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小話系
理想のDom 4
しおりを挟む二人の厚木に見下ろされ、答えを急かすDomの圧力に、吉継は言葉を詰まらせた。なにか、足の先からピリピリとしたものがゆっくりと上がってきて、お腹、腕と、やがて体中を満たした。
歓喜だった。
Domの注目が嬉しかった。
命令をもらえて嬉しい。
右を見ても厚木で、左にも厚木がいる。
吉継の体を撫でながら、答えを待っている。厚木といえば憎まれ口だが、それもない。二人とも、今は意地悪じゃない。
嬉しい。
Domの…、厚木の関心が吉継に向いていることがこんなに嬉しい。
知らずのうちに顔が緩んで、厚木だか聡実だかわからない方の服を掴んで引き寄せる。厚木は合成なのか天然なのかわからないが何か作られた香りがする。身嗜みでつけている香水なのだが、吉継が今まで嗅いでこなかった香りなので、未だに慣れないが、鼻をくっつけると、ちゃんと厚木の匂いがする。鼻をぐりぐり押しつけても嫌がられなかったことも吉継を上機嫌にさせた。
「俺…、こればっかりは嫌…苦手です…」
「なぜ」
「嫌がっているようには見えないが」
「…嫌…じゃないですけど…」
「気に入らないことがあるのか」
促すように背中を撫でられる。その手は厚木なのに優しい。
今までも言う機会はあった気がする。直情で口下手な吉継が言い出せるタイミングはなかなかつかめない。
命令でも言ってくれないと…。
「これが…、厚木さんの教えてくれる”気持ちいい”で合ってるのかわからないから…」
吉継としては決死の覚悟に近い気持ちで答えた。かなり勇気を出して言ったことだが、吉継の言葉に同じ顔をした二人が「はあ?」と顔を見合わせたことは、厚木か聡実かにくっついている吉継には見えていない。
「あと、俺がなにも知らないから、それをからかって遊んでます…優しくないです。あとは…」
「まだあるのか」
うんと頷く。
「厚木さんはプレイのときが一番優しいです。いつもは嫌なDomだから…」
厚木たちは、歯に衣着せぬ吉継の言葉を黙って聞いていた。
「嫌なことを言う時もあるけど、俺は厚木さんが”ご主人様”です…」
好きなことを言えた吉継は、だいたい満足していた。
喉でも鳴らしそうな勢いで厚木にじゃれついている。
そんな様子の吉継に、これで終わったのかと二人の厚木は目を見合わせる。
とりあえず、頑張ったSubを労ってやるため、もみくちゃに撫で回してやる。吉継は「んんぅ」とよくわからない声を上げ、今度はもう一人の厚木の胸に顔を埋めた。「同じ匂いです」と独り言を言いながら。
「要領は得ないが…」
「ああ…、いや、ダメ出しだな、これは…」
「物足りないのか」
「いや、わかっていないのだろう」
「まるで子どもだからな、こいつは」
「大人の可愛がりかたを知らない」
「ああ、だからでかい図体で纏わりつく」
「面倒だが」
「駄犬に…いや、駄馬か…まあ、面倒だが、いい機会だ」
「教えてやろう」
「ああ、そうしよう」
「?」
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