちから模擬戦を始めていく。皆、毎日訓練を受けているだけあって、年齢の高い人はもう息も整っているし、動きも俊敏だ。
カイト兄は、この訓練についていけるのだろうか?
あっという間に順番が回ってきたけど、まだ回復しきれていない。
あの状態でやるの?
対戦相手の14歳くらいの男の子も、カイト兄と同程度の疲れを見せているから、体力的には同等なのかな。
「お願いします!!」
「カイト、かかってこい!!」
模擬戦が始まった。カイト兄は木剣を正面に構えると、ほぼ同時に2人がまっすぐ突っ込んでいき、鍔迫り合いとなってぶつかり合う。そこからは激しい攻防が繰り出され、2人は笑顔で戦い合っている。そして、体力が限界に近いと悟ったのか、互いが同時に切り込んでいき、相手は上段構えから振り下ろすも、カイト兄はギリギリのところで回避して…目にも止まらぬ速度で、突きを何度も相手の上半身へと打ち込んだ。
そして、その場に片膝だけが地面に着く。
「いって~~~なんだよ、その突きの速度は? お前、本当に魔力なしか?」
男の子はそのまま立ち上がると、カイト兄と語り出す。
「魔力はないに等しいですけど、自分自身の反応速度を強化させるスキルを身につけました。今使った技は、アイリス様から教えて頂いたものです。相手に届く最速攻撃は[突き]なので、習得したばかりのスキルを使い、連続で突きを放ちました」
ほほう、[神経強化]を剣術の[突き]に利用したのか。だから、あれだけの連続攻撃を放てたんだ。
「カイト、お前のことを魔力なしと侮っていたけど気に入ったよ」
お互いが握手を交わす。
相手の男の子が、カイト兄を認めてくれた証拠だ。
上位の訓練生たちも、今のカイト兄を見て顔色を変えている。
侮蔑とか、そういった差別的なものじゃない。
カイト兄は皆の視線に気づくことなく、こちらへやって来た。
その時、自分のステータスを確認したのか笑っている。
「アイリス様、ありがとうございます。剣技[連牙突]を習得できました」
「やった!! 思った通りよ!! どう、ユミル?」
う~ん、ドヤ顔で上から目線での物言いだ。
初日でいきなりの派生スキルとなる剣技を習得って見事としか言いようがないのだけど、どう答えよう。
「攻撃スキルとなる剣技の習得、お見事です。でも、それと同時にカイト兄の欠点も浮き彫りとなりましたね。訓練生の方々も、それを理解しているようです」
「「え?」」
その様子だと、2人とも気づいていないんだね。ここからでも、訓練生の方々が対戦相手の男の子に、模擬戦のことを聞いている様子が窺える。
「丈夫な木剣であっても、高速の突きを生身の身体でくらったら、普通立っていられないと思います」
さっきの男の子は痛がっているだけで、平然と歩いていき、仲間と話し合っている。対人戦とはいえ、あの時の模擬戦では訓練の影響で、余力が互いに残されていない状態だったから、手加減なんてできないはずだ。それにも関わらず、相手は少し痛がる程度のダメージしか通っていない。
「そうか。スキル[身体強化]のせいで、ダメージが少ないのか。」
「あ……」
今のカイト兄に必要なのは、相手の防御を無視して攻撃を通させる攻撃スキルだ。どんなスキルで防御しようとも、一撃で相手に確固たるダメージを与える貫通攻撃、イメージはあるんだけど、習得可能かが心配だ。
「カイト兄、孤児たちの食費を工面するため、アルバイトをしてるって言ってたよね?」
「ああ」
「どんな仕事をしていたの?」
突然尋ねたこともあり、カイト兄は困惑する。
「ええと…靴磨き、食器洗い、木工ギルドでの製造補助、剣や包丁の研ぎ、マッサージ、客引き、ビラ配り、飲食店での接客…」
カイト兄、これまでどれだけの業種に挑戦していたの? でも、私の求める業種が入っていたのが不幸中の幸いかな。
「その中で、経験豊富なのは?」
「それなら、製造補助、研ぎ師、マッサージの3つだ」
よし、それならいけるかもしれない!!
