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本編
56話 学会、終わった〜。王都を散策しよう
あれれ~。
ここって、宿泊先のお部屋にある寝室だ。
夕方のはずが、朝になってるよ。
懇親会は、どうなったの?
「ユミル、おはよう」
「おはよう。シャワーを浴びてたの?」
トーイが下着姿のままでソファーに座っていて、少し湯気が立っている。
「朝にシャワーを浴びたら、全身が刺激されて、目が一気に醒めるとアイリスから聞いて試したのさ。この刺激は、いいね。気に入ったよ」
カーバンクルの状態なら、シャワーという選択肢自体がないもんね。
「懇親会ってどうなったの? 途中から、記憶がないんだけど?」
何故か、トーイは押し黙る。
「あ~、どこまで覚えているのかな?」
「う~んと、サイモン・ヴァリモンド様に何か言われたような気がするんだけど、その後から記憶がないの」
あの時、何を言われて、なんて返したのだろう?
全然、覚えていないよ。
「うっわ……一番肝心なところからか~」
え、それって、私が何か言ったってこと?
「あのね、ユミルが核心を突く言葉を言い放ったせいで、あの人たちはあれから4時間くらいぶっ通しで、空魔石再充填に関わる話し合いを続けていたよ」
「4時間!? 私、何か言ったっけ? あの時は…大気中の魔素を空魔石に充填させることをぼんやりと考えていたような? もしかして…それ?」
「ビンゴ! 参加者たちは、大気から魔素を空魔石へ充填させる発想を持っていなかった。だから、皆はユミルから得た発想を基に、新規魔道回路を実現させるため、討論を続けながら設計図を考えていき、その原型が出来上がるまで、ず~っと話し合っていたのさ」
研究者たちの執念って凄い。参加者たちが協力して作り上げていけば、皆の求める理想のシステムが完成する日も近いかもしれない。
「今、アイリス様たちは?」
「レパード以外、疲れて寝ているよ。深夜に寝たはずだから、今はゆっくりと寝かせてあげよう。街への帰還日程だけど、学会での事故もあって、当面の間未定だってさ」
当初、王都の滞在期間は6日と聞いている。今は3日目だから、あと3日は自由行動の予定だったけど、未定になった以上、行動範囲を少しだけ広げてもいいかもしれない。
「それと、もう一つ大事なお知らせがあるんだ」
「大事なお知らせ?」
トーイ、いつになく真剣だ。
「2日前、僕たちはこちら側の現状況を、長に報告した際、選別で抱えている悩みを打ち明けた」
悩み? カーバンクルを奴隷化させた人間の血縁者とその関係者たちの選別、スキルと魔法が封印されている状況下で、相手の心が善か悪、どちらであるのかを判断して、その後に制裁を与えるって言ってたけど、何か問題が起きたってことか。
「悩みって?」
「血縁者たちを調査した結果、善と悪に明確な偏りがあるとわかったのさ」
「偏り?」
そりゃあ、善と悪は両極端だから、偏りもあると思うけど、何が問題なの?
「僕たちは長に悩みを打ち明け、長が先代長に話したことで、先代長は悩みを解消させるため、ある提案を精霊王様に打診すると、状況が一変した。《元凶となった貴族の制裁を、この国の王家に託す》、これが正式に決定したんだ」
「え!? 皆の反応は?」
当初はカーバンクルだけで、『元凶たちに制裁を!!』と意気込んでいたのに、それでいいの? 最悪、この国の王家が元凶の貴族と裏で結託していたら、大した罰を与えないのでは?
