完結 R18 まがいもののお姫様

にじくす まさしよ

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15 本編完結

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 人化したヴィクトリアは、背筋をピンと伸ばし集まっていた人々の耳によく聞こえるように声を張り上げた。

「皆さん、わたくしの姿のことで、今まで国を混乱させてしまいました。陛下やわたくしを信じて支えてくれた方々、わたくしの姿を見て真剣に国を案じたあまり行動を起こされた方々もおられました。わたくしは、ビィノ様の名にかけて、この国の民を守ってくださった乙女に恥じないよう、これからも国民のために努力し続けます。両陛下お呼び兄だけでなく、若輩者ではありますがわたくしのことも支えていただければ幸いです」

「なんとまぁ……。艶やかな黒髪に、ダークブラウンの瞳。やや黄色がかった白い肌、すっとした鼻筋に小さな唇。我らを救ってくださった、異世界の乙女であるビィノ様に見れば見るほどそっくりだ」
「ああ、姿だけでなく、姫様の魔力が少ないのは、伝説の救世の乙女であるビィノ様の魔力がない血を濃く受け継いだからか……」
「いいや、ヴィクトリア王女様は、ひょっとしてビィノ様の生まれ変わりなのでは?」

 彼女を支援していた人々や、静観していた者たちの小さな声は徐々に大きくなり、やがて大歓声に変わるころ、反対派の人々もまた、これでは王女をまがいものだと公言する理由などないと口をつぐんでうなだれた。彼らの中で、宰相の影響力を笠に着て不正を行った者は、今後王宮で見かけることはないだろう。
 暴言だけでも許しがたいが、それはヴィクトリア自身が王たちに許すよう懇願したので、ガニアンが賠償金や降格を命じたあと適材適所に配置した。
 当然、これまで享受してきた利権を取り上げられた貴族たちの不満は多大なるものであった。だが、まがいものの姫だと言っていた派閥のトップである宰相が、それを粛々と受け入れたため、不承不承ながらも受け入れざるを得ない現状に身を置くことになる。

 あれ以来、もはや伝説と化したビィノの生まれ変わりと信じる者があとを絶たず、求婚の依頼が殺到したのは言うまでもない。だが、彼女は毎日のように、ズィークから贈られたドレスと、ショーリから贈られたアクセサリーを身にまとっており、これまでもふたりが彼女の側にいたことから、今更ほかの男を受け入れられることはなかった。

 ガニアンが、以前から婚約していた騎士団長の娘と結婚をした半年後、三人はめでたく結ばれた。ビィノの生まれ変わりだと称される彼女とであれば、種族を問わず子孫繁栄が可能である。
 ズィークの領地では、やはり病弱だったズィークではなく親戚筋の健康な男とすげかえようと虎視眈々と狙われるため、彼らはショーリが与えられたリクガメ国の領地に身を寄せた。

 乙女の生まれ変わりだと名高いヴィクトリアの移住は歓迎された。三人目、四人目の夫としてリクガメの貴公子が隙を見て訪れることに辟易した彼らは、リクガメ国すらも出ようとしたが、王や王妃に、二度と不埒な男を近づけさせないからとその地に留まるよう説得されたのである。

「はぁ、やっと静かになったわ。長かったー。ふたりとも、ずっと一緒にいてくれて本当にありがとう」
「いつも言っているけど、僕たちは自分でリアと一緒にいたくてそうしてきただけだから」
「まあ、リアがそういうのなら、俺たちにご褒美をくれたらいい」

 ヴィクトリアを真ん中にして、左右にふたりが並び、芝生の上で川の字を作っていた。家の近くにある、リクガメたち御用達の甲羅干しのスポットでは、天気の良い日にはそこかしこに家族づれやカップルが寝そべっている。
 ふたりの大きな指が、彼女の黒髪をくしけずりながら首筋や耳元をいたずらになぞっており、彼女はそのたびにくすぐったいと首をすぼめた。

「ふふふ、ご褒美かあ。ふたりとも、高価な贈り物なんて欲しくないだろうし、何がいい?」

 彼女が、あまりのくすぐったさに身を捩りながら訪ねると、左右のふたりは意地悪く笑う。

「そりゃあ、勿論」
「そんなもの、決まっている」

 そう言うや否や、寝そべっていた彼女を抱きかかえて自宅に戻り寝室にこもる。ヴィクトリアは、イチャイチャは大歓迎なのだが、かわるがわる体力が有り余っている彼らに隅々まで愛された。

 至れり尽くせりの毎日も、最初のうちは幸せしかなかったが、日常になれば少しは解放してほしいと、ふたりから離れる計画を立てるが、悉く失敗に終わり、ますます愛されループの沼にはまるのだった。



R18 まがいもののお姫様 本編完結。


 あとはR18となります。耐性のあるかただけお付き合いいただければと思います。
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