転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

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本編

42話 やられたらやり返す、倍返しだ

怒りに満ち溢れた執務室にて、私は自分の開発した魔道具[モバイルバッテリー]の件を話し、実際にその場で実演し2つ作製すると、部屋内から怒気が鎮まっていくのを感じた。マーカス様は、1カラットサイズの魔石を手に持ち、全身をくまなく凝視している。

「信じられん…こんな小さな空魔石に…魔力が…」
「この中にあるユミルの魔力を、他人が本当に使えるの? ……わ、小さな火が出た!! 色も、私の知る無色に変化したわ」

ティアナ様、驚くのはわかりますが、部屋内で火魔法を使わないでください。

「こちらも微風ですが、風が出ましたね。あ、色が無色へ変化しましたか」

とりあえず、現状況だけを伝えておこう。

「元々、魔力欠損症であるカイト兄のために開発したものなんです。今のレベルだと、日常生活で使用する魔道具のオンオフする程度なら実用にも耐えられますが、戦闘用の攻撃魔法や補助魔法を使おうとしたら、魔石自体が小型なせいもあって割れちゃいます。トーイ、リアテイル様にもお見せしたのですが、[絶対に外で披露してはいけません]と強く言われました」

「当然でしょう。今の段階でこれを安易に広めたら、魔道具業界に悪影響を及ぼします。きちんとした正規の場で発表しないといけません」

「はい。今では、トーイとリアテイル様も面白がって、色々な空魔石を使って実験を行い、データを収集してくれています。カイト兄も、その実験に付き合ってくれています。ゆくゆくは、信頼の置ける貴族に譲渡する予定でした」

「ちょっと待って、ユミル!! まさか、その貴族って…」

ティアナ様のご想像通りです。

「はい、カルバイン子爵家です。アイリス様に、研究の続きをやってもらおうと思っていました」

あれから少しずつ研究を進めていくと、アイリス様に譲渡することをリアテイル様から薦められた。私も賛成だったので、あとは興味を持ってくれるよう、データを集めないといけないので、教会内の部屋で地道に実験しているところなんだよね。

「この発見は、魔道具業界に震撼をもたらします。我々の望むデータが全て集まれば、魔力欠損症患者だけでなく、あらゆる分野に応用可能でしょう。だからこそ、膨大なデータが必要とされます。今の時期から始めたとしても、学会発表まで到底間に合いません」

そう、そこなんだよ。空魔石の再利用となると、あらゆる分野が関わってくる、魔石の許容量や相性などの膨大な研究データを集めないといけないのだけど、どう考えても1人でできる量じゃない。

「その件なんですけど、アイリス様がこの学会で披露して、その危険性、応用性、多様性をめいいっぱいアピールしてから、皆に共同研究を求めてはどうでしょうか? メインの論文投稿者や学会発表者については共同研究先の方にしてもらい、それを支援する形でアイリス様の名を論文などに入れてもらうんです。これなら共同研究先の研究者の実績になりますし、アイリス様の評価も向上しますし、分散させることで盗まれる危険性も減ります。色んな方々が協力してくれることで、研究の幅も一気に広がり、数年のうちには実用レベルまで発展すると思うのですが?」

中学校にいた時、古典や考古学に詳しい先生に日本伝統や日本文学について色々と教わっていた。新規の情報が見つかった場合は、どんな分野であっても論文に投稿したり、学会発表を行なっているらしいけど、そういった人々の多くが、互いの情報を交換しながら共同研究という形で研究を進めている。

この世界でのそういった仕組みはわからないけど、また窃盗犯共がアイリス様の研究を盗みに来るのであれば、大勢の協力者を作り、得られる名誉自体を分散させればいい。

あ…あれ? マーカス様もティアナ様も、急に黙ったけどなんで?

「す…」

す?

「素晴らしい!! そのアイデア、素晴らしいですよ、ユミル!! 本来こういった研究は、各学院や研究所の派閥だけで実施されていくものですが、今言った内容であれば、皆も納得し協力してくれるでしょう」

笑顔で絶賛するマーカス様、さっきまでの怒りが嘘のようだ。話を聞いていくと、この世界の研究者たちは、派閥内だけで情報を収集しており、それ以外の同分野の研究者たちは皆ライバル同士、互いの情報共有もしないみたい。

「ユミル、これなら絶対犯人共をギャフンと言わせられるわ!! 凄い発見とアイデアよ!!」

やった、ティアナ様もご機嫌になってくれた。
2人して認めてくれたのなら、あとはアイリス様への説得だけど大丈夫かな?