「先代長の語ってくれた内容を聞いて、皆もその決定に賛成したよ。ただ、王家の下す制裁があまりにも納得いくものでない場合……精霊王様が国に制裁を下す。詳しく言うと、国民全員に対して、ステータスを半減させた上で、そこからスキル、魔法、加護、全てを没収するのさ。勿論、ユミルはその対象に入ってないし、王族に説明する際も、名前を伏せるから安心して」
なるほど、そういった内容であれば、私も納得できる。もし、精霊王様が国自体に制裁を与えてしまうと、精霊から見限られたってことになるから、後々大問題に発展して、最悪滅びる。王族にとって、それは自分たちの死を意味するのだから、真剣に取り組んでくれるはずだ。
「全快した先代は既に国王と王妃に接触し、事情を説明済み。王族が元凶に制裁を与えやすいよう、僕たちが元凶となった男の血縁者、その関係者たちの選別を行い、悪と判断した者には、あらゆる証拠を提出する手筈になってる。今は、その証拠集めの段階だね」
スキル《反射》を応用すれば、脳内の記憶をこちら側に反射させて、覗くことも可能だから、証拠も集めやすいし、善か悪の判断も可能だ。それに、元凶の貴族が国の中枢に入り込んでいる以上、王族も限られた臣下の人たちにしか話せないから、カーバンクルによる選別と証拠集めという行動に関しては、嬉しいはずだ。
「元凶が王都に潜んでいる以上、私は迷惑をかけちゃいけないね。まだ、その貴族の名前だって知らないから、普通に観光を楽しんでいいよね?」
アイリス様の方は、まだ完全に沈静化したわけじゃないけど、犯人は牢屋に入っている。データを盗んだ二人組に関しては逃げられたけど、それは彼女だって納得しているから、今後私が必要とされる場面なんてないと思う。
「うん。ユミルは、僕と一緒に観光を楽しもう。出かける際は、ホテルフロントにいる受付に伝言を残しておけば、マーカスたちに心配かけることもない。それで、ユミルはどこに行きたいの?」
アイリス様とカーバンクル、全て解決したわけじゃないけど、私の役目はここまで。気分を切り替えて、ここからは観光だ!
「こういう時のために、事前にガイドブックを購入しておいたの。ようやく、役立てる時がきた! まずは、本に載っている店に行って、ショッピングだよ!」
「了解。今日は気兼ねすることなく、王都を散策しよう」
やった!
今日は、朝からショッピングだ!
研究のことやカーバンクルの件を忘れて、久々に楽しもう!
○○○
第1部、これにて終了です。
第2部は鋭意制作中で、更新日は10月上旬を予定しています。
25周年カップにエントリーしたいので、主人公の前世の没年齢を25歳に引き上げます。
それに伴い、前世に関わる箇所を改稿していく予定です。
犬社護
ここって、宿泊先のお部屋にある寝室だ。
夕方のはずが、朝になってるよ。
懇親会は、どうなったの?
「ユミル、おはよう」
「おはよう。シャワーを浴びてたの?」
トーイが下着姿のままでソファーに座っていて、少し湯気が立っている。
「朝にシャワーを浴びたら、全身が刺激されて、目が一気に醒めるとアイリスから聞いて試したのさ。この刺激は、いいね。気に入ったよ」
カーバンクルの状態なら、シャワーという選択肢自体がないもんね。
「懇親会ってどうなったの? 途中から、記憶がないんだけど?」
何故か、トーイは押し黙る。
「あ~、どこまで覚えているのかな?」
「う~んと、サイモン・ヴァリモンド様に何か言われたような気がするんだけど、その後から記憶がないの」
あの時、何を言われて、なんて返したのだろう?
全然、覚えていないよ。
「うっわ……一番肝心なところからか~」
え、それって、私が何か言ったってこと?
「あのね、ユミルが核心を突く言葉を言い放ったせいで、あの人たちはあれから4時間くらいぶっ通しで、空魔石再充填に関わる話し合いを続けていたよ」
「4時間!? 私、何か言ったっけ? あの時は…大気中の魔素を空魔石に充填させることをぼんやりと考えていたような? もしかして…それ?」
「ビンゴ! 参加者たちは、大気から魔素を空魔石へ充填させる発想を持っていなかった。だから、皆はユミルから得た発想を基に、新規魔道回路を実現させるため、討論を続けながら設計図を考えていき、その原型が出来上がるまで、ず~っと話し合っていたのさ」
研究者たちの執念って凄い。参加者たちが協力して作り上げていけば、皆の求める理想のシステムが完成する日も近いかもしれない。
「今、アイリス様たちは?」
「レパード以外、疲れて寝ているよ。深夜に寝たはずだから、今はゆっくりと寝かせてあげよう。街への帰還日程だけど、学会での事故もあって、当面の間未定だってさ」
当初、王都の滞在期間は6日と聞いている。今は3日目だから、あと3日は自由行動の予定だったけど、未定になった以上、行動範囲を少しだけ広げてもいいかもしれない。
「それと、もう一つ大事なお知らせがあるんだ」
「大事なお知らせ?」
トーイ、いつになく真剣だ。
「2日前、僕たちはこちら側の現状況を、長に報告した際、選別で抱えている悩みを打ち明けた」
悩み? カーバンクルを奴隷化させた人間の血縁者とその関係者たちの選別、スキルと魔法が封印されている状況下で、相手の心が善か悪、どちらであるのかを判断して、その後に制裁を与えるって言ってたけど、何か問題が起きたってことか。
「悩みって?」
「血縁者たちを調査した結果、善と悪に明確な偏りがあるとわかったのさ」
「偏り?」
そりゃあ、善と悪は両極端だから、偏りもあると思うけど、何が問題なの?
