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間幕
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真夜中のとある一室にて、男女の大人と、少年ふたりが集まり、何やら話をしている。どうやら、少年は、こっぴどく女性に叱られたあとのようで、若干バツが悪く居心地がよくないようだ。身の潔白を必死に訴えていた。
「母上、僕もやりすぎたなーって反省してるってば。それに、リアが大きいからって意地悪をするやつらを、僕とショーリが退治したことは悪いと思わない。リアはさ、優しいから意地悪なんかされてないって言ってるけど、明らかに仲間外れにしてたよね。雛たちが、リアに『絶対に王様たちの子じゃない、取り違えっこだ。もしくは、本物のヴィクトリア様はお亡くなりになっていて、隠すために遠くのキングペンギンのところから、たまごをもらってきたに違いない』って言うのは、大人たちが陰でそう言っているから、子供のあいつらも言ってるってことでしょ」
ガニアンが、盛大に説教をされてからこういうと、母である王妃は大きくため息を吐いた。ヴィクトリアが陰でそのように思われて言われているのは知っている。だが、たまごのすり替えや取り違えなどというバカげた事実はない。勿論、王も王妃もほかの異性が入る隙間がないほどの仲だ。つまり、ヴィクトリアは正真正銘彼らの子なのであると、大多数の人々は考えている。
とはいえ、一部のものが好き勝手に口ずさむ内容にチャックはできない。どれほど戒厳令を布いたとしても。雛の期間が過ぎ、彼女が人化さえすれば、ばかげた噂は自然と消えるだろう。
「出来る限り、リアの潔白を堂々と言えば悪口は消えるわ。子供たちが、無邪気に放つ無礼な言動にはお仕置きが必要かもしれない。だからって、私刑はよくないわ。財務大臣の秘書のところの息子さんが、大泣きするほどシャボン玉バトルを本気でするなんて……。せめて、リアにするくらい手加減してあげないと。ほかにもいろいろと、親からあなたたちの遊びは過激すぎるとクレームが来ているのよ?」
「僕たちがいくらリアの姿がどうであれ、愛する妹だって言葉で言っても、リア自身が気にしちゃってるから、悲しい思いをする時間がないように、たくさん遊んであげてるんだってば。それには体も心もいっぱいっぱい動かすのが一番なんだよ。そのついでに、あいつらも混ぜてやってるだけなのにさ。ちょっとばかり、力いっぱいキックするけど」
「か弱い王女であるリア様が楽しんでされている遊びを、ほんの少し強く蹴ったからと男の子が恐怖に駆られて親に泣きつくなど、情けない話ですね」
「ショーリの言う通りだ」
「黙りなさい、ガニアン。ショーリくんも。何度も言うけれど、リアはまだ小さな女の子なのよ? それを、魔法で守っているとはいえ、サッカーのボール代わりにしたりするのはやりすぎよ。ショーリ君も、女の子を驚かせすぎるなんていけないわ。リアは本気で怖がっていたじゃない。あの子はね、笑顔のほうが何倍もかわいいわよ」
「リア様は、焦ってパニックになる姿もかわいいです。怒っていても、泣いていてもかわいい。確かに、笑ったほうがかわいいですね」
ショーリがそういうと、ガニアンがうんうん力強く頷いた。それを見ていた国王も、息子たちのお仕置きを思い出して笑いながらうんうん頷いている。
「あのね、ふたりとも。物事には限度っていうのがあるの。ふたりもまだ子供だから、加減が難しいのかもしれないけれど、もう少し、じゃないわね、もっと気を付けてあげて。そうでないと、ショーリ君のことをリクガメ国の陛下に相談しなきゃならくなるわ」
「えー、母上。そんなことをしたらショーリが強制送還されちゃうじゃないか。ショーリはここで僕と一緒に暮らすんだ」
「お、王妃様、今後は気を付けますから、父上や母上、兄姉たちにはくれぐれも秘密にしてください。ご存じの通り、俺は帰ってもやっかいもの扱いで、居場所がないんです……」
「ええ、ええ。だからこそ、リクガメ国の王子であるショーリ君をうちで面倒を見ているの。でも、大事なリアと遊ぶのではなく、リアで遊ぶやんちゃなきかんぼうでは、うちでは面倒をみきれないわ」
「はいはい、そこまで。子供たちだけじゃなく、お前もそろそろ落ち着いて。話がだんだんずれている。ガニアン、ショーリ殿、リアへの対応は今後改めるんだ。いいね」
「はい、父上」
「はい、陛下」