○○○ アイリス視点


悔しい悔しい悔しい悔しい。

2年間ポーションの研究に没頭し、やっと自分の夢の一つだった劣化版エリクサーの調合に成功した。完成したと思った品の効果保持期間が短かいと発覚したことで、メイリンと共に急いで必要な材料を集めて、その場で調合を開始し、納得のいくものが出来上がって、家に戻ってきた。メイドのルミナスとレサリアも、学会のスライドを作製してくれたおかげで、なんとか間に合うと思った。ユミルの件を伏せている状態で私の護衛を話した時も、『アイリス様の安全が第一です』と笑顔で薦めてくれた。

許せない許せない許せない。

この2年間私は目標達成のために必死に動き、失敗した時は落ち込んだ私に対して、2人に沢山慰めてもらったし、時には怒ってもくれた。私にとっては、ティアナ姉様と同じくらいの頼れるお姉様たちだと思っていたのに……これまでの研究成果で見せ合った喜びも全て…全てが偽物だったのね!! 全てを知った上で、私をずっと手のひらの上で操っていたのね!!

許せない、復讐したいけど…私にはそんな力がない。
今から動いても、何もできない。
仮に、何かがあったとしても…もう誰も信用できない。

「アイリス、あなたはこのまま泣き寝入りするの?」

ベッドの布団にくるまり泣いていると、お母様の声が突然聞こえてきた。泣き寝入りと言われたことで、頭がカッとなっり、布団を捲り上げる。

「そんなの絶対に嫌です!! あいつらを許せない!! でも、研究を続けるにしても、もう誰も信用できないんです!!」

お母様の顔を見ると、涙を拭いた跡が残っているけど、そこには悲しみを一切感じさせないほどの強い信念のようなものを感じる。

私だって、このまま泣き寝入りだなんてごめんだ。

でも、全ての研究資材を盗まれた以上、劣化版エリクサーの研究に関してはもう諦めるしかない。興味の持てる別の分野を探して、また一から始めればいい。でも、あの2人が姿を変えて、この家に戻って来ることを考えたら、誰も信用できないのよ。

「何を言ってるの? 今のあなたにとって、絶対に裏切ることのない仲間、いいえライバルが1人いるでしょう?」

ライバル……ユミルだ!!
そうか、いくらあの2人でも、4歳の幼女には変装できないわ。

「あの子となら楽しい研究ができると思いますけど、精霊様方が許してくれるかどうか……」

あの子は、カーバンクル族とフェニックス族に愛されている存在だ。私の自分勝手な欲望のために、あの子を巻き込むわけにはいかない。

「何も動いていないのに、最初から諦めてどうするのです!! あなた自身が動き、ユミルや精霊様方を納得させなさい。それとも、あなたの研究者としての矜持は、その程度のものなのですか?」

私にだって、研究者としてのプライドがある。研究者の誰もが、自分でテーマを見つけ出し、自分だけの力で問題を解決させ、新たな発見を生み出していく。私は学院に入学できる年齢に達していないから、派閥もないし、味方も少ない。ユミルが私の仲間になってくれたら、凄く心強い。

このまま泣き寝入りなんて、絶対に嫌だ!!
犯人共を見返してやる!!

「精霊様方に嘘を付けません。私の抱えているこの思いを、包み隠さず正直に言います。私のプライドを捨ててでも、犯人共を必ず見返します!!」

「そう。さすが、私たちの娘よ」

お母様が、優しく私を抱きしめる。そうだ、お母様やお父様だって、学院時代に友人に裏切られ、冤罪を押し付けられ、刑務所に入れられそうになったことがあると言ってた。これから先、人に裏切られることが沢山あるかもしれないけど、いちいち悔しがっていたら、そいつらの思う壺だ。今後は、人に裏切られることを想定して、研究を積み重ねていこう。

「犯人共を絶対に許しません。やられた分は、いつか必ず10倍にしてやり返します!!」
「偉いぞ、アイリス」

いつの間にか、お父様やお姉様、ユミルも私の部屋に入ってきている。

「だが、そのやり返しは『いつか』ではなく、『すぐに』訪れそうだ」
「え、どういう意味でしょう?」

その後、お父様の話してくれた内容に、私は驚愕することとなる。
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