「僕たちは長に悩みを打ち明け、長が先代長に話したことで、先代長は悩みを解消させるため、ある提案を精霊王様に打診すると、状況が一変した。《元凶となった貴族の制裁を、この国の王家に託す》、これが正式に決定したんだ」
「え!? 皆の反応は?」
当初はカーバンクルだけで、『元凶たちに制裁を!!』と意気込んでいたのに、それでいいの? 最悪、この国の王家が元凶の貴族と裏で結託していたら、大した罰を与えないのでは?
「先代長の語ってくれた内容を聞いて、皆もその決定に賛成したよ。ただ、王家の下す制裁があまりにも納得いくものでない場合……精霊王様が国に制裁を下す。詳しく言うと、国民全員に対して、ステータスを半減させた上で、そこからスキル、魔法、加護、全てを没収するのさ。勿論、ユミルはその対象に入ってないし、王族に説明する際も、名前を伏せるから安心して」
なるほど、そういった内容であれば、私も納得できる。もし、精霊王様が国自体に制裁を与えてしまうと、精霊から見限られたってことになるから、後々大問題に発展して、最悪滅びる。王族にとって、それは自分たちの死を意味するのだから、真剣に取り組んでくれるはずだ。
「全快した先代は既に国王と王妃に接触し、事情を説明済み。王族が元凶に制裁を与えやすいよう、僕たちが元凶となった男の血縁者、その関係者たちの選別を行い、悪と判断した者には、あらゆる証拠を提出する手筈になってる。今は、その証拠集めの段階だね」
スキル《反射》を応用すれば、脳内の記憶をこちら側に反射させて、覗くことも可能だから、証拠も集めやすいし、善か悪の判断も可能だ。それに、元凶の貴族が国の中枢に入り込んでいる以上、王族も限られた臣下の人たちにしか話せないから、カーバンクルによる選別と証拠集めという行動に関しては、嬉しいはずだ。
「元凶が王都に潜んでいる以上、私は迷惑をかけちゃいけないね。まだ、その貴族の名前だって知らないから、普通に観光を楽しんでいいよね?」
アイリス様の方は、まだ完全に沈静化したわけじゃないけど、犯人は牢屋に入っている。データを盗んだ二人組に関しては逃げられたけど、それは彼女だって納得しているから、今後私が必要とされる場面なんてないと思う。
「うん。ユミルは、僕と一緒に観光を楽しもう。出かける際は、ホテルフロントにいる受付に伝言を残しておけば、マーカスたちに心配かけることもない。それで、ユミルはどこに行きたいの?」
アイリス様とカーバンクル、全て解決したわけじゃないけど、私の役目はここまで。気分を切り替えて、ここからは観光だ!
「こういう時のために、事前にガイドブックを購入しておいたの。ようやく、役立てる時がきた! まずは、本に載っている店に行って、ショッピングだよ!」
「了解。今日は気兼ねすることなく、王都を散策しよう」
やった!
今日は、朝からショッピングだ!
研究のことやカーバンクルの件を忘れて、久々に楽しもう!
○○○
第1部、これにて終了です。
第2部は鋭意制作中で、更新日は10月上旬を予定しています。
25周年カップにエントリーしたいので、主人公の前世の没年齢を25歳に引き上げます。
それに伴い、前世に関わる箇所を改稿していく予定です。
犬社護
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