王の言葉で、子供たちふたりは寝室に戻り眠りについた。残された男女は、軽めのシードルを口に運びながら、かわいい愛娘のためにどうするべきか話し合ったのである。
「母上、僕もやりすぎたなーって反省してるってば。それに、リアが大きいからって意地悪をするやつらを、僕とショーリが退治したことは悪いと思わない。リアはさ、優しいから意地悪なんかされてないって言ってるけど、明らかに仲間外れにしてたよね。雛たちが、リアに『絶対に王様たちの子じゃない、取り違えっこだ。もしくは、本物のヴィクトリア様はお亡くなりになっていて、隠すために遠くのキングペンギンのところから、たまごをもらってきたに違いない』って言うのは、大人たちが陰でそう言っているから、子供のあいつらも言ってるってことでしょ」
ガニアンが、盛大に説教をされてからこういうと、母である王妃は大きくため息を吐いた。ヴィクトリアが陰でそのように思われて言われているのは知っている。だが、たまごのすり替えや取り違えなどというバカげた事実はない。勿論、王も王妃もほかの異性が入る隙間がないほどの仲だ。つまり、ヴィクトリアは正真正銘彼らの子なのであると、大多数の人々は考えている。
とはいえ、一部のものが好き勝手に口ずさむ内容にチャックはできない。どれほど戒厳令を布いたとしても。雛の期間が過ぎ、彼女が人化さえすれば、ばかげた噂は自然と消えるだろう。
「出来る限り、リアの潔白を堂々と言えば悪口は消えるわ。子供たちが、無邪気に放つ無礼な言動にはお仕置きが必要かもしれない。だからって、私刑はよくないわ。財務大臣の秘書のところの息子さんが、大泣きするほどシャボン玉バトルを本気でするなんて……。せめて、リアにするくらい手加減してあげないと。ほかにもいろいろと、親からあなたたちの遊びは過激すぎるとクレームが来ているのよ?」
「僕たちがいくらリアの姿がどうであれ、愛する妹だって言葉で言っても、リア自身が気にしちゃってるから、悲しい思いをする時間がないように、たくさん遊んであげてるんだってば。それには体も心もいっぱいっぱい動かすのが一番なんだよ。そのついでに、あいつらも混ぜてやってるだけなのにさ。ちょっとばかり、力いっぱいキックするけど」
「か弱い王女であるリア様が楽しんでされている遊びを、ほんの少し強く蹴ったからと男の子が恐怖に駆られて親に泣きつくなど、情けない話ですね」
「ショーリの言う通りだ」
「黙りなさい、ガニアン。ショーリくんも。何度も言うけれど、リアはまだ小さな女の子なのよ? それを、魔法で守っているとはいえ、サッカーのボール代わりにしたりするのはやりすぎよ。ショーリ君も、女の子を驚かせすぎるなんていけないわ。リアは本気で怖がっていたじゃない。あの子はね、笑顔のほうが何倍もかわいいわよ」
「リア様は、焦ってパニックになる姿もかわいいです。怒っていても、泣いていてもかわいい。確かに、笑ったほうがかわいいですね」
ショーリがそういうと、ガニアンがうんうん力強く頷いた。それを見ていた国王も、息子たちのお仕置きを思い出して笑いながらうんうん頷いている。
「あのね、ふたりとも。物事には限度っていうのがあるの。ふたりもまだ子供だから、加減が難しいのかもしれないけれど、もう少し、じゃないわね、もっと気を付けてあげて。そうでないと、ショーリ君のことをリクガメ国の陛下に相談しなきゃならくなるわ」
「えー、母上。そんなことをしたらショーリが強制送還されちゃうじゃないか。ショーリはここで僕と一緒に暮らすんだ」
「お、王妃様、今後は気を付けますから、父上や母上、兄姉たちにはくれぐれも秘密にしてください。ご存じの通り、俺は帰ってもやっかいもの扱いで、居場所がないんです……」
「ええ、ええ。だからこそ、リクガメ国の王子であるショーリ君をうちで面倒を見ているの。でも、大事なリアと遊ぶのではなく、リアで遊ぶやんちゃなきかんぼうでは、うちでは面倒をみきれないわ」
「はいはい、そこまで。子供たちだけじゃなく、お前もそろそろ落ち着いて。話がだんだんずれている。ガニアン、ショーリ殿、リアへの対応は今後改めるんだ。いいね」
「はい、父上」
「はい、陛下」
王の言葉で、子供たちふたりは寝室に戻り眠りについた。残された男女は、軽めのシードルを口に運びながら、かわいい愛娘のためにどうするべきか話し合ったのである。
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