と言っても、模擬戦も終わって間もないから、試すのは明日だね。
今は、訓練に集中してもらおう。
「ユミル、何を狙っているの?」
アイリス様は、私の狙いに気づいていないようだ。
「カイト兄の欠点は、攻撃力の低さです。魔力のない状態で攻撃力を上げるには、武器の質を上げるか、魔力を使用しないスキルで補うしかありません」
同じ武器を使用しての模擬戦の場合、武器自体の攻撃力が同じなのだから、当然カイト兄の方が不利だ。アイリス様はそれを理解しているからこそ、最速攻撃となる剣技[連牙突]を思いついた。でも、さっき見てわかったけど、あれだけの突きを浴びせても、相手へのダメージは少ない。一撃一撃の威力が相手の防御力と大差ないから、大きなダメージを与えられないんだ。これが実戦だった場合、違った結果になるかもしれないけれど、模擬戦レベルだと、カイト兄の攻撃力は訓練生相手であっても、通用しないってことだ。
「スキルなんて早々身につくものじゃないわ。さっきのだって、[神経強化]を最大限に利用したからこそ習得できたのよ。無駄の少ない動作で攻撃をほぼ同時に複数回与えることができれば勝利するかもと思っての策だったけど……」
「大丈夫です。カイト兄の答えてくれた3つのバイトのうち1つを利用すれば、すぐに身につく最高のスキルがあります。習得できれば、攻撃力の低さを一気にカバーできます」
「「え!?」」
「訓練終了後、私が教えますので、明日の模擬戦で試してください」
アイリス様もカイト兄も、どのバイトがスキル習得に繋がるのかを理解していない。つまり、何も知らないまま[アレ]を覚えてしまったんだ。経験豊富である以上、あとは実践するしかない。
訓練終了後、練習相手を探してみよう。
この街の騎士団は完全実力主義のため、強い騎士として相応しいと認められるほど、給料も上がっていく。ランク1位の騎士ともなると、そのお給料は平民と思えないほどの破格のものらしい。
正規の騎士団は50名、訓練生は9名、それぞれがランク付されており、カイト兄は最下位だ。半年に一度、昇給試験があるらしく、下位が上位に挑戦状を叩きつける事が可能で、勝てばランクも上がり昇給となり、自分の強さを証明できる。
「どうです? できそうですか?」
小声による話し合いも終わり、アイリス様はカイト兄に確認をとっている。
「多分、でき…ます。さすがですね」
「新しく取得したスキルに合わせていますから、これなら容易に取得できるはずです」
スキルって一朝一夕で習得できるものじゃないけど、何を求めているのだろう? 15分の休憩も終わり、上位の人たちから模擬戦を始めていく。皆、毎日訓練を受けているだけあって、年齢の高い人はもう息も整っているし、動きも俊敏だ。
カイト兄は、この訓練についていけるのだろうか?
あっという間に順番が回ってきたけど、まだ回復しきれていない。
あの状態でやるの?
対戦相手の14歳くらいの男の子も、カイト兄と同程度の疲れを見せているから、体力的には同等なのかな。
「お願いします!!」
「カイト、かかってこい!!」
模擬戦が始まった。カイト兄は木剣を正面に構えると、ほぼ同時に2人がまっすぐ突っ込んでいき、鍔迫り合いとなってぶつかり合う。そこからは激しい攻防が繰り出され、2人は笑顔で戦い合っている。そして、体力が限界に近いと悟ったのか、互いが同時に切り込んでいき、相手は上段構えから振り下ろすも、カイト兄はギリギリのところで回避して…目にも止まらぬ速度で、突きを何度も相手の上半身へと打ち込んだ。
そして、その場に片膝だけが地面に着く。
「いって~~~なんだよ、その突きの速度は? お前、本当に魔力なしか?」
男の子はそのまま立ち上がると、カイト兄と語り出す。
「魔力はないに等しいですけど、自分自身の反応速度を強化させるスキルを身につけました。今使った技は、アイリス様から教えて頂いたものです。相手に届く最速攻撃は[突き]なので、習得したばかりのスキルを使い、連続で突きを放ちました」
ほほう、[神経強化]を剣術の[突き]に利用したのか。だから、あれだけの連続攻撃を放てたんだ。
「カイト、お前のことを魔力なしと侮っていたけど気に入ったよ」
お互いが握手を交わす。
相手の男の子が、カイト兄を認めてくれた証拠だ。
上位の訓練生たちも、今のカイト兄を見て顔色を変えている。
侮蔑とか、そういった差別的なものじゃない。
カイト兄は皆の視線に気づくことなく、こちらへやって来た。
その時、自分のステータスを確認したのか笑っている。
「アイリス様、ありがとうございます。剣技[連牙突]を習得できました」
「やった!! 思った通りよ!! どう、ユミル?」
う~ん、ドヤ顔で上から目線での物言いだ。
初日でいきなりの派生スキルとなる剣技を習得って見事としか言いようがないのだけど、どう答えよう。
「攻撃スキルとなる剣技の習得、お見事です。でも、それと同時にカイト兄の欠点も浮き彫りとなりましたね。訓練生の方々も、それを理解しているようです」
「「え?」」
その様子だと、2人とも気づいていないんだね。ここからでも、訓練生の方々が対戦相手の男の子に、模擬戦のことを聞いている様子が窺える。
「丈夫な木剣であっても、高速の突きを生身の身体でくらったら、普通立っていられないと思います」
さっきの男の子は痛がっているだけで、平然と歩いていき、仲間と話し合っている。対人戦とはいえ、あの時の模擬戦では訓練の影響で、余力が互いに残されていない状態だったから、手加減なんてできないはずだ。それにも関わらず、相手は少し痛がる程度のダメージしか通っていない。
「そうか。スキル[身体強化]のせいで、ダメージが少ないのか。」
「あ……」
今のカイト兄に必要なのは、相手の防御を無視して攻撃を通させる攻撃スキルだ。どんなスキルで防御しようとも、一撃で相手に確固たるダメージを与える貫通攻撃、イメージはあるんだけど、習得可能かが心配だ。
「カイト兄、孤児たちの食費を工面するため、アルバイトをしてるって言ってたよね?」
「ああ」
「どんな仕事をしていたの?」
突然尋ねたこともあり、カイト兄は困惑する。
「ええと…靴磨き、食器洗い、木工ギルドでの製造補助、剣や包丁の研ぎ、マッサージ、客引き、ビラ配り、飲食店での接客…」
カイト兄、これまでどれだけの業種に挑戦していたの? でも、私の求める業種が入っていたのが不幸中の幸いかな。
「その中で、経験豊富なのは?」
「それなら、製造補助、研ぎ師、マッサージの3つだ」
よし、それならいけるかもしれない!!
と言っても、模擬戦も終わって間もないから、試すのは明日だね。
今は、訓練に集中してもらおう。
「ユミル、何を狙っているの?」
アイリス様は、私の狙いに気づいていないようだ。
「カイト兄の欠点は、攻撃力の低さです。魔力のない状態で攻撃力を上げるには、武器の質を上げるか、魔力を使用しないスキルで補うしかありません」
同じ武器を使用しての模擬戦の場合、武器自体の攻撃力が同じなのだから、当然カイト兄の方が不利だ。アイリス様はそれを理解しているからこそ、最速攻撃となる剣技[連牙突]を思いついた。でも、さっき見てわかったけど、あれだけの突きを浴びせても、相手へのダメージは少ない。一撃一撃の威力が相手の防御力と大差ないから、大きなダメージを与えられないんだ。これが実戦だった場合、違った結果になるかもしれないけれど、模擬戦レベルだと、カイト兄の攻撃力は訓練生相手であっても、通用しないってことだ。
「スキルなんて早々身につくものじゃないわ。さっきのだって、[神経強化]を最大限に利用したからこそ習得できたのよ。無駄の少ない動作で攻撃をほぼ同時に複数回与えることができれば勝利するかもと思っての策だったけど……」
「大丈夫です。カイト兄の答えてくれた3つのバイトのうち1つを利用すれば、すぐに身につく最高のスキルがあります。習得できれば、攻撃力の低さを一気にカバーできます」
「「え!?」」
「訓練終了後、私が教えますので、明日の模擬戦で試してください」
アイリス様もカイト兄も、どのバイトがスキル習得に繋がるのかを理解していない。つまり、何も知らないまま[アレ]を覚えてしまったんだ。経験豊富である以上、あとは実践するしかない